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『 リアル 』
(約600字)
珈琲と言えば、あの人しか思い浮かばない。
スタバが好きで、一人でもよく行っていた人。
必ず会う日には喫茶店に行って、ホットコーヒーを頼む人だった。
真夏の暑い日も、ホットしか頼まず、
「見てるだけで暑いから、氷が入ったのにしない?」
と提案しても、オーダーはホットコーヒー。
私はスタバに行くと、始めは嫌々、コーヒーを頼んでミルクと砂糖を多めに入れて飲んだ。
「ミルクと砂糖を入れると子どもっぽくて、
負けた気がする」
と言うと、ホットコーヒーを飲む彼がミルクを少し入れて、色を合わせてきた。
「胃が荒れるからね」
と言って飲んでいたけど、優しさだってわかっていた。
本当はブラックが好きな人だった。
毎回、ミルクと砂糖を入れる私は、逆立ちしてもブラックコーヒーが飲めないから、ある時
ソイラテを頼んでみた。
ソイラテは砂糖を入れなくても飲めた。
彼は「ムリしなくてもいいよ」と、砂糖を勧めてくれたけれど、始めの頃は苦みが気になっていたものの、段々、慣れてきて、ソイラテは何も足さなくても美味しいと思えるようになった。
初めて自分から食事に誘って、お付き合いを
した人だった。
結婚は二人の間には無理なイベントだったから、大好きでも匂わすことも出来なかった。
コーヒーは相変わらず、ブラックでは飲めないけれど、香りを嗅ぐと彼を思い出す。
砂糖無しのソイラテが飲めるようになったから、スタバには寄ることがある。
※「シロクマ文芸部」の作品に応募します。
〆切は、10/29 21時までです。
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他人と喧嘩できた経験は
今のところあの人しか思い出せません。
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