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【書く習慣】#8 職業選択で感じた無知のもったいなさ

一番古い記憶での「将来の夢」は看護師だった。
親戚に看護師がいて、なんとなくかっこよく見えた。
滅多に会わないし、仕事ぶりを見たことは一度もないが、なんとなくかっこいいと思ったことだけは覚えている。

当時の私は看護師でなくても外で働くお母さんがかっこよく見えたのかもしれない。
専業主婦だった母は、私が帰宅する時間には家にいた。
ごく稀にPTAの会議だなんだということはあっても、買い物に出てて帰っていないことはなかったし、仕事で家を空けることは全くなかった。
そりゃ、専業主婦だから外に仕事があるわけではないのだが。

今考えれば、幸せなことだったのかもしれないけど、鍵っ子に憧れる時代もあった。
自分で鍵を開けてうちに入る。家に親のいない時間を自由に過ごしている。
そんな感じが同級生なのに自分より大人に見えた。

だから、そんな同級生もうらやましく感じたし、外で働くことがカッコいいことだと思った。
かといって、専業主婦がかっこ悪いと思っていたわけではない。
自分にとって当たり前すぎてなんとも思っていなかったというのが正直なところだ。

小さい頃から中学2年くらいまではずっと看護師になりたいと思っていた。
自分に向いていないことに気がついていなかったから。

進路を決めるとき、近くの学校に看護科がある高校を見つけた。
「ここなら早くから看護師の勉強ができる!」と早速、資料を取り寄せたり、学校説明会に申し込んだり……よくある受験生の学校選びを始めた。

ここで初めて気づいた。
私、注射嫌いだった。自分が打たれるのも、注射そのものを見るのも。
自分が注射を持つ(触る)のなんてもっての外だと思ってた。
病院の匂いも苦手。というか、病院が苦手だから匂いで一気に怖さが増す。
緊張してしまうのだ。

なんで気が付かなかったのか不思議で仕方ないが、子供の頃からどうしても病院の匂いがダメだった。
いや、本当、どうして病院で働く職種になれると思ったのか……それくらいどうしても苦手だった。

気がついてしまうと「でも頑張ればきっと」とも思えず、一瞬で適性がないと判断した。
今でも注射は嫌いだ。
血液検査の時の愛想の悪さをどうか許してほしい。
アレルギーなど健康のためにいろいろ確認してくれているのは理解しているが、数秒後の注射が気になって気になって丁寧な返答ができないくらい頭に入ってこない。
今の自分をメタ認知的に見ると、よく看護師になろうと思ったなと笑えてくる。

そんな感じで、あっけなく憧れは去り、進路を考え直すことになった。

英語が好きだったから、英語関係で進むことにした。
最初に浮かんだのはキャビンアテンダント。
いわゆる花形職業。
華やかで海外を飛び回る仕事だと一気に心が奪われた。

ハードルが高い仕事だと認識していたから誰にも言わずひっそり憧れ、目指したいと思った。

この夢が簡単に砕け散るのは高校2年の頃。
高校の先の進路を考える時に、キャビンアテンダントの専門学校も候補に入れた。
親に話す前にある専門学校の体験授業に申し込んだ。

正直にいうと、この頃には「CAにはなれないけど、せめて体験授業でどんなことをするのか見てみたい」という気持ちだった。
なんせ身長が足りない。
表向きには身長制限はないと言われる時代になっていたが、自分には難しいとはわかっていた。
150センチもない。
修学旅行で沖縄へ行った時、自分の荷物さえ上の荷物入れに入れられなかった。
降りる時も当然取れなかった。
そもそも開けられない。
なれないけど体験授業くらいはいいだろうと申し込んだのだ。

残念ながら、体験授業にすら参加できず、教室に入ることなく断られた。
今思えば、担当の先生がしたことは賢明な判断だったのかもしれないが、17歳の心には重かった。
まあ、そんな感じであっけなく夢のまま終わり、次の将来の夢探しをすることになる。

今の日本語教師につながるわけだが、たまに「あの時、CAにはなれないけど、飛行機に関係する仕事や飛行機に乗れる他のポジションなどを知っていたらどうなっていたのかな」と思うことはある。

ある夢を諦めた時に、全く違う方向に進む人はかなり多いと思う。
それは「近くにいるのは辛い」という人もいるだろうが、そもそも他の職業を知らないからという人も多い気がする。

大人になって注意深くみていると、例えばサッカー選手の周りには戦略を考える人、部活でいうマネージャーのような役割の人、監督、コーチ、審判、各種調整役、ユニフォームをデザインする人、シューズなどの道具を作る人、スタジアムを管理する人、最近のドラマのようにエージェントとしてサポートする人、海外なら通訳……本当にたくさんの人がいる。

サッカー選手にはなれなくても、それらを知っていたら近くで働く選択肢ができるかもしれない。
知らなかったら、全く違う仕事についているかもしれない。
どちらがいい悪いではない。

ただ、日本は「新卒」で就職をするのが一般的でその時に何かの仕事に就く必要があるように感じることが多いが、その割に若い頃に知っている選択肢が少なすぎる気がする。

単純に知らない中でどうにか選ぶのではなく、選択肢が多い中で選べたらいいのにと思う。

私はCAの他に関係している仕事は、操縦士とグランドスタッフくらいしか知らなくて違う道に進んだ。
最近、機内通訳という仕事があることを知った。
全部の飛行機に乗っているわけではないのかもしれないが、本気で飛行機に乗って仕事をする道を選ぶとしたら、機内通訳という選択肢もあったのかもしれない。
もちろん、当時知っていたら。

日本語教師になったことは後悔していないし、なんだかんだ言っても好きな仕事になった。
だから、飛行機に乗らない道に進んだことに後悔はない。
ただ選択肢は多い方がいいなと思う。
だからこそ、学生には「Aという仕事の周りにどんな仕事があるのか見てごらん」と話す。

知っていたら関わるときにいい関係性が築きやすいかもしれない。
もし、怪我などで転職を考えることになっても関係のある仕事で経験を活かして道が開けるかもしれない。
関わっていきたい道の近くで進んでいけるかもしれない。
でも、知らなかったら一気に突き放される。
もちろん、知った上で他の道に進むこともできる。

知らないのはもったいない。

最近よく聞く副業も、仕事を知らなかったら「本業が休みの日にバイトするか」という選択肢一択になるかもしれないが、他の方法を知っていれば選べる幅が広がる。

趣味を生かした方法で無理なく副業にできるかもしれない。

結局、知っているか知らないか。
自分の選択肢を広げられるのは自分だけ。

今は次の将来設計に向けて、周りをよく見て選択肢を増やす。
実現可能なものを見極める。
そのためには、わずかな選択肢からどうにか選ぶのではなく、最大限の選択肢から迷いながら決めるくらいの余裕がほしい。

あのとき「あなたには無理」と突き放した体験授業の先生、私たくましくなりました笑
「日本語教師があるよ」と紹介してくれた習字の先生、あのときは選択肢の一つに。くらいにしか思っていなかったけど、今後も続けたい仕事になりました。

選択肢を広げるのは自分だけじゃなくて、周りの人かもしれない。
自分の見る力と、いい人に出会える人柄でありたい。

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