「お口ぽかん」って?

昨年9月25日の朝のニュースで「お口ぽかん」が取り上げられていたので、調べてみたときの記事です。


「お口ぽかん」とは、専門用語で「口唇閉鎖不全」といい、唇を閉じる力が弱く、唇が垂れさがって見えたり、上唇と下唇の間に歯が見えている状態のことをいいます。

2021年1月21日に「Environmental Health and Preventive Medicine」という国際学術雑誌に掲載された「Prevalence of an incompetent lip seal during growth periods throughout Japan: a large-scale, survey-based, cross-sectional study.」という論文で、日本で初めての口唇閉鎖不全の全国大規模疫学調査を実施した結果が発表されました。

唇があいている状態はかわいらしく見えることもあり、それが何の問題があるのか、疑問に思う方もいるでしょう。

問題となるのは、歯並びに影響する可能性があるということです。

歯並びは唇、頬、舌の圧力のバランスによって大きく影響されます。

唇を閉じる力が弱くなるとそのバランスが崩れ、上の前歯が前方に傾いて突き出す、いわゆる「出っ歯」になったり、上の左右の奥歯の幅が狭くなり、顔の高さが高くなって、いわゆる「面長」になったりすることが報告されています。


今回の論文では全国の66の小児歯科を専門に診療している歯科医院において、定期的に歯科医院を受診している3歳から12歳までの3399人の子供を対象としました。

日常の健康状態や生活習慣に関する44の質問からなるアンケートを保護者に回答してもらい、集計結果を年齢と全国を6つの地域に分けて検討しました。

結果は、日本人の子供の30.7%が口唇閉鎖不全であり、その有病率は年齢とともに増加していることが分かりました。

これは口唇閉鎖不全が自然には改善しないことを示しており、適切な評価と口唇閉鎖不全に対するトレーニングが必要なことを示唆しています。

また、これまで、口唇閉鎖不全は気候などの地域的要因や睡眠時間が発症に関わっている可能性があると考えられてきましたが、この論文では口唇閉鎖不全の割合に地域差はなく、睡眠時間の短さも口唇閉鎖不全とは相関がみられませんでした。

口唇閉鎖不全と相関がみられたのは「口呼吸」や「アレルギー性鼻炎」でした。

主に口で呼吸する癖がついていたり、扁桃腺の肥大や鼻づまりによって鼻で呼吸しずらい子供は、主に口で呼吸することによって口唇の力が弱まり、口唇閉鎖不全になる可能性が示唆されました。


この論文の影響もあってか、日本の歯科保険診療において「小児口腔機能管理料」と「小児口唇閉鎖力検査」が新設され、口唇閉鎖不全は保険診療の対象となりました。

口唇閉鎖力を測定する機器や、口唇閉鎖力を鍛える器具も開発され、対応できる歯科医院も徐々に増えていると思います。もし気になる方はかかりつけの歯医者さんに質問してみると良いかもしれませんね。

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