アトリエの色と形『音からイメージを広げて』
月に一度のアトリエ講師です。
この春から始動した新しいアトリエのカタチ。
先生とぼくわたしだけのアートの時間。
クラス名をプライベートレッスンではなく、
アート+(プラス)と呼ぶことにしました。
指導するのではなく、引き出す。
その子の中にあるイメージを色や形に表出する
お手伝いができたらと思っています。
第2回目のテーマは『音からイメージを広げて』。
前回、好きな音楽を流しながら胸を弾ませていたA君。その姿を思い出し、アートワークの導入として打楽器を準備しました。
タイのタングドラムは1番小さいので〝子ども〟。
クロアチアのハングドラムは〝お父さん〟。
西アフリカのジャンベは〝お母さん〟。
そんな打楽器ファミリーの音色やリズムから
A君なりの色や形、文字がイメージできれば素敵だなと思います。イメージを表出する手立てとして、
以下の材料を準備しました。
・予め掛け軸に仕立てた和紙3m
・ポスターカラー8色くらい(共同用)
・絵筆や刷毛、ローラー
・版になるもの
(立方体や円柱、球のスチロール)
・スチロールのマジックハンド
・使い慣れたマーカー、ポスカ
以下、制作の様子を記録しました。
●抽象的な題材を好むA君のアートワーク。
目と手の連動運動の記録
アトリエの隅に並べられた打楽器たち。
部屋に入ってきて真っ先に1番小さなタングドラムを腕に抱えたA君。金色でまあるくて、とても不思議な形をしています。
「これ、叩いてみる!」
しばらく叩いて遊びます。
「先生、演奏してみようかな。」
「......。」
私の演奏を集中して聴いてくれたA君でした。
が、A君の反応からメロディを色や形、文字に変換することは難しいと感じました。完成されたメロディを大人が奏でても、子どもにとっての「自分ごと」にはなりにくいのでしょう。
そこで、A君のお気に入りのマーカーを使い、ロール和紙の上にしりとりゲームをすることにしました。
「先生、この楽器、なんていうんだっけ?」
「タングドラム!」
「タング?ドラム。」
真っ新な和紙に文字が書かれました。
「ムから始まる言葉ね!えっと…」
と言葉が続いていきます。
「天命を尽くして人事を待つ。やったっけ!」
とA君。
「難しい言葉を知っているんやね!」
次第に踊っているような文字が増えてきました。
「先生みててな!」
アメーバのような形が出現しました。
「あ。この形見たら、先生いいこと思いついた!」
星の形を出発点にして、A君と2人で紙の上を追いかけっこ。A君の線の動きはすばしっこく、なかなか捕まえることができません。それどころか、
なんどもバリアを張られ、なかなか出会えません。
「先生、ここ、入ってきていいよ!」
行き止まりが解かれて、やっと出会うことができました。
「ああ、よかった!ちょっと休憩しようかな。」
その後、大きなハングドラム、〝お父さん〟が登場しました。〝お父さん〟の音色がとても気に入った様子のA君。しばらく奏でて遊びます。
「あ、A君の奏でる音が先生の耳に焼きついたわ…
面白いな!hmmmmm....」
と鼻唄を歌いながら、マーカーから絵筆に持ちかえてみました。ここから活動が絵の具遊びへと移行していきます。色作りに夢中なA君はカップの中で混ざる絵の具を覗きこんでいます。白いトレーの中で垂れていく形を観察します。そうしているうちに、辺りに絵の具が散り始めました。
「裸足になる!」
「じゃ、先生も裸足になる!」
「先生はだめ!やっぱりいいよ!」
気持ちがさらに解放された状態で、絵の具遊びは続きます。次はスチロールのマジックハンドで絵の具を混ぜてみました。すると、真っ白なハンドがサーモンピンクに染まりました。サーモンピンクがショッキングピンクになると「わぁ!」と声が上がります。そうしてお気に入りの色が見つかると、和紙の上に絵の具がのせられていきます。
偶然にできた鮮やかな阪急電車のマルーン色。
ローラーを動かしたり、スチロールをほじくって版を作り、ペタペタと押していきます。A君のペタペタの動作に合わせて西アフリカのジャンベ、〝お母さん〟でリズムを叩いてみました。A君は私が打つリズムを気に入ってくれたようです。気がつくと、3メートルあった和紙が色でいっぱいになっていました。
活動が終わる10分前になりました。
絵の具を素手で触ることに抵抗があったA君ですが、お母さんの提案で、手に絵の具をつけてみることにしました。勇気をもってトレーの中に手をつけたA君は私の方を見つめ、言いました。
「先生も絵の具、手につけて!」
「ああ!そうやった!先生もつけないとね!」
最後は2人一緒に絵の具遊びです。
和紙を太鼓に見立ててリズムを打つ私を、A君は不思議そうに見つめています。その間もずっと絵の具を手に塗り込み、グーパーを繰り返しています。最初は頻繁に手を洗っていたA君ですが、
絵の具の感触を楽しめる時間が長くなっていきました。
これからも沢山の色や形に出会ってほしい。
様々な感触を楽しんでほしい。
A君の笑顔を見ながら改めてそう感じた日でした。
米光智恵
●アトリエ詳細
Atelier happiness kids art
https://g.co/kgs/3CxhjH
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