お嬢様のAJIRAトーナメント。


※注意※

めっちゃ長いです。時間に余裕がある時にお読みいただけると幸いです。


公人直人さんに指名いただき、第二回AJIRAトーナメントに参加させていただけることになった。ありがとうございます!

事前の配信では普通に将棋を指したりクイズ企画をしたり雑談したりと、あたかも「我々普通に将棋を指します!」な雰囲気を出しているが、当然ながら(?)すべてブラフである。

裏では「全員全局鬼殺し」という悪魔の企画が立ち上がっていたが、流石に色々と非現実的なところがあり、公人さんは「力戦鬼殺し」、私は「新鬼殺しとメリケン向かい飛車の両天秤」、アクセラくんは強く当たってあとはその場の流れでと色々と力技感あるチーム戦略となった。

新鬼殺し中心に定跡ファイルを用意したりメリケン向かい飛車の裏定跡についてコメントしたりしているうちにあっという間に本番に。

オーダーは基本的に「公人公人音無音無アクセラアクセラ」。

前半3人で3勝した場合のみアクセラくんが早めに出てくる変化が発生する。


□ VS チーム沙久耶 第3局 もるすこちゃん戦

初戦のチーム沙久耶戦、公人さんが予定通り鬼殺しで2勝を挙げるというとんでもないパワーワードが並ぶ展開となり、3局目で出番となった。

後手番となりさぁ新鬼殺しができないぞ、メリケン向かい飛車に組めるかという心配があったものの、無事に後手メリケンの典型的な展開に。

そもそも「新鬼殺し・メリケン向かい飛車両天秤作戦」は純粋居飛車党向けの作戦でもある。正直なところ、初戦突破にパワー全振りだったのは否めない。

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先手がもるすこちゃんで後手が私。居飛車が▲9八香と穴熊を目指したところですかさず△2四歩▲同歩△同飛と仕掛けた局面。無条件に穴熊に組ませたくはないので当然の仕掛け。

部分的にではあるが、この形は▲2六歩が最善らしい。詳細は島ノートに書いてあった記憶があるものの、その具体的な手順はとってもうろ覚え。
気になる方は購入して読んでみてください(プレミアついてるけど)
標的になりそうではあるものの▲2五歩も一局。端から桂馬を跳ねて歩を支えるような展開になりやすい。

本譜は▲2七歩と一番低く受けたものの、穴熊完成を目指して長い将棋にするのであれば▲同飛△同角▲2八飛△2三歩▲9九玉△3三角▲8八銀(下図)とするのもありえたか。飛車を手持ちにしている後手が指しやすいものの、玉が堅いので頑張り甲斐もありそう。

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また、飛車交換の後に▲2二歩という筋も有名。以下、△同金▲4五歩△3三角▲4四歩△同銀▲4一飛といった進行が一例。しかしながら本譜の陣形だと▲2二歩の瞬間に△2八飛が厳しい一着なので難しそう。
後手が居玉なら▲2二歩を入れずに▲4五歩も部分的にはあるところ。狙いは角交換してから▲6五角ラインの先着。

などなど、メリケンは序盤から様々な筋が飛び交うため、先後共に駒組みに気を使う展開になりやすい。

本譜、引き続き無条件で穴熊完成を許せない後手は△4五歩から角交換を挑む。

対する先手は▲6六歩と更に角筋も閉じる。後手は△5四銀~△5五銀(下図)と一気に進軍。このあたりの組み立ては中継・解説陣に感心いただいていたのだが、(部分的にだが)この手順は実戦経験があった。私が先手を持っていたときに力戦振り飛車党の知人に指されたもので、要するに以前に「喰らったことのある」覚えあるものでもある。

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2筋でポイントを上げており先手は飛車による援軍が効かないため、おそらくほぼ決まっている。以前先手を持った際は角銀交換甘受で▲7八銀から陣形を引き締めた記憶があるが、流石にじり貧である。

本譜は▲8六角~▲7七桂と実戦的なケアをされてきたものの、先手の角桂を狙ってコビン攻めという方針が明確になったため、手が伸びるようになった。

途中▲6七歩が気になったものの7五地点で角銀交換となり、△7四歩(下図)まで回ってかなりわかりやすくなったと思う。いざという時は飛車の転回が見えるのも心強い。
自玉の玉頭が驚異的な寒さだが、無条件で角を渡す展開とかにならなければ大丈夫。たぶん。

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以降もひたすらコビンを攻めまくって快勝とはなったが、もるすこちゃんの凌ぎにも気迫があり、団体戦を存分に感じる一局となった。

なにはともあれ自身の会心譜でもあった。たぶん今年これ以上の棋譜は出ない気がするが、こういった将棋をまた指すことをモチベーションに前進していきたいとも思う。


4戦目はアクセラくんが出陣。苦しい将棋だったものの、最後の最後で大逆転。チームも4-0のストレート勝利が決まった。

将棋修業時代、先輩お嬢様から「投了こそが最大の悪手也(最後まで諦めずに指しなさい、の意)」と教え込まれた記憶が蘇った。


□ VS チーム常盤台メイ 第3局 常盤台メイ戦

前局に引き続き後手番。メリケンは既に見せてしまっており、他のカードもV名人戦で切る可能性があるものもあったため、一番無難に指せると自負していた四間飛車穴熊をチームメンバーにも宣言して指すことに。

実はこのチョイスがとんでもない落とし穴、というか思考のエアポケットに入ってしまっていたものだった。理由は後述する。

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先手がメイさんで後手が私。
普通に駒組みが進むかといったところで、早めの▲9六歩に手が止まる。
△9四歩とあいさつを返してもいいのだが、四間飛車穴熊で行くと決めているし、後手番であることも気になり玉の囲いを急ぐことにした。

穴熊のハッチを開けた直後の手で現実を知ることになる。

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▲6六角。地下鉄飛車の可能性もあるものの、トレンドを考えるとおそらくトーチカである。四間飛車を指すのであれば当然対策を考えなければならない戦法の一つでもある。

音無ちえる氏、四間飛車の対トーチカを一秒たりとも考えたことがない。

これには理由があった。

先日辛勝スタートとなった自身のV名人戦であるが、注目いただきたいのは冒頭の事前インタビュー画像。
実は私自身、対四間飛車のトーチカを得意としており、勝率も非常に高い。
三浦先生のトーチカの定跡書もそれこそ穴が開くほど熟読している。

私にとってトーチカは自身が指す戦法であり、かつそれに相当な自信をもって出しているワイルドカード、切り札と言っても差し支えない。
その相手をすることになるなんて、夢にも思ったことがない。

更に要因がもう一つある。
私が将棋修業をしていたのは既に藤井システム全盛が過ぎた頃。それでも対急戦をクリアし、自信を持って指す猛者なアマチュアがシステム党となっている時代。対システムと言えば5五角急戦や3五歩早仕掛けの時代である。
そんな時代に対システムにトーチカを使うお嬢様。当然他にそんなお嬢様はおらず、自身は圧倒的なマイノリティとして存在していたのだ。
長年見る将と化していたお嬢様は今年、ふいに指し将棋を再開する…

トーチカは自身だけが指す戦法だと思い込んでいる一般お嬢様が、そこにいたのである。

他戦型が相手なら、だいたいどんな形を目指せばいいかは定まっていた。
対穴熊なら6筋から開戦、対銀冠の6六歩型なら7筋から、3六歩型なら5四歩型に、対急戦なら3二銀型から4五歩ポン→7筋突っかけで玉の遠さで勝負…といった具合。
しかしながら対トーチカはアイディアがない。一見弱点に見える桂頭は弱点ではないことは自身がよく知っているのである。

漠然と駒組を進めてしまい下図に。

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よくわかなかったのでとりあえず6三金型。対銀冠のような構えに。
桂頭は弱点でないことはわかっているものの、7筋への飛車の転戦もちらつかせておく構想。

5筋から突っかけてなんとか勝負形に…なんて考えているものの、この局面は当然ながら既に大作戦負け。
本譜は自然に3筋から開戦してあっという間に先手ペースに。

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上図で△5六歩が悪いながらも最後の勝負手だったかもしれない。
5筋にと金ができる形が見えると先手も気持ち悪いはず。
本譜は△3六歩から駒の取り合いで飛車の成り込みを許してしまい、端も絡められて粘りが効かない形になってしまった。
何度か王手をかけることはできたもののすべて記念。あえなく投了となった。

メイさんは序盤から時間を残して指しており、駒組み含めてかなりの作戦巧者っぷりを発揮していた。
中終盤も互いに大きな悪手・疑問手はあまりなかったようで、序盤のリードをそのまま生かされてしまった。
自身のフィッシャーの不慣れ感もあったが、それ以上に序盤知識のヌケ・欠如という大きな課題が残る敗戦だった。


ここで隙ができたので、少し私自身の将棋スタイルについての自分語りをさせて欲しい。

上記配信にて私の将棋勉強法というか、どうやって将棋を覚えてきたのかを少し話している。
結論を書いてしまうと、「実戦はあまりしない、代わりに定跡書を文庫本感覚でひたすら読みまくる」というもの。
当然その内容は相当に抜けており、勉強法で言えば相当に非効率的なことをしてはいるのだが、「棋力 初~二段帯にしてはなんとなく知っている局面や展開、戦法がやたらと多い(自画自賛)」という現象はここがルーツになっている。
(非効率的であることは重々承知だが、定跡書を読み漁るのは既にライフワークになってしまっているので仕方ない)

要するに、私の将棋は「知ってる局面になれば力が出る」が、「力戦調や知らない形になると崩れやすい」というもの。
所謂定跡党と呼称される層に近いが、奇襲戦法も含めて物理的な読書量で形をカバーしているため、奇襲はあまり効かないタイプ。
(ただし前述の通り指し将棋は再開組であり、ブランクとその期間に台頭してきた新戦法についての見識はほぼない。耀龍四間飛車とか配信開始した時は知らなかったし)

つまるところ、今の私の将棋は【知識範囲が生命線】なのである。


□ VS チーム常盤台メイ 第4局 清井めしべ戦

チームとしてはここで私が勝ち星を挙げることを想定して組まれたオーダーのはず。当然ながらなんとしても勝ちが欲しい。
先の敗戦は引きずりそうだが、気合いを入れて盤に向かう。

将棋は念願の先手番である。
相手は居飛車党、これは当然新鬼殺しチャンス!とウッキウキで駒組みを進めるが、6手目で早くも手が止まる。

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事前準備の時間があまり多くないとはいえ、なんと居飛車が角道を開けないパターンを想定していなかったのである。
飯島流引き角、もしくは鳥刺しの形が脳裏をよぎる。

しかしながらここで変に引くのもどうにも味が悪い。新鬼殺しの手順にならないのであればノーマル三間飛車を指すというのも当然事前に決めていたので、ここは▲7八飛と三間飛車で戦型確定。

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少し進んで上図。先手が▲7九金と指したところ。
狙いは▲6六角の瞬間の8筋のカバー。飛車をぶつける筋を見ていた、はずだった。構想自体は部分的に見るものだったが…

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いざ8筋の歩の交換がされた局面。ここで低く受けておいた方が形がいい気がしてしまい▲8八歩と受けたが、こうなってしまうと7九金の意味が薄い。
このあたりから自陣だけ力戦調になってしまい、あまり狙いのわからない駒組みになり勝手にコケてしまった感が否めない。
実際、これ以降はめしべさんに上手く動かれてしまい形勢を損ねてしまう。

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桂損で玉の堅さも負け、更に龍を作られてしまっている中盤戦。
上図では気合いで▲6八銀打としたのがいい粘りだったようだ。
以下△8八龍▲6三歩成△同金▲5五角から楽しみが出てきた。

7筋に歩を立てた下図では逆転模様。

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以下△1五歩▲7三歩成△同金の局面で秒に読まれて▲6五桂が痛恨の失着。シンプルに▲7三同馬から▲6三歩成を見せてリードをキープできていた。
失着以降は再度後手良しで進行、我慢の時間が続く。

そして最後のチャンスがやってくる。

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急に後手玉が見えるようになった上図。ここは冷静に▲6一龍か▲6二龍で再逆転となっていたらしい。
よくよく見てみれば先手玉に余裕が出ているが、対局中はそこまで全く考えられていない。なにせお互いにほぼ5秒将棋の叩き合いである。
本譜は▲5五龍△7八歩成▲同銀△同角成と進行してしまいノックアウト。

「ここでこうしていれば」は無限に出てくるが、対局中に指せた手のみが現実、対局相手との条件は対等。
要所要所でめしべさんの手の精度が高く、知ってはいたけどやはり強かったなぁという感想。
しかしながら、これは個人戦ではなく団体戦。公人さんとアクセラくんのためにも勝ちを持って帰りたかった気持ちが今になっても溢れてくる。

第5局、第6局ともに惜しくも勝ち星が出ず、チーム公人は2-4で準決勝敗退となってしまった。


初日で対局が終わってしまったAJIRAトーナメントだが、最終日まで観戦で存分に楽しませていただいた。
運営側の方々の多大な労力は想像に難くない。改めて厚くお礼申し上げたい。
この度は素敵な対局の機会をいただきありがとうございました!

また、改めて自身の将棋の課題が浮き彫りになったので、対局量と検討時間を増やして技術向上に努めていきたいと思う。

お嬢様はVS相手を無限に募集しておりますわよ~!!!!!!

チーム公人(バーサーカーソウル)の打ち上げ配信は 9/23 の 22:30 から!

※局面図作成はshogipic様のサイトを利用させていただきました。https://shogipic.jp/

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