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'elseのこと

どうして歌謡曲と恋愛の思い出を結びつけてしまうのだろう。音の魔力は言葉の重みより蠱惑的だ。自分は詩や俳句を読むのが苦手で、行間とかではなく、できるだけ順を追って書いて読ませてくれる文のほうがしっくりくるのだけれど、旋律が乗ると格段に情景が浮かびやすくなる。
音楽はずるい。心を揺さぶりやすすぎる。

'else

'elseというバンドがあった。
今となっては情報も探してみても、わずかな断片しか見つからなくなってしまっている。
ボーカルは河村裕子さんというかたで、さっぱりしたボブカット、ブルゾン(アノラック?)のモッズな姿が一番印象にに残ってるだろうか。ギターも演奏しながら歌う。
全体は4人編成のバンドで、高校で知り合った仲間で結成したという話。ロック? ガレージロック? 詳しくないのでよくわからないが、そんなふうに称されていたと思う。曲名に「POP」と冠したものあるので、ポップと捉えてもいいかもしれない。
ミッシェルガンエレファントの女性ボーカル版……などと私は形容していた。ゴリゴリに響くギターサウンドに、身体を揺り動かされる、そんな心地がしていた。

私は基本的にインプットが少ない。学生だった私は、テレビも見なかったし、流行についてまったく興味がなかった。学校で新しくできた友だちが「ミスチルいいよな」みたいな話を振ってきたとき、なにそれ美味しいの?的な返答をして、ボロクソにバカにされた。「ミスチルも知らない」批判に、当時の私はけっこう驚いた。流行に遅れている……そこで、姉のお古のラジカセで、ひとまずラジオから世の中を知ろうとした。
最初は普通に歌謡曲を覚えていったと思う。初めて買ったCDはL’Arc〜en〜Ciel。当時はV系(おっと! 語弊があるか)が趨勢を占めていて、私もご多分に漏れず聴くようになった。まあ、V系というか、単純にロックサウンドが好みだった。
だんだんと世界が広がっていくにつれ、天の邪鬼が目をだす。
雑誌「ぴあ」の、細かい字で書かれたライブ情報のページを読み、知らない名前のバンド名を覚え、レンタル屋でCDを探し掘り起こしていく。深夜の、インディーズや、まだデビューして間もない音楽家が取り上げられる音楽番組をチェックしだす(粘着質なのだ、私は。)。特にローカル局で放送していた、music rootsという番組は、私の音楽の趣味を決定づけた。advantage Lucy、cymbals、motocompoなんてそこから知ったと思うし、instant citronの片岡さんなんて、番組のナレーションをしていた。カヒミ・カリイも聴いたなあ。
'elseはテレ朝系の深夜番組とかでみただろうか。ローカル局でだったかもしれない。数秒しか流れない曲と、ぴあで見たあのバンド……みたいに参照して、チェックしていく作業をしていた。'elseは、そこでピンときたのだと思う。

ちょうど、『New Machinegun Etiquette』というメジャーデビューアルバムに先行したシングルカットを出したので、レンタルして聴いた。その時の評価は、いわゆる優・良・可の「良」くらいだった(上から目線…だが、得てして一般ピープルなオーディエンスなんてこんなものだと思う…)。
ただ、サウンドが好みだったし、ちょうどアルバムが出るタイミング。過去の曲も気になるし……で、アルバムを購入してみた。

心酔は初恋に似る。揺さぶられるきっかけは、なにげない一瞬だから。
メジャーデビューアルバム『ニューマシンガンエチケット』はともかくかっこよかった。最後まで聞き終わる前に虜になっていた。ガリガリに響いてくるギターサウンド。河村裕子さんのボーカルは尖っていて、でもどこか少年のように甘い。ズルい声だと思った。特に半音ずれたような音程をとるところとか、形容しようがなくかっこく耳にに刺さる。
曲もロックながら、歌詞はどこか思春期のような初々しさと荒っぽさがあった。
アルバムの構成が素晴らしい。時間コンパクトさと、ビージーズのカバーもありの、飽きが来ない。最後の曲の長いアウトロの〆。エモーショナルに、ふざけている? 楽しんでる? 怒っている? 混沌としていて計り知れない。この一枚で、完全に堕ちた。

'elseはその後、2ndアルバム『Come Clean』を出し、メジャーシーンから離れる。そして、ミニアルバムを1枚、カバーアルバムを1枚出し、解散した。このアルバムはポップさは減り、パンクの尖ったところ、あと曲作りの旨さが増した。少ししっとりとした感があるので、今までの明るさが好きだった人には少し外し気味だったかもしれない。

ただ、私自身、ほかの興味があることに目移りしていて、メジャーを離れたあとの活動は、ミニアルバムは購入したものの、ほとんど追っていなかった(でも、CDは結構聴いた)。
ふと、最近の活動はどうしているのだろうと調べたときに、すでに解散したことを知った。特におおきな話題になっていたわけでもなさそうで、なんだか、拍子抜けしたような気持ちだった。
それは2005年くらいのことだただろうか。

ここからは……
ちょっと思うところがあったので、下書きのままにしてあります。
興味があれば、次のURLで読んでください。
https://note.com/preview/nf10adadf811c?prev_access_key=51eefc05870fdcfd5816deb5aa0c15e8


その時描いていたマシンガンの画

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