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『忍者ラブレターで昇格』#毎週ショートショートnote

             (410字)

美しい横顔には彫りの深い素顔までは見てとれない。
口元を隠す鈍色の布で、男女の区別もつかない。

緋色なら、
くノ一と分かるのに


 「痛くないか」

子の刻の方角から来た男は、黒い光の筋を
見逃さない。

暗闇でも、ぼんやりと月の光が辺りを照らし、
時間が経つにつれ、全貌があらわに
なるのを胸に期待してひざまづいた。

左の頬骨の張りのある布の一部が裂け、
血が滲んでいるのを見た。
男は手に握る白いキレを、彼女の頬に近づけ
拭おうとした。

何をする、汚らわしい

明らかに低い男の声だ。

一い組の者は、声色まで変えられるのか一

お前は、は組の者か。期限は明後日までだぞ。

男は悔し気に、白いキレを手の中に戻した。
「いろはにほへと」の組順に、
忍者クラスは分かれる。

忍者ラブレターを知っているか。
隠し扉の内側に貼られていた。

は組に内通者が?

修行の身で、忍法を会得している?

いや、は組は出来は悪いが、
デキテイル内通者は多いのだ。




◇たらはかにさんの企画に参加させていただきます◇


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お題の忍者ラブレターは、
10/28の深夜まで募集されています。

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