ファミリー・コンサート「展覧会の絵」に行ってきました♪
10月28日(土)から11月5日(日)にかけて開催された「しまなみ海道・秋の音楽休暇村」。私はまずテンプル・コンサート「クロイツェル・ソナタ」を聴かせていただいたのですが、そちらが大変すばらしかったため、続けて開催されるファミリー・コンサート「展覧会の絵」も聴きに行くことに。
コンサートは11月4日(土)13時30分から、生口島の「ベル・カントホール」にて開催。仕事が立て込んでおり当日の朝まで行くか迷いましたが……、なんとか算段がついたので思い切って。もともと大好きな曲なので、予習は省いてドーンと突撃してきました!
アートの島としても知られる生口島
ベル・カントホールのあるしまなみ海道・生口島は、尾道側から数えて三つ目の島。生口島の大部分と北西にある高根島はかつて「瀬戸田町」と呼ばれていました。この瀬戸田地区にはパブリックアートがいっぱい!なぜなら、1989年から1999年までこちらの地域で「瀬戸田ビエンナーレ」というアートプロジェクトが行われていたからです。現在このプロジェクトは「島ごと美術館」に姿を変えており、今でも島を訪れると17点の野外彫刻を見ることができます。
とはいえ、いつものごとく子どもを送り出して大急ぎで会場に向かっている私。今回は作品鑑賞は泣く泣く断念です。またの機会に!道中には「平山郁夫美術館」もありましたが、横目に見ながら会場へ。
会場のベル・カントホール
こちらが会場のベル・カントホール。イタリアの伝統的な歌唱法「ベルカント唱法」にちなんでおり、「よく響く美しい歌声」を意味します。クラシック音楽専用のコンサートホールとして親しまれ、しまなみ海道・秋の音楽休暇村では例年こちらのホールをメイン会場の一つとして利用しているようです。
コンサート前半は愉快な楽器紹介
前回のテンプル・コンサート「クロイツェル・ソナタ」が厳かな雰囲気に包まれた大人向けの内容だったのに対して、今回のコンサートは「未就学のお子様大歓迎!」の家族向け。会場には小さな子どもがたくさんいてにぎやかです。「この曲、聴いたことある人?」「はーい!」のようなやり取りもあり、演奏者も鑑賞者もお互いにリラックスして楽しんでいるのが伝わってきます。多様な味わい方ができるのが音楽の魅力ですよね!
楽器紹介はしまなみ海道・秋の音楽休暇村の総合プロデューサーであり、今回の演奏会でコンサートマスターも務めた小島燎さんの解説を聞きながら、以下のプログラムでおこなわれました。
ヴァイオリンで聴く愉快な「猫ふんじゃった」や、心に染み入る「アヴェ・マリア」、ノリノリでかっこいい「サマータイム」に、秋らしく物悲しいメロディの「アルマンド」。さまざまな音色を堪能できるプログラムでした。
ぱっと見でわからない(私だけ?)ヴァイオリンとヴィオラを、並べて大きさを比較してくださり「思ったより大きさが違うんだな」とびっくりしたり、コントラバスを演奏されたアレクサンドル・ベルさんのおちゃめなお人柄に和んだり。後ろの席からは「やってみたい!」というかわいい声が聞こえてきました♪
後半は絵とナレーションで楽しむ「展覧会の絵」
そしていよいよ、楽しみにしていた「展覧会の絵」の演奏が始まります!ご存知の方も多いかもしれませんが、展覧会の絵について当日のプログラムから解説を引用します。漢字にはふり仮名がふってあり、子どもにもわかりやすい内容になっていました。
曲の構成は次の通り。
演奏者は音楽休暇村ストリングス、指導・脚本は堀崎太郎さん、曲の合間でおこなわれるナレーションは尾道市立瀬戸田小学校のみなさん。私は「展覧会の絵」といえば原曲のピアノ版や有名なラヴェル編曲のオーケストラ版しか知らなかったので、弦楽合奏版に興味津々でした。また、全国公募で選ばれた美術専攻学生・卒業生の皆さんによる絵画が、曲に合わせてプロジェクターに映し出されるということでそちらにもワクワク。
全部紹介するととてつもなく長くなってしまうので、印象に残ったものをピックアップして紹介します。
古城
「展覧会の絵」のなかでも特に好きな曲。なんとも言えない寂莫としたメロディが胸に迫ります。プロジェクターには夜空を背景にそびえたつ古い城。細い細い階段が、くねくねと曲がりながら上に向かって伸びていました。あの階段を上って見る景色は一体どんなものなのだろう……。ひきずるような静かなリズムを刻み続けるコントラバスの音色が心に残りました。孤独な夜にたった一人で聴きたい曲です。
ビドロ(牛車)
「苦しい労働、逃げられるものなら逃げたい。でも決して逃げることはできなかった……」「逃げろ!!」瀬戸田小学校の子どもたちの迫真の演技で緊張感に包まれる会場。流れるように始まったこの曲は、重い足取りで通り過ぎる牛の様子をえがいています。ビドロには「家畜のように虐げられた(ポーランドの)人々」という意味もあるのだそう。プロジェクターには原色の赤、黄、青を用いた抽象画。絵の具が飛び散っているようにも地図のようにも見えました。
リモージュの市場、カタコンベ – ローマ時代の墓
対照的なこちらの2曲は続けて演奏されました。パステルカラーで描かれた光あふれる市場の風景。陽気でさわやかな曲調にぴったりです。市場での駆け引きを表現しているかのように段々と盛り上がっていく曲。
打って変わって静まり返り、厳粛な曲調のカタコンベ。こちらの曲では、なんとプロジェクターにベル・カントホールの座席表が!!そういわれてみると座席を表す四角形が行儀よく並ぶさまが、お墓のように見えてきます……。私たち観客がまるでお墓の霊になってしまったかのように思われる演出。息をひそめてひっそりと聴いたカタコンベは一生忘れられない思い出になりそう。
鶏の足の上に建つ小屋 – バーバ・ヤガー、キエフ(キーウ)の大門
こちらの2曲も続けて演奏されました。私がよく聴くオーケストラ版だとシンバルやティンパニが派手に鳴り響く2曲なので、弦楽合奏版では少し寂しく感じられないか心配していたのですが……。結果、全くそんなことはなく、ギュギュッとダウンの弓を揃えて弾くメロディや激しくかき鳴らされるピチカートに一瞬にして心を掴まれました。あの緊張感、本当に素晴らしかったです!!
そして「バーバ・ヤガー」のテンションそのままに、クライマックスの「キエフ(キーウ)の大門」に突入。小島さんを中心に心を一つにして奏でられる、心がふるえるようなハーモニーは、今思い返しても涙が出そうです。プロジェクターには、光に照らされた大きな門。中央には子どもと猫、そしてヒマワリが描かれており、たくさんのメッセージが込められた絵であることが読み取れました。
途中、悲しみに思いを馳せるかのような静かな部分を挟み、プロムナードのメロディで段々と盛り上がりながら、再度あの輝かしいテーマがやってくる……。最後のテーマで弓を振り下ろすところが最高にかっこよかったです!!苦難を乗り越えて輝かしい平和をつかみ取る、そんな情景が思い浮かびました。
アンコールはトトロ、終了後には指揮者体験や楽器の演奏体験も
大変な盛り上がりで締めくくられた「展覧会の絵」に続き、アンコールはかわいらしい「となりのトトロ」でした。前回のコンサート同様写真や動画の撮影をしてよいとのことだったので、今回も撮影させてもらってます。短いですがこちらからご覧になってみてください♪和やかな会場の様子が伝わってくると思います。
コンサート終了後には指揮者体験や楽器の演奏体験もあり、皆さん思い思いに参加されていらっしゃいました。上の写真は指揮者体験の様子。打楽器奏者で指揮者でもある畑山洋平さんが子どもに寄り添って優しく指導されています。3拍子の曲について「縄跳びの大縄をまわすように」と表現されていたのが印象的で「なるほど!」と思いました。
おわりに
今回聴かせていただいた「しまなみ海道・秋の休暇村2023」。テンプル・コンサート「クロイツェル・ソナタ」とファミリー・コンサート「展覧会の絵」の二つの演奏会を通して、久しぶりに自分を取り戻したような、まるで「心の休暇」を過ごさせてもらったかような、忘れられない体験をさせていただきました。このたび目にした子どもたちの笑顔が、そしてこの音楽休暇村の活動が、末永く続いていきますようにと願わずにはいられません。
さて、会場の外で開催されていた野外演奏やマルシェの様子など、まだまだ書きたいことはたくさんありますが……、子どもが起きたので今日のところはここまでに。すばらしかったコンサートの様子が少しでも伝わっていれば幸いです♪最後まで読んでくださった方、どうもありがとうございました。
★テンプル・コンサート「クロイツェル・ソナタ」の予習記事
★前回聴いたテンプル・コンサート「クロイツェル・ソナタ」の感想
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