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The Empire of Pain: The Secret History of the Sackler Dynasty 痛みの帝国:サックラー王朝の秘史

ようやく読み終えました。合間合間にちょこちょこ読んでいたので、記憶も曖昧だったりしますが、本も分厚い!

これは、アメリカで昨今話題になったオピオイド中毒に深く関係しているサックラー家のお話です。4代前から遡ってサックラー家について詳細に描写しています。誰が製薬会社を起こし、誰が痛み止めと称したオピオイド(商品名:オキシコンティン)を売り、誰が中毒者を産んだことに対する責任があるのか。会社の責任とはいえ、会社は大部分、サックラー家の人たちが管理していました。

オピオイドに中毒性があることは百も承知。しかし売れるものに糸目はつけない。しかも医者さえも買収してゆく。(買収される医者も医者ですが)。そして、カナダやアメリカでオピオイド中毒が問題視され始めると、今度は中国での販売強化に乗り出すのです。

しかし、この中毒性のある痛み止め、オピオイドを初め莫大な財を築いたサックラー家は、篤志家としても知られています。ニューヨークにあるコロンビア大学にはサックラーの名前を冠した「サックラー発達心理学研究所」があり、中国を中心とするアジアの美術に造詣の深かったアーサー・サックラー(1913-1987)が寄贈したサックラー・コレクションもあります。

また、多くの錚々たる美術館(The Metropolitan Museum of Art, New York Academy of Arts and Sciences, The National Portrait Gallery, the Guggenheim Museum, the Tate Modern, the South London Gallery)が、サックラー家から寄付を受けていました。MOMAにはサックラー家の名前を冠したエリア(ウイング)があります。

今では多くの美術館が今後寄付は受けないと宣言したり、理事会からサックラー家を外しています。

しかし莫大な富というのは、悪事でしか成り立たないのか、と思わせられます。現在、大学ではガザ地区での停戦と、大学の投資引き上げを求めて学生と教員が頑張っています。(でも、うちの大学にも警察が入り込んで強制的に学生たちの抗議テントを撤去してしまいました)。これも、植民地支配に関係する出来事であり(元々はイギリスやフランスが中東を植民地支配下に置き、勝手にパレスチナ人の土地にイスラエル建国を許したことなど)、脱植民地化と言われて久しい大学で、ガザ攻撃反対の動きが出てきたのも自然の成り行きと言えます。

そして、植民地がどれだけの富を欧米にもたらしたのか。。。考えるとクラクラします。そして搾取された側はいまだに後遺症で経済的・政治的困難を抱えることに。しかし、日本も植民地支配をしていた国であること、心に刻まなければ、と思う今日この頃です。


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