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旅行へ行く理由

三度の飯より旅行が好き。
旅行のために仕事をしていた。
毎年年始に10日ほどの旅行。
他に少しでも休みが取れたら旅行。

でも、母が病気であっけなく亡くなった時に思った。

いつまで自分も元気でいれるかわからない、家族が病気になっても旅行に行けない。

みんなが元気なうちに、行きたいところに行っておこう。
それまで仕事しながら10日ほどの休みをとっては旅行へ行っていたが、そんなことをしていたらいつまで経っても旅は終わらないし、旅先は近場ばかりだ。
遠くにも行きたい。



仕事辞めて二年間行きたいところに行こう。
そう決めて仕事を辞めた。



そう決めたのに。
2年間と決めたのに。
2年間では足りなかった。


2年後、派遣の仕事を始めて、派遣期間が終わったら半年くらいの旅行へ行き、戻ってきたらまた派遣の仕事をしてという生活をしていた。


結局そんな生活が7年。
そろそろ旅行は終わりにしようと思い、最後の集大成で2年で世界2周しようと計画を立てていた。
1年目はフェリーでロシアに入り、シベリア鉄道でモスクワまで行き、バルト三国、北欧を周り、アイスランド、アメリカはアムトラックで横断して帰国。
2年目はまだ決めていなかったが、アフリカと中南米で行き損ねていたブラジル、コロンビア、エクアドルあたりを行きつつ、まだ行ったことのない国に行こうと思っていた。
フィンランドのフェリーも早割で予約し、海外でも使えるドライヤーを買っていたのに…

出発前の計画段階のときにコロナが流行りはじめ、2年計画はあっさり中止になった。
すぐにコロナは落ち着くと思っていたので楽観視していたが、コロナが落ち着く前に自分の病気が見つかってしまった。
もしも、コロナがなければ長期旅行へ行っていたので甲状腺がんは見つかっていなかっただろう。

旅行に行けなかったのは残念だったが、病気が見つかって治療に専念できたのは良かった。

甲状腺がんは手術で取ったが、肺転移は状況が変わっていないので、いつまで元気で生活できるかわからない。
内服薬もあるので、もう半年の長期旅行は諦めている。


がんが見つかってすぐのときは、もう旅行はいいと思ったし、今も以前のようなモチベーションでは無い。
病気になって何もかもが色褪せて見えて、やりたいことも考えられなくなってしまった。


病気は心をも蝕む。

だから、旅行に行こうと思った。


何かやりたいことを見つけて生きる糧にしたい。
楽しいと思える状況になりたい。


だから、旅行へ行く。

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