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『歴史的町並みとまちづくりのこれからー保全と活用と創造ー』【第 77回 MACHIBIYA開催レポート】

2020年10月29日に第 77回 MACHIBIYA セミナーを開催いたしました! 今回のテーマは『歴史的町並みとまちづくりのこれからー保全と活用と創造ー』でした。 講師に東京都市大学大学院准教授の中島 伸様をお招きし、歴史的街並み保全のまちづくりのこれからの可能性について、制度が生まれた歴史的背景や現在の事例を元に講演していただきました!

目次
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1 こんなセミナーでした!
2 中島様の講演
3 質疑応答
4 まとめ
5 次回MACHIBIYAセミナーのお知らせ
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【講師の中島伸様のプロフィール】
2013年東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻修了、博士(工学)
(公財)練馬区環境まちづくり公社練馬まちづくりセンター専門研究員、東京大学工学系研究科都市工学専攻助教を経て、2017年より現職。専門:都市計画史、都市デザイン、景観まちづくり、公民学連携のまちづくり
受賞歴:日本都市計画学会論文奨励賞、日本不動産学会湯浅賞(研究奨励賞)博士論文部門
著書:『時間の中のまちづくり 歴史的な環境の意味を問い直す』(鹿島出版会・2019)、『図説都市空間の構想力』(学芸出版社・2015)ほか

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■今回のセミナーのポイント
Point1 開発か保全か、歴史的町並みの保全が着目されてきた歴史
Point2 重伝建地区の制度を活用した修景事業
Point3 歴史的建造物を凍結させるのではなく、未来に受け継ぐ

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開発か保全か、歴史的町並みの保全が着目されてきた歴史
どの町にも歴史はあるが、形として集合して集まっている町は数えるほどしかない。歴史的建造物の研究は100年以上前からされてきたが、民家が着目されたのは戦後からであった。保全運動の端緒は岡山県倉敷市で、住民主体で街並み保全の動きが起こった初の事例だった。

その後1960年代に、街並みを開発するか保全するかで二者択一を迫る世論が全国的に活発になった。その中で、1975年に文化財保護法が制定され、「伝統的建造物群」のカテゴリーが法律で守られるようになった。代表例として、長野県妻籠宿では宿場町を保全するために村おこしのような形で観光とセットで進められ、住民組織や独自の憲章が生まれた。

重伝建地区の制度を活用した修景事業
重伝建地区(重要伝統的建造物群保存地区)は全国に120地区ほど存在し、①規制による制限②保全修理のための継続的な補助③現行法律の一部緩和 といった制度の適用を受けている。制度を活用して、伝統的建造物群以外の建造物に対して景観保護のための修景事業といった補助制度が存在する。

例えば、小江戸と呼ばれた川越の街並みは街並み委員会によるルール決め、マネジメントといった丁寧な作業によって街並みにそぐわない看板や電柱が修景されている。
完璧に伝統建造物に寄せる・再現するのではなく、ある程度の裁量を持って歴史的街並みを作ることができることがポイントであり、どのように重伝建地区の調和を図っていくかが重要である。

歴史的建造物を凍結させるのではなく、未来に受け継ぐ
歴史的建造物を守っていくことが大事なことは認められてきているが、一方で、やり過ぎると新しいものへの選択肢がなくなるのでは?という批判も上がってくる。しかし、新しい動きも大事だと中島様は考える。
新潟県佐渡市宿根木の集落では、元々納屋だったところを公開民家にリノベしている。これは、当時からそういった使い方をしていた背景があり、ある意味正しい見せ方をしている。自分たちは歴史的価値がある建造物をただ凍結させて残しとくだけでなく、未来に向けて、いつかそこで暮らしたい人のためにも環境を改善して、未来に受け継ぐことが大事なのではないか。
その時代に生まれた人がたまたまその環境を一時的に預かって使わせてもらっているのだと中島様は考える。

【質疑応答コーナー】

■リノベ計画を活用した建物に人が住んでいる事例で、京都や伊勢は住民理解があるが、他の地域ではどうしたらいいか?
A:様々な形での理解説得と、話し合いが必要。かつては賑やかだった、商売をやっていた、今は衰退した、住むだけの住宅街になってしまった、静かになって町の様子、使われ方が変わったなどの事情に合わせ、今の時代にどう合わせるか話し合う。どう合意形成するかを順番に解きほぐす、この街をどうしていくかをともに考える。そこに特効薬のようなアイデアはなく、地道に丁寧にやっていく

■地元にも伝建地区があるが地域の人は無関心であり、どうしたら良さに気づいてもらい、発信できるか?
A:伝建地区に選定されているなら、その街を愛して本気で考えている人がいるはずなので、その人を見つける。小さくとも団体があるはずであり、その団体が文化庁のデータリストに載っているはず 。

■伝建の境界の適用内外の地区で揉める可能性があると考えられ、景観計画との両立が大事か?
A:計画学的には大事だが、ケースバイケース。重伝建は規制が厳しいが、補助金が出るため、飴と鞭のセットのようなもの。制度を重ねて使っていき、それぞれで出来ることを広げていったり、様々なルールを上手く使い、景観や環境を守る。川越も重伝建と景観計画の両方を使っている。


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中島様のお話を受けて、「歴史的建造物の保全といってもモノだけを守るのではなく、地域の人が生き続けていくことも考えながら取り組んでいく必要があるのだという点が非常に印象に残りました」「最後には動的な保全という今と未来のための街並み保全について学ぶことができました。

ぜひ本日の事例の街にも訪れたいとも感じました」といった参加者の感想をいただくことができました。
今までのMACHIBIYAセミナーとは打って変わって、より都市計画やまちづくりに近いお話でしたが、実際の事例を交えながら非常にわかりやすくご講演いただきました。参加者の皆さんにもたくさんの学びを持ち帰っていただけたのではないかと思います。

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