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あんたが動かないと、事態は変わんないよ

いくらアロマで和らぐとはいえ、やっぱり鼻づまりは不快です。ひよこの為す「いらんこと」に対する「イラッ」の沸点も、低くなりがち。いや、というか、沸点は変わりませんが、鼻づまりの不快感で水温が上がってるせいで、100℃までの温度差が普段より縮こまってる。つい、「沸点が低い」の定型句に収斂させがちだけど、「定まらない沸点」よりも、「イライラの多寡」に目を向けた方が、裁量があるから、そう解釈することにします。

いずれにしても、沸点までそう余地が残ってない一昨日の夜、ひよことお風呂に入ったら、ひよこが、石鹸の泡だらけのカップを、湯船でゆすいだんですよ。イラッ、ぐらぐら。わたしの妙に冷静な「いま何したん?」に何かを察知して、黙るひよこ。この「黙る」っていうの、叱られる立場の自衛あるあるだけど、ほんと、火に油をそそぐようなものですよね。何度目かの「何したん?」に、ついに泣き出し、イラッ、ぷしゅー(沸騰)。わかる、そうなっちゃうの、わかるけど、泣くのは、事態が収まってからにしてちょうだい。泣いても、なんともならないよ。おかーさんは、そこんとこ、易しくないよ。なんたって、沸騰しちゃったしね。

待って待って待って、やっとこさ「せっけんのあわ、ゆぶねにつけちゃったの」を絞り出せたひよこ。そうだね、そうだね。やりきった感満載なとこアレだけど、ここがスタートだよ、ひよこさん。「石鹸の泡を湯船につけるのは、いいこと?」「いいことじゃない」「じゃあ、次は、つけないようにするために、どうする?」「………」「石鹸の泡がついたカップ、どうする?」「………(×10)ゆぶねにつけない」「どうすれば、湯船につけなくて済む?」「………(×10)わからない」「わからないときは、どうすればいいんだっけ?」「………(×10)せっけんのあわを、ゆぶねにつけちゃったら………」

ちゃうやろ。つけへんための方策を、聞いてんねやろ。と言いたいのをまるっと飲み込んで「うんうん、それで?」と投げかけると、彼女は、迷走の森に入り込んでいきました。

途中で切り上げたい気持ちはやまやまでしたが、乗りかかった船だから、こちらが連れ込んだ船だから、最後まで付き合いました。思考停止して、誰かが手を差し伸べてくれるのを待つ子には、なってほしくなくて。自分で落とし前をつける姿勢を身に着けてほしいんです。

無言でお風呂を後にして、パジャマに着替え、ドライヤーと歯磨きを終えて、布団にはいった頃、ひよこがひねり出したのは、何がなんやらな珍回答でした。仏頂面を気取ってたのに、おかーさん、笑っちゃったよ。そうきたか。なるほど、なるほどね。3歳児なりの結論と、彼女のがんばりを讃えて、眠りにつきました。

せっけんのあわを、ゆぶねにつけちゃったら、………ゆぶねでおよぎません!

ひよこ

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