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ちょっとニッチな児童文学⑩『笹森くんのスカート』

ちょっとニッチな児童文学もなんとか10作品目を迎えました。

今回紹介する児童文学は神戸遥真さんの『笹森くんのスカート』です。

スカートをはいた笹森くんと同級生たち

夏休み明け、笹森くんがいきなりスカートをはいて登校して来た。(笹森くんは見た目も良いから実はけっこうモテ男子です。)

その様子を5人の登場人物が自分の置かれた立場から好き勝手に解釈していきます。

最初にネタバレをしておくと、笹森くんがスカートをはいた理由は、幼馴染である真緒(まお)の「スカートをはきたくない」という相談を軽く受け止め、真緒を傷つけてしまっこと。

スカートをはいて登校して来た笹森くんをL G B Tの当事者なのではないかと疑い、行きすぎた正義感で庇ってあげようする倉内さん、自然に接してくれる友達のケイ、両親が同性カップルで、あえて女子グループとつるまない根無草な西原さん、自分は「好き」という感情がわからない「アセクシュアル」なのではないかと悩んでいる子(素は美人だから男子からはモテるはずなのだが地味にしている)もいれば、異常に汗かきな男子が学級委員長を好きになったりと人間模様がおもしろい。

笹森くんの母親は

「スカートをはくのに(ジェンダーと真逆の格好をすることに)理由はいらない」と感じたり、笹森くんの母親が「スカートなんて、服装の一形態でしかない」と笹森くんにいったり

笹森くんの行動に対しては、

「公序良俗に反しない限りは止めない。本気でそうしたいなら、したほうが後悔しないだろう。」とスカートをはいて登校すると言い出した笹森くんを送り出します。

いろんなことをぶちまけている感想です

笹森くんがスカートをはいていることについて、各個人が好き勝手に理由を後付けしていく。人は「同調の輪」から外れたことをする人がいると、「なぜそんなことをするのか」と勝手に深掘りしてしまう生き物らしい。同質を求めて少しでも違うと何かと突っつきたがる。

笹森くんは自分がスカートをはくことで、幼馴染の気持ちやなぜスカートをはくのに理由が必要なのか?特別な何かが必要なのか?を考えていくことで、最初は気が付けなかったスカートをはくことの苦労みたいなものを知ることになった。

集団の中でわざわざ違いを指摘してマウントをとってくる輩もいますが、なぜ黙っていられないのかが疑問でなりません。それいちいち口にする必要ある?なことをいうことで、少数者は攻撃の的になる。しかもなぜか少数者は地味で目立たなく、メンタルがちょい弱な人が多い印象(あくまでも個人的な感覚ですが…)。
地味な人が着ているものとか、持っているものはダサいと決めつけて、華やかな人に合わせようと周りが同調していく構図が本当に謎です。

何が着たい、着たくない、似合う、似合わない、好き、嫌いをその人個人が自由に表現できたらいいのにね。

笹森くんは一人の幼馴染を元気にするためにスカートをはいて、バンドを組んで文化祭で演奏しようとすることで、まわりに影響を与えていました。

『笹森くんのスカート』では日常の学校生活の場面と、文化祭での場面、つまり日常と非日常の対比がある。日常では異質と思われていたものでも、文化祭という非日常になれば、まわりの世界と混ざって受け入れられていたりします。

男子がスカートで演奏していたらかっこいいとか、スカートに対するイメージが覆される。


私たちは小さな常識、狭い常識の中で生きている。常識にとらわれすぎないためには広い視野を持って学ぶことを忘れてはいけないなと思った作品でした。


hosiartさまのさわやかなセーラー服の画像が本文にぴったりだと思い使用させていただきました!

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