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今日は、ひよこ誕生祭

今年は昨日まで仕事だったので、大掃除は計画的にスルーすることにして、今日に至ります。「大掃除」なるイベントをせずに年越しを迎えるなんて、ひよこを産んで以来はじめてです。ということはつまり、ひよこを産むまでは「え? 大掃除? なにそれおいしいの?」だったわけで。結婚5年目・30歳で出産して、妻の自覚がようやく芽生えたからか三十路になったからか、はたまた母になったからかはわかりません。とにかく、それまでお正月休みなんて昼間からお酒を飲んで「ぐでたま」になるためだけにあったようなものなのに、ひよこが我が家にやってきたその年から、急に「家」とか「暮らし」に関心が向くようになったんです。こんなに年末きわきわまで仕事するのも、同じくひよこ出産後初。(やんごとなき業務都合で休めませんでした)

家の清めレベル"日常"のまま迎えた今日は、大掃除なんてそっちのけで、ひよこ4歳の生誕祭。「4歳になったらトイレで『うんさん』するから~!」(我が家はなんでも"さん"付けで呼ぶので、「うん○」も「うんさん」)とそちらをもよおすたびにオムツに履き替えていた彼女ですが、先週保育園で12月生まれのお誕生会をやってもらってから、「うんさんでるきもち~!」と意識高く(?)トイレに駆けこむようになりました。それくらい、ひよこにとって誕生日はスペシャルな節目のようです。去年も意識するにはしていたものの、「わーい」程度。それが、今年は「キターーー!」に。あぁ、乳児から幼児になったんだなぁ……とこんなところにも成長があらわれて、おかーさん涙目です。

数日前から我が家から徒歩5分のわたしの祖母宅に両親が帰省していて、一昨日昨日は保育園が休みだったのでひよこは祖母宅でみてもらっていました。ひいおばーちゃん&久しぶりに会うおじーちゃん・おばーちゃんに2日間べったり甘えられて、すでに彼女の前夜祭は盛大にドンチャンしています。今日お昼からの本祭@祖母宅を迎えるテンションはチャージ満タン。メーターが振りきれて知恵熱を出したり怪我したりしないよう、おとーさんとおかーさんはお酒を飲みつつ、おせちをつまみ食いしつつ、あたたかーく見守りたいと思います。

それでは、みなさまも良いお年をお迎えくださいませ。

2012年大晦日、午前4時。
尿漏れのような感覚で、目が覚めた。
水道の蛇口がちょろーっと締まりきらない感じ、といえば伝わるだろうか。
出てるか出てないかでいうと、確実に出ている。
でも、「出てますねん!」と胸を張るほどの量ではない。
枕元のスマホに手を伸ばし、隣ですやすやと眠る夫に明かりが当たらないように、体勢を変える。
Googleの検索窓から世界の皆さんに尋ねてみる。

「破水 尿漏れ」

産院の母親学級で、「破水したら、すぐに来てくださいね」と言われていた。
出産予定日は、年明けの1月2日。
前々日の検診では、先生曰く「まだっぽいなぁ」の状態。

破水 オア ノット!?
とりあえず、これをはっきりさせなければ。
今日は大晦日。今は夜明け前。
おいそれと誰かを巻き込むのは気が引ける。
世界の皆さんから、色・量・臭いでの判別方法を教えてもらい、ベッドを抜け出てトイレへ。

……。
……。
わからん。

どうやら、おそらく、尿漏れではない様子。
かといって、いまいち「ディス イズ 破水」とも確信を持てない。
「おしるし(産院に行く段ではない陣痛の兆候)」に思えないこともない。
素人目には判断がつかなかった。

日が昇る前の真冬のトイレの極寒ぶりといったらない。
悶々を抱えながら、お腹が冷える前に寝室に戻る。
再びベッドにもぐり、答えを求めて世界の皆さんを尋ね歩いた。延々と。

結局答えは見つからず、一応世間的に「朝」といって差し支えないだろう午前8時を待って、産院に電話した。
助産婦さんの「一回来てみて」の言葉を受け、夫を起こして車で連れて行ってもらう。
破水だった。
陣痛促進剤の錠剤を渡され、「今日中に産もうな!」とやる気満々の先生。
午後になっていよいよ陣痛がはじまった。
予めスマホに入れていた陣痛アプリで陣痛の長さや間隔を記録していると、助産婦さんに止められた。
「陣痛測定器(お腹まわりにベルト状に巻く機械)をつけてるから、やらんでいいよ」
「むしろ、頭つかわんと、身体に意識を向けて。今、どう? どんな体勢がラク?」

そうして、ちょうど紅白歌合戦が始まった頃、娘・ひよこが真っ赤な顔をして産声をあげた。

(WEB天狼院書店に掲載された「娘3歳、一人称『大森』」より)

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