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文学フリマ東京38回録

まずは今回の出店にあたり、ブースに来てくださったかた、足をとめていただいたかた、ご購入くださったかた、そして、気に掛けてくれたかたへ、感謝申しあげます。
まことにありがとうございました。

寄る年波もあり、今回は全体的に落ち着いていこうと思って望んでいた。いつも設営でへとへとになっていたし、一番の悩みどころの自意識……上手く話そうという感情は、もう仕方ないという諦めも出てくる歳だ。
そのせいあってか、今回はいつもながらのコミュ障っぷり(支離滅裂でなにを喋っているか自分でもわからなくなる感じ)は押さえられたように思う。会ったかたと楽しく話すことができたのが、なによりの収穫でした。ともあれ失礼を働いていたら、まことに申しわけありません。

このバッジをつけていればやさしくして貰えるかもと思ったけど、さすがに辞めた

そもそも論

書籍のイラストレーションをやってたい、だけど仕事はない。「それならば自分で造ればいい」と、知人に文章を書いてもらい、編集やら、レイアウトやら、組版やらを私が造り、そして装画を描く……というつもりで何度か文学フリマに参加していた。
2022年に、趣味で集めている手ぬぐいを一覧で載せた本を作成。手持ちの手ぬぐいを紹介するX(旧ツイッター)アカウント「毎度、てぬぐい」も始める。
そして、今回、さらにそれが昂じて、ついにオリジナルの手ぬぐいを作成して出品!
…………という自己紹介をしたほうが、訪問してくださったかたにわかりやすいな、と気づいたのは1時間くらい経ってからで、いや、何度も参加してるのにぜんぜん学んでない……ご一緒したお隣のブースのかたや、向かいのブースのかたたちが、一生懸命本の説明をされていた姿を見て、「フレッシュでなにより…」などと悠長に構えていたけど、「いや、お前もがんばれよ」という気持ちになって、恥ずかしく思った。いや、頭の下がる思い。
まあ、文学フリマに手ぬぐいを新作として持ち込むあたり、文も学もおろそかにしている。だから、どういう経緯でこうなってるかの興味は持ってもらえないと、なにも始まらない。既刊書籍もなかなかに謎ジャンルで、いつも説明に困っているくらいなのだから。

熱を出した

文学フリマの前の月曜日に熱を出した。その日は、朝から調子が悪いと思っていたが、帰宅して体温計を見ると37.5度。普段体温が低いので、頭痛や倦怠感があっても、発熱することはあまりない。注意を払つつ、早めに寝床についたものの、熱っぽくて寝付けない。朝になっても熱が下がっていなかった。
「これはやってしまったか……」
急激な熱の上がりかたが、昨年罹った流行病に似ている……なかば諦めた思いで発熱外来へいき、検査。
結果はインフルエンザも、コロナも陰性。安堵した。ここで感染症に罹っていたら、さすがに文学フリマは辞退するべきだったから。

ただ、その後、熱が38.5度まで上がり、2日間仕事を休むことになった。喉もおかしくなった。
文学フリマ当日は、体力はぼちぼち戻っていたものの、かなり声がガサガサでした。ただでさえ滑舌が悪いものの、さらに聴き取りずらかったと思います。

有料イベントになったにもかかわらず当日は大盛況で、気づけば売り上げも過去一番だった。手ぬぐい蒐集本がよく動いたのが嬉しい。

規模が大きくなったからなのか、初めて参加、あるいは来場というかたも多かったように思う。プロのかたや、著名なかたのブースも多くあった。
購入してくださったかたが、「初めて来た文フリで、初めて購入した本です」と言ってくださったのが、とても嬉しく、そして気恥ずかしくもなった。拙著ですみません……真摯に説明を聞いてくださって感謝しています。
それにしても、これだけ賑わっているのに出版不況とは。本が好きな人は確実にいる。出版業界も、マスから個の時代になったようにも思えるし、版元は大いに考えないといけないはずだろう(上から目線)。

購入について

私は2014〜2019年くらいに、くるったように演劇を見ていて、毎週のように下北沢へ行き、小劇場に通っていた(いわゆる「演劇オジサン」です)。コロナがはやりだしたころ、どんどん客席に人がいなくなっていく劇場に悲しくなって、そして自粛もあり、足が遠のいてしまった。コロナ後も、好きな劇団の公演はいまでも見にいく。あの頃に比べたらずいぶん観劇数が減ってしまったが(まあ、ほかにも経済的に余裕がなくなったことも一因ではある)。

小劇場は客との距離が近い。とはいえ、私は舞台関係のかた、役者のかたたちと積極的に接触したいは思わない。それは、前述の通り私のコミュ障も原因なのだが、そもそも自身が演劇にまったく関わりがないし、知識もない。ただ、舞台を楽しんでいるだけなので、おこがましく思ってしまうのだ。テレビタレントを見るように、程よい距離感で見ていられたらいいと思っている。

劇場で知った演劇の関係者が今回、ちらほら参加されていた。なかでも、記憶によく残っている劇団たちが参加していた。もちろんその出品物は押さえておこうと、ブースへお邪魔させてもらった。あこがれの対象と話をするのは気負いしたものの、嬉しくなって自分が出店者であることもべらべらと伝えてしまった。かえって気を遣わせてしまったように思い、あとから後悔。

蒐集本なんて造るくらいだから、公演の物販でグッズに手ぬぐいなんて見つけてしまうと、買う。そういえば、蒐集本にも、演劇関係の項目でくくって購入した手ぬぐいを掲載した。
物販で手ぬぐいを販売していた公演の主催者さんが、今回出店されていたので、戯曲集を購入した。なぜか時間が合わなくて、そのかたの作品は1作しか見られていない。だけど妙に思い出に残っている。ときとともにセリフとか、ストーリーは忘れていってしまうもの、その公演の空気感はよく覚えていて、再演があるならぜったいに見たいと思っていた。今は活発的に活動されていないようなので寂しさが残るが……つくづく、演劇というのは一過性のものだと痛感する。
当日その買った手ぬぐいを持っていって、「手ぬぐい集めてて、これ買いました」なんて言ってしまった。よく考えたら、なんとも恥ずかしい自己顕示欲だったと嗤う。でも、この手ぬぐいはかなりお気に入りで、蒐集本にも大きめに載せていた。そういえば、許可とかなにもとっていないものだから、「勝手に載せてすみません」といえばよかった。


2年前に造った手ぬぐい蒐集本

今回の出品について

今回、オリジナルの手ぬぐいを出品した。
『職場に猫放そう委員会』会員手ぬぐい。
手ぬぐいのデザインをお手伝いしたことはあるものの、完全オリジナルで、しかも染めたものは初めてだった。手ぬぐい蒐集を始めてから、いずれはつくりたいと思っていたので、ひとつ夢が実現した。やはり実際の形になるのは喜ばしい。

もともとは、ふと思いついてステッカーにでもしようかと思っていたイラストだった。猫を放つOLの絵を何種類か描いて、そのままになっていたが、携帯して使用する手ぬぐいの柄として、いけるのではないかと思った。これを会社に持って、手を拭いたり、お弁当を包んだりしている姿を想像すると楽しい。猫がいつも一緒にいる気持ちになってもらえたら、また、ホントに参っているときに、猫吸いならぬ、猫手ぬぐい吸いなどして気を晴らしてもらえたら、いいのではないだろうか。

今回、OLをふたりと、職場を闊歩する猫の絵を足して、一枚の図柄にした。
当初は注染での制作を考えていた。やはり手ぬぐいの憧れは、裏側までしっかり色が染められる、注染だろうと。
制作にあたって、イベントで何度かお会いしている黒猫舎さんに相談させてもらった。手ぬぐい蒐集家としても偉大だし、知識と、そして手ぬぐい愛の溢れるかたなので、オリジナルを造るときは、お願いしたいと思っていた。
なんども質問してしまい、そのたびにアドバイスをいただき、とても煩わしい思いをさせてしまったことと思います。たいへん感謝しております。

今回の手ぬぐいは1枚にどんと大きく絵があるより、折り畳んだときも絵が見えるように、散りばめた柄にしたかった。使っていてそのほうが賑やかでいいかなと思った。ただ、もともとの絵の線が細いことや、文字部分の太さ(文字もどうしても入れたかった)を考えると、注染では潰れてしまう可能性があるとの話。何度か調整と、描き直しをしたものの、この図柄のままでは厳しいのではないかという考えにいたり、注染より細かく染められるであろう、捺染に変更することにした。

染めを依頼したのは、香川の手ぬぐい工房ポスター堂さんで、よくイラストレーターのかたが利用されているので知っていた。手捺染なので、イラストなど、細かい柄の再現にも適している。
サンプルを取り寄せてみると、思っていた以上に裏側への色の入りもよく、懸念していた線の細さもクリアできそうだった。
ということで、反応染め、布は生成り(ほんのり黄色みのある布地)で注文。ギリギリまで線の太さを調整して入稿したかいがあってか、ほぼ潰れることなくできあがり、裏側への色の入りも満足。

できあがってみると、なんとも感慨深い。
在庫を抱えるのはアレだなという思いも当然あるのだけど、それよりも、多くの人に使ってもらいたいという気持ちが湧く。

「毎度、手ぬぐい」の看板娘のPOP
落書き

とういうことで、

手ぬぐいの通販を、Boothで始めました。
まだまだ在庫はありますので、どうぞ、あなたのお供にしいていただけましたら幸いです。

そして、販促として告知動画も造った。せっかくアドビの年間契約をしているものだから、使えるアプリは使いたい! ということでVtuberデビューし、収益化を目論んでいる私としては、ためしに動画でも作ってみようということになりました。SNSに投稿したのですが、文学フリマ当日に、見てくださったかたが来てくださり、ホントに嬉しかった。
こういうしょうもないものを造っているときが、一番楽しい。

ひとまず、まだ申し込んでいない段階だが、次の12月の文学フリマへの参加は前向きに考えている。
そろそろ蒐集本の第二弾を出そうかと考えている……なんて口にしてしまったし、今年1年はやりたいことを優先しようと思っている。



最後に、今回の文学フリマで出会ったかた、気にかけてくださった方に感謝申し上げます。知古文庫は、あまりコミュニティに属さず、のらくら活動をしておりますが、あらためて関わってくださったかたがたに、ありがたいと感じました。


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