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棟梁:興味本位で読んだら、創作道の真髄に近かった話

棟梁

という本を読了した。

宮大工で鵤工舎の創始者である小川一夫さんという方の聞き語りで構成された著書だ。

なぜ読もうと思ったかって、本当にただなんとなく目に止まって、宮大工ってどんな仕事なんだろうみたいな軽い気持ちだった。


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内容は小川さんが宮大工として弟子入りした後、修行時代を経てやがて自分が弟子を取り、やがて宮大工を育てていく修練施設、鵤校舎を設立して何世代も弟子を迎え入れ、また輩出していった経験を語るというもの。

完全共同生活で生活の全てを大工仲間と共有するという修行スタイルは、現代社会に慣れている私の感覚からすると

正直キツそうだな。

である。

そもそも集団生活苦手…😓炊事洗濯掃除当番制なんて到底こなせない。

きっと気が利かなくて、抜けだらけ、至らない所だらけで、周りの兄弟弟子に「なんだアイツは」と迷惑かけまくって出て行かざるを得なくなる自信しかない。

開き直りではない。長年努力してもそうなのだから。

私は集団に迷惑をかけないために、個人で動くことしかできない。

それはまぁ、ともかくとして。話を戻します。

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現代においては特殊とも言える住み込みスタイルだが、なるほど寺社仏閣を扱う特殊な職種だし、機械以上の精密な技術を身につけなくてはならない職人にとってはメリットの大きい手段なのらしくて。

棟梁小川さんの信条として、身も心も職人になるにはとにかく

昼も夜も、起きてる時も寝てる時も、どっぷりそれに浸っている必要がある

そういうニュアンスのことが書かれていた。

これは曲がりなりにもイラスト、マンガを生業にしてる私はちょっと納得できる所だった。

私の場合、仕事としての作業時間とは、机に向かって描いてる時間がそれに当たるんだろうけど、じっさいはそれだけじゃなかったりする。

四六時中、ごはん食べてても遊んでても散歩してても家事してても寝る直前であっても、

なんかいいネタないかな

こんな話面白いかな

次のイラストどんなのしようかな

まるで息をするように考えてしまう。

頭ひねった時間に比例していいアイデアが浮かべばいいけど、そうとは限らないから、正直ほとんどが頭のひねり損。無償無給のタダ働きなのだ。

でもそうして蓄積された中からやっぱりアイデアが出る。なんならアイデアの出し方そのものや描き方の技術がアップデートされてる。かもしれない。

そうだといいな。

職人として腕を磨くためにどっぷり職人の生活に浸る、というのも案外そういうことなんじゃないか。

それと、弟子から一人前になるプロセスも独特で、進級試験のようなはっきりした目安ではなく、

そろそろ一人でやってみろ。

的な感じで、現場を任されるんだそうだ。

完成を待ってから仕事を任せるんじゃなくて、仕事を任せていく中で一人前に完成していく

そういうスタンスらしい。

それもわかる気はする。絵描きとしても漫画家としても、ストーリー作成、背景、構図、構成、とかくあちこち不出来な私だけど、

全てを完璧に作れるようになってから漫画家になろう

なんて言ってたのでは、いつまでたってもプロにたどり付けないのだ。

少なくとも私がそんな悠長なことしてたら寿命までにプロになれるか分かったもんじゃない。

不出来でもなんでも、一作一作完成させてく中で力をつけていく

漫画家としてやっていきたいならそうするのが良い、とこんな年になるまでほっといた自分に喝を入れながら描いている。

宮大工という漫画とはかけ離れたような職種の本から、なんとなく

創作道ってそういうものかも…

と言う創作の真髄めいたものを感じた一冊なのでした。

小川棟梁の言葉は、何しろニュアンスとして覚えている内容なので、詳細は本書を読んでもらうのが正確だと思います。

読む人それぞれの受け取り方もあると思うので、異論は認めます。

もし機会があれば、もしくは宮大工に興味のある方は、お手に取ってみてください。

読んでくれてありがとう。

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