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Yellowface 黄色い顔

なかなかインパクトのある真っ黄色の表紙にアーモンドアイ。作者はまだ27歳で、すでにアヘン戦争を題材とした三部作や、バベルといったSFを出している中国系アメリカ人のR.F.Kuang。

この若さですごい作品です。内容は彼女のアルター・エゴと思われる、若くして作家としての成功を手に入れているAthena。

作品は彼女の友達である白人の売れない作家June Haywardの視点から描かれます。ひょんなことから、Athenaのほぼ完成している原稿を手にしたJuniperは、その原稿に手を入れ自分の作品として世に出します。

内容は第一次世界大戦中の中国人労働者の話。そのため、ペンネームとして自らのミドル・ネームSongを使い(これだと、中国系の苗字とも取れます)Juniper Songを使い、プロフィール写真も人種が特定しにくいものを使うことに。

これらはもちろん出版社の計らいであるものの、Juniperも拒みません。

といった具合に、最初は白人女性による中国系作家の作品盗用として始まるのですが、白人女性の視点のため、読者は彼女に同情したくなり、現在のアイデンティティ・ポリティックスに疑問を投げかけるものとなっています。実際、お金も才能もあるマイノリティ作家と、そうではない作家が白人だった時、一般的な抑圧・被抑圧の関係は当てはまらないことを、自身が中国系である作家が書いているのですから、面白い!

所々、話が飛んでる感じもあるのですが、New York Timesの書評でも大変好評です。

最近のアジア系作家の活躍は素晴らしいのですが、この本には、それでも出版界では「もう、うちは今月アジア系作家の本を出したから」などと言われて出版を断られることもあることを暴露しています。

そして有名作家の前払金ってすごいんですね!Juniperも6桁(千万円単位)ですし、最後に出てくる作家は7桁!なんと億単位です!とはいえ、作家とは大変なお仕事だと言うことも、出版界のドロドロも見せてくれる、大変独創的なテーマで、ファンになりました!


R. F. Kuang


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