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【選挙ウォッチャー】 NHKから国民を守る党・動向チェック(#221)。

「NHKをぶっ壊す!」。
 そんな過激なキャッチフレーズ、過激な政見放送、過激なパフォーマンスが話題となり、国政政党になって約1年3ヶ月。今、NHKから国民を守る党は、地方選挙ですら議席を取れない「超不人気政党」になっている。今年に入ってから当選したのは、2月の新座市議選、4月の志木市議選のみ。しかも、志木市議選は無投票当選である。直近では、8月23日の箕面市長選と箕面市議選、9月13日の和泉市議選、10月18日の岡崎市議選で、それぞれ落選。惜しい戦いにさえなっていない。
 こうなってしまったのは当然で、これまでNHKから国民を守る党がやってきたことと言えば、不正競争防止法違反威力業務妨害脅迫罪といった法の一線を越えた迷惑行為に加え、ヤジを飛ばした一般人の私人逮捕、センター試験直前の予備校前での大音量演説、抗議をした一般人の個人情報晒しなど、唯一の公約として掲げたはずのNHK改革がまったく進んでいないばかりか、問題のある行動ばかり。
 かつては「悪名は無名に勝る」と言い、あえて炎上商法を仕掛けているかのように振る舞ってきたが、今ではどれもこれもが灰になり、燃えるものさえ残っていない。
 現在、NHKから国民を守る党には、YouTubeの視聴者から衆院選の準備金として集めた5億円以上の借金があり、初年度10%、2年目以降5%の金利を支払わなければならないため、今年は利子だけで5000万円以上の支払いが見込まれている。
 しかし、先日の与儀大介(志木市議)との公開討論で、立花孝志は党の口座に入っているお金が1億円を切っていることを明かしている。もし衆院選が行われることになれば、全国11ブロックに候補者を立てるとしているので、6600万円の供託金と選挙費用がかかる。これに5000万円以上の利子の支払い、コールセンターの人件費や維持費、弁護士や司法書士への報酬、立花孝志の生活費などが加わるのだから、いくら10月と12月に政党交付金が入ってくるとはいえ、資金はショート寸前ではないかと見られている。


■ N国党が始めた誹謗中傷示談金ビジネス

 NHKから国民を守る党は、「ネット選挙株式会社」を立ち上げ、実際にポスターの製作にかかった原価ではなく、公費で賄ってもらえるポスター代の上限を請求することで利鞘を得てきた。ところが、選挙は連戦連敗。NHKから国民を守る党公認で立候補を希望する人も少なくなり、この方法でお金を稼ぐことは難しくなっていた。

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 そんな矢先、立花孝志は「ネット上の誹謗中傷の開示請求」を中心に活動している福永活也弁護士と出会う。福永活也弁護士は、小学生YouTuberで話題の「ゆたぼん」や、インフルエンサーとして活躍する「はあちゅう」の誹謗中傷対策も無料で引き受けているという。
 彼の著書に書かれたプロフィールによると、独立1年目から年収5億円以上、最高で10億円を稼ぐほどの超敏腕弁護士にして、世界七大陸最高峰の登頂と北極点・南極点到達をする「冒険家グランドスラム」に挑戦。驚くことに、既にエベレストを含む七大陸最高峰登頂と南極点到達は達成しているそうで、あとは北極点を目指すのみとなっているようだ。
 あまりに壮大すぎるスケールの話にニヤニヤしている人も多いかもしれないが、標高8848メートルのエベレストの頂上にも、マイナス50度に達する南極点にも立ったことのあるスーパーアスリートにして、年収10億円の超敏腕弁護士にして超敏腕実業家の福永活也弁護士が、今、立っている場所は、立花孝志の隣である。

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 立花孝志は最近、この福永活也弁護士と組み、ネット上の誹謗中傷対策に乗り出すことを宣言して、自分たちに向けられたネット上の批判に対し、手当たり次第に発信者の開示を求める仮処分の裁判を起こしている。
 この手の裁判に少しでも知識がある人なら「何をしているんだ」と眉をひそめるかもしれない。というのも、この仮処分は本裁判の手前の手前に過ぎず、その道のりは険しく遠い。エベレスト登頂で言うところの、麓の村までやってきたというレベルである。この仮処分で得られた情報から、今度はプロバイダーに対して裁判を起こし、その裁判で勝って初めて個人情報を割り出すことができ、そこからようやく本裁判に臨めるわけで、政治家である立花孝志に「このゴキブリ!」と言ったところで、そんなものが名誉毀損にあたるとは考えられない。政治家である立花孝志が名誉毀損の裁判を起こしたところで、1円も取れそうにないのである。
 それでも、立花孝志と福永活也が開示請求の手を緩めることはない。
 第1弾として16アカウント、第2弾、第3弾と次々に開示をしているといい、これからも手当たり次第に裁判を起こすとしている。いくら福永活也弁護士が無料で引き受けているとはいえ、どうせ1円も取れない裁判のためにセコセコと書類を作り、下手すれば2年近くかかるかもしれない裁判の話をしているのだから、こんなにマヌケなことはない。
 だが、立花孝志としては、これでいいのである。
 立花孝志には、やたらと裁判を仕掛けてくるイメージがある。わざわざ被選挙権のない女性を立候補させようとして、立候補できないのは不当だと言って裁判を起こすくらいである。勝ち目があるとは思えないマツコ・デラックスさんを相手にした裁判や「週刊文春」を訴えた裁判を見ても、少しでも気に入らないことがあれば、すぐに裁判を仕掛けてくる。中には、N国党立川市議・久保田学の裁判のように「訴権の濫用」が認められ、原告が被告にお金を払わなければならなくなったケースもあるが、こんなに簡単に裁判を仕掛けてくる人間は、やはり恐ろしい。
 立花孝志は、こうした情報開示の仮処分裁判を起こしたアカウントに対してダイレクトメッセージを送り、100万円以上を請求する裁判を起こしてほしくなければ、住所や氏名のわかる身分証のコピーを提出した上で、指定の銀行口座にお金を振り込むように求めている。さらに、住所や氏名などの個人情報の提供を拒否するのであれば、その金額は「30万円」だと書いている。


■ 裁判の恐怖とパニックに怯える一般市民たち

平穏に暮らす一般人が、ある日突然、ネットに書き込んだ批判を名誉毀損だと言われて国政政党の代表に訴えられる。これはなかなかの恐怖だ。相手は年間1億6000万円ほどの政党交付金を得るほどの巨大組織。一方の訴えられた市民は、活動家でもなければ、N国党の動画を見て感想を述べただけのごくごく普通の一般人である。
 いくら一般人が正しかったとしても、ひとたび裁判を仕掛けられてしまえば、どうしても悪そうなイメージは作られてしまうし、潔白を証明するために弁護士を立てれば、数十万円の出費は避けられない。NHKから国民を守る党は党員も支持者もいる組織だが、私たちは個人である。多くの人は裁判と無縁の人生を過ごしてきただろうし、圧倒的に力の差がある相手から訴えられれば、パニックになってしまうことだろう。
 立花孝志から裁判を予告され、指定の口座に30万円を振り込むように要求された一人は、国政政党という巨大な組織に狙われた恐怖から精神的に追い込まれ、入院を余儀なくされている。医師の見立てでは退院するまでに3ヶ月ほどかかるという。それまで仲睦まじく平和に過ごしてきた一つの家庭がメチャクチャに『ぶっ壊された』瞬間だ。
 まるで当たり屋に狙われてしまったかのようだが、開示請求をしている当の福永活也弁護士は、こうした人たちを「当選者」と呼んでいる

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 一方、100万円以上の裁判を仕掛けると市民を脅し、30万円を要求したあげく、幸せな家庭をぶっ壊して病院送りにしている立花孝志は、自身のYouTubeで草野球をやっていると報告し、「中日ドラゴンズ」ならぬ「中絶ドラゴンズ」との共同チームで、堀江貴文イノベーションユニバーシティの草野球チームと対戦すると話している。
 日本に9つしかない国政政党の代表者が、何の倫理観もなく、NHKから国民を守る党の立川市議・久保田学を中心とする草野球チーム「中絶ドラゴンズ」を紹介しているのだが、このチームはご想像の通り、「女性を中絶させた経験のある男たちを中心に結成されたチーム」である。
 そこには小さな命が失われたことや母体を危険に晒したことに対する後悔や反省、罪悪感といったものは一切なく、こうした不謹慎なネタを喜んで全世界に配信してしまう、頭のネジが何本もぶっ飛んだ男の不気味な笑顔が映っていた。


■ 「ビジネスのチャンス」と口を滑らせた立花孝志

 政治家に対する批判は、多少汚い言葉を含んでいたとしても、名誉毀損に問うことはなかなかできない。そんなものがいちいち引っかかっていたら自由な言論ができなくなってしまい、政治に対する真っ当な批判さえできなくなってしまうからである。だから、もし立花孝志に裁判を仕掛けられてしまったとしても、応じずに冷静に受け流していただきたい。また、もし不安があるのなら、警察に相談してもいいだろう。
 確かに、誰かを誹謗中傷することはあまり良いことではない。しかし、唯一の公約である「NHKをぶっ壊す」には取り組まず、細々と幸せに暮らす家庭をぶっ壊すことばかりやっている政党が、市民からどれだけ口汚く罵られたとしても、そんなのは当たり前である。それが嫌なら、とっとと公約を実現してアピールすればいいだけのことである。ガタガタ言えるのは公約を実現してからではないだろうか。
 立花孝志は、一体、どういうつもりで裁判を仕掛けているのか。10月21日に行われた党定例会で、立花孝志はこう話している

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(01:42:34~)
「まあ、計画ではもっとパンパンパンと通っていく予定やったんやけど、残念ながら坂本君が落選してから、もうずーっとやもんな。おらへんやろ。あそこがたぶん、あ、そうだ、新座が行ったんか。まあ、坂本君が悪いわけじゃないかもしれません。あの、まあまあ、党としてこう上がって、今、下がっているという、もうこれ一回。名誉毀損に関し、名誉毀損の裁判をめちゃくちゃやってるけど、あの、さすがにあんだけインターネット上でムチャクチャ書かれてたら確かにそりゃまずいなというのも、ちょっと思ったので、ここは本当にガンガン行きます。で、昨日も10万円振り込んでもらってます。で、これから本当に、名前と住所を入れてくれた人は10万円で、名前ない人は30万円、それが納得できへんかったら、もう裁判しましょうって返してます。で、今日も裁判所行ったら、あのまた別の弁護士さんに声をかけられて一緒にメシ行ってきたんですけど、まあ、あの、その人も名誉毀損のことを取り上げている弁護士さんなんで、これからそこはどんどん、だから、木下優樹菜さんなんかは、ちょっと声をかけて一緒にやりませんか言うて、言ってもいいのかなとは思ってますけど。まあ、新しい層を何って言うのかな、ビジネスのチャンスのところなのかな、べつにビジネスのためにやってるわけじゃないんだけど。あの、まあ、誰がっていうのは公開しないですけど、まあ、自首してくる人って、もう本当に可愛らしいね。人の悪口さんざん書いといて、ごめんなさいごめんなさいって言うのは、可愛いね。二十歳の学生だったり、40過ぎのオッチャンだったり。あの、可愛らしい声した女の子がね、声可愛いのに書いてることえげつないなっていう。あの、電話してくる人もいれば、Twitterのダイレクトメールで来る人もいるし、党のメールで来る人もいるし、ショートメールで書いてくる人もいます。ただやっぱり、あの最初はね、お二人無料でって許したんですけど、弁護士さんからも注意があって、これはやっぱり交通違反をしたら反則金を払うのと同じで、やっぱり幾ばくかのお金を取らないと、既に弁護士が動いて裁判所も動いてるんだから。それを無料にするっていうのは、ちょっと問題があるでしょうというご指摘を受けたので、まあ、10万円はいただこうかということで、本人に対する反省を促すという意味で10万円と」

 立花孝志は確かに「ビジネスのチャンス」だと口を滑らせた。慌ててビジネスのためにやっているわけではないと訂正したが、後の祭りである。
 さらに驚くことは、示談金を取るように指示しているのは弁護士だということだ。交通違反をしたら反則金を払うのだから、誹謗中傷をしたら10万円払うべきだと滅茶苦茶な理論を展開しているが、自首してくる人を可愛いなどと言っている時点で、本当は名誉を傷つけられているなんて感情は一切ないのではないだろうか。
 日本に9つしかない国政政党がやっている恐喝まがいの裁判ラッシュ。これは紛れもなく国家レベルの大問題だ。こんな政党に騙されて投票してしまった有権者は、今、こうして起こしている数々の事件や騒動をしっかりと見てほしい。

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