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Radio Chidorian #11

始まりましたRadio Chidorian。
ただの音楽好きが、気に入った新譜を中心に紹介していこうという、押しつけ型マンスプレイニング風 “読む” ラジオ番組です。

SpotifyのMusic + Talk機能が使えなくなりましたので、当番組はポッドキャストから文字で音楽を紹介する形に変わりました。

8月は「戦争」を考える月ですね。気候変動と共に人間による愚行の最たるものです。広島の慰霊碑に刻まれた「過ちは繰返しませぬから」という決意の言葉が、ロシアにイスラエルに、全ての紛争地域の為政者たちの心に響きますように。
さて、今回も音楽を聴いていきましょう!


M-1 『Synchronicity I (Remastered 2023)』 The Police

新譜を紹介するプログラムのはずなのに、今回はいきなり40年前の曲からスタートです!
The Police『Synchronicity I』最新の2023年リマスター・ヴァージョンでどうぞ!

この曲が収録されている、The Policeの5枚目にして最後のスタジオアルバムになった『Synchronicity』のリリース40年を記念して、この度CD6枚組のデラックスエディションが発売になりました。というわけで、一応新譜ではあります!

本編の最新リマスター版に加え、デモ音源やアウトテイクが満載。豪華ブックレットやなんやかんや付いて20000円程です。いかがでしょうか。でも、音源だけなら配信でも聴けるんですよねー。

The Policeは言わずと知れたトリオロックバンドの最高峰ですね。
『Synchronicity』で「シンクロニシティ」っていう言葉に初めて触れたっていう人は多いんじゃないでしょうか。古い話になりますけどね。
名曲揃いのアルバムなんですけど、『Synchronicity Ⅰ』は特に上がります。Stewart Copelandの、皮が破れるんじゃないかっていうスネアの音が最高なんですよね。
ギタリストのAndy Summersは最近のインタビューで、このアルバムがあまり好きではないと言っています。キーボードが多用されているし、メンバーの雰囲気が最悪でまともに録音出来る状態ではなかったそうですよ。
Andy Summers、もう81歳ですって。ラストアルバムから40年ですから、そりゃあ歳もとりますよね。しみじみしてしまいました。

M-2 『Dead Talents Society』 Joanna Wang 王若琳

さあ、今度は本当の新譜です。台湾で8月7日公開の映画『鬼才之道』の主題歌、Joanna Wangで『Dead Talents Society』です。どうぞ!

映画の紹介からしましょう。『鬼才之道』は、2019年にヒットした『返校』のスタッフが再結集して作られた台湾のホラーコメディです。
幽霊の社会は人を驚かせる能力の有り無しで存在価値が決まる結構シビアな世界、という設定で、そんな中で“生き残る”ために奔走する幽霊たちのお話だそうです。
ベテラン幽霊の仲間になる新人幽霊を『返校』にも出演していた王淨さんが演じています。日本でも公開されるといいですね。

この映画の主題歌としてリリースされたのが『Dead Talents Society』で、曲名は映画の英語タイトルと同じです。
作詞作曲歌唱は、台湾系アメリカ人シンガーソングライターのJoanna Wang 王若琳さんです。1988年生まれ、2008年デビューで、台湾のみならず中華圏で幅広く人気があります。なんと!7月31日から8月5日まで日本ツアー中でした!今回私は観に行けませんでした。残念!

この曲は〈中文版〉が同時にリリースされていて、作詞は陳虹任さん。曲名は映画タイトルとは違う『鬼才出道』となっています。
映画のシーンを使った予告編風のMVが公開されましたので、〈中文版〉はそっちを貼っておきましょう。

M-3 『聽不懂 Pardon?』 雷擎 L8ching

次は、台湾の雷擎 L8ching(レイチン)が7月にリリースしたアルバムから、暑い夏に聴くのがピッタリの曲、『聽不懂 Pardon?』です。

雷擎 L8ching(レイチン)は、台湾でドラマーとして活躍していましたが、シンガーソングライターとしても注目を集めるようになり、2021年に1stアルバム『Dive & Give』を発表。この7月にリリースされた『南洋探險隊』が2ndアルバムになります。

制作期間1年半。そのうち3ヶ月は東南アジアをミュージシャンとツアーで回りながら、海や山や洞窟や噴火口といった様々な場所で創作と録音をしたそうです。まさに『南洋探險隊』。

共同プロデューサーは1stアルバムに続いて鍾濰宇が務め、シンガーソングライターの陳珊妮と、注目の若手・鶴 The Craneがボーカル・プロデュースを担当しています。
そのほか、タイのバンドH3FのギタリストGong、台湾在住のピアニストMUSA 明馬丁、台湾のバンド百合花の林奕碩などが参加しています。

8月24日に、1000人規模のライブハウスLegacy Taipeiでレコ発ライブがあるようですよ。ご都合のつく方はどうぞ。私は観に行けません!残念!

M-4 『Letter to the Martyrs』 Cacique'97

さて次は、ポルトガル・リスボンを拠点に活動しているアフロビートバンドCacique'97の『Letter to the Martyrs』です。

この曲はCacique'97のニューシングルですが、2016年にアルバムをリリースして以来の久々の新曲ということになるようです。
バンドについては知りませんでしたが、ジャケットのスイカが目を引きます。
1967年の第三次中東戦争の後、パレスチナを占領したイスラエルが、パレスチナ人々に自国の旗を掲げることを禁じたため、抵抗したパレスチナの人々が、旗の代わりにスイカを使い始めました。
カットしたスイカが、パレスチナの旗と同じ、赤、緑、黒、白の4色になるからで、今では、世界的にパレスチナへの連帯を示すシンボルとして使われています。

歌詞は、パレスチナを離れたディアスポラから両親に宛てた手紙の形をとっていて、過去から今現在まで連綿と続いているパレスチナに対する大量虐殺、占領、植民地化を非難し、西側メディアの偏向報道についても言及しています。こちら(Letter to the Martyrs 歌詞)から読むことができます。

M-5 『Boy's Texture』 長谷川白紙

次は長谷川白紙のニューアルバム『魔法学校』から、『Boy's Texture』をお聴きください。

アルバムは7月発売ですが、この『Boy's Texture』は先行曲として5月にリリースされていますので…、まあ新譜です!
昨年、ファッションショーのために書き下ろした曲が元になっていて、ギターには、君島大空合奏形態などでお馴染みの西田修大が参加しています。プレスリリースには「これまで自身の容姿に対し嫌悪感を持ち、鏡や写真に自身が映ることにも常に恐怖を抱いてきた長谷川が、先日公開されたアーティスト写真のように、それに向き合った曲です。」とあります。
数年前に観たライブは、パーカーのフードを被ってステージに出てきてMCなしで演奏して逃げるように去って行く、というものでした。今のは長谷川白紙だよね?っていう感じが印象的でした。
アー写を撮り、THE FIRST TAKEに出演しと、御年25歳だそうですから、社会との関係性を色々と考えているんでしょう。

M-6 『Alexander』 Rex Orange County

今回ラストに紹介するのは、イギリスのシンガーソングライターRex Orange Countyです。長谷川白紙と同じ生まれ年で現在26歳だそうです。
9月にリリースされるアルバム『The Alexander Technique』からの先行シングルが発表されています。
彼の曲は甘いラブソングが多い印象ですが、このアルバムについて「ここ数年の自分の脳内と経験を覗き見るようなアルバムで、ほとんどが日記のようなものです」とコメントしています。25,6歳ともなると色々あって、それが音楽にも影響を与えていくんですね。2022年の性的暴行疑惑も大きかったでしょう。
アルバムのオープニング・トラックになる『Alexander』は、ピアノだけの伴奏で医者とのやりとりを語るように歌う、まさに日記を読んでいるような印象の曲ですが、それだけなのにとても美しい音楽になっているのは彼の才能ですね。
因みにAlexanderは彼の本名です。
歌詞はこちら(Alexander歌詞)から読めます。

それでは、Rex Orange Countyの『Alexander』を聴きながらお別れです。また次回をお楽しみに。

※今回ご紹介した曲を加えたRadio Chidorianのプレイリストです。Spotifyのみになりますが、よかったらお聴きください。


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