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ギョーザじゃなくて🥟

実家で料理担当の私は、夕ご飯のメニューを悩んでいた。午後4時過ぎ・・・炊飯は済んでいるものの、そろそろオカズを作り始めないと夕食の時間に間に合わなくなる。

「ギョーザの具があるよ。ギョーザの皮も買ってある」と、母が助け船を出してくれた。
「うーん、じゃあ、今日はギョーザでいいね」と私の気持ちもすっかりギョーザになっていた。
ところが、父親は「やだ、絶対ギョーザは食べたくない。ギョーザなら、おれは缶詰めを食べる」と言いだした。父は、ワガママを言い出すとき、オレ、と言い出す。何となく面倒臭い空気になりそうで、相槌をうって受け流すことにした。
「分かった!お父さんは、ハンバーグね。私とお母さんは、ギョーザにするから」と言いきって、台所に移動した。

午後6時。テーブルには、キャベツをレンチンしたサラダとジャガイモとタマネギのみそ汁、白和え、ギョーザを並べた。父の前にはケチャップソースをかけたハンバーグを用意した。

週末の夕食は、テレビの料理番組を観ながら、あーだこーだとつまらない話しをしながら食事をしている。最後のカットバナナを食べたところで、私は「今日のご飯、どうだった?」と2人に聞いた。
「ものすごく美味かった。これは、どこのだ?」と父は、お茶を飲みながら聞いてきた。冷凍庫には某有名シェフの高級ハンバーグのおかずが眠っているのを知っていたからだ。
余分なひき肉など用意は無かった。私は、ギョーザの具を使ってハンバーグのように成型をして、焼いたのだった。トマトケチャップソースで、ギョーザのニラ臭さがまぎれてしまったようだ。

父は「ギョーザの味、しなかったぞ。ハンバーグだと思って、みんな食べた。ふーん」と言うと、母が食べていたギョーザを一つつまんでいた。
「ギョーザも悪くないな。でも、たくさんは食べたくない」と続けた。
後から聞いたが、父の兄妹の家に行くと、よくギョーザを出されるのだそうで、飽きていたらしく、それはそれで仕方がない気がした。

同じものばかりは食べたくない、でも、慣れた味も食べたくなる。味覚は、面白いものだ。
笑いに笑った夕ご飯の一幕でした。


※写真は、mitomokさんの一枚を使わせていただきました。

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