いじめられっ子の級友

不思議なことに自分はいじめられるという経験がない。
なぜその子供がいじめられているのかも理解出来ないほど通学しなかったので、むしろいじめる側の奴等よりも、マイノリティであるいじめられっ子の個性に関心を寄せて、また、自宅には食料がないこともあって進んで他人様のお宅にお邪魔するようになった。
 いじめられっ子はそれゆえ個性的かつ、知力があり宇宙のことやら、電子工作といったワンランク上の趣味を持つ奴等ばかりだったから、特に庇うことはしなかったが、いじめっ子にはもっと陰湿な嫌がらせをして、イジメっこの反応をみてほくそ笑む、という悪趣味な遊びに熱狂したのであった。
その頃は団地の周りが開発、分譲地となって真新しい戸建てが乱立するような時代だったから、夜中に建築現場に行って生乾きのセメントに手形をついてみたり、柱にタミヤ模型のスプレイで「全共闘」だの「中核派」
「連合赤軍」と落書きをしては素知らぬ顔で観察に行く。夏場になると戸建ての二階の開けられた窓に煙幕花火を投げ込んで「火事だ火事だ❢❢」と叫んで逃げたり、犬小屋に放火したりというネクストレベルのイタズラでカタルシスを得ていたのであった。

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