[📕ゆる読書録]『優しい女』ニンチ
SNSで書影が流れてきたので、ピンときて購入。並製本。函入り。取り出すと、鉛筆で描かれた女性のヌード画が表紙になっているが、まあ、助平な気持ちで買ったわけではない(と、一応エクスキューズ)。ただ、この画の魅力に釣られたのも否定しないし、函から滑らせると覆っている衣服をはぎ、素肌を晒すように現れる表紙は示唆的。手にとってくれと息をひそめて待っているような本に惹かれる。しつこく帯にキャッチコピーを入れている本ほど警戒してしまう。ただ、売上とか部数とか言いだすと、待っている本は寂しいのかもしれない。
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ゴミ屋敷にしてしまった母のもとで育ったのんちゃん(40歳)のエッセイというか、散文というか、インタビューも載っている。母を恨みながら、世界を恨みながら過ごす生活を綴る。人といるのがしんどいとか、全部しねばいいのにとか、自分が一番好きとか、身体の中に飼う黒いものの大きさを扱いきれない様が禍々しい。しかし、得てして人間の血肉を感じる。これに共感できる私は……同じような症状を持っているからなのか、それとも、だれしも、あるいは彼女のように、怨みと衝動を持ちながら生きているのだろうか。思い出す……クラムボン『シカゴ』の歌詞にある「みるみる膨らむ真っ黒なアイツ」はいつまで経っても去っていかない。
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ふと、上村松園の『焔』が頭に浮かんだ。あの画は六条御息所をモチーフにしたんだっけか? 背景はまったく噛み合ってなさそうだけど、なにか怨みのようなとめどない情念は、あんな表情じゃないかと思った。芸術は決して美しいわけでもないと思う。目を覆いたくなるようなにかだとしても。
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