愉快な家族シリーズ オヤジ「和義」編
うちの家族はとても濃いキャラが揃っている。中でも父親「和義」は群を抜いている。一等航海士で10万トンクラスのタンカーに乗って、1年間世界中を航海の旅に出ては1ヶ月休みという生活を繰り返していた。何気なく写っている写真のオヤジの右上に、普通にスフィンクスが写っていたりする。さらにリアル海賊に2回遭ったことがあるらしい。ワンピースか。なので、小さい頃は普段居ないのが当たり前で、たまに帰ってくると家が嵐のようになった。
普段は寡黙でほとんど喋らないが、酒を飲むと途端に饒舌になる。船の上ではそんなに飲めないので、陸に上がると尋常じゃなく飲むのだ。二日酔いどころではなく、常に酔っている。三日酔い、四日酔い、むしろデフォルト酔いだ。そんなオヤジにはとんでもない伝説が沢山ある。
そんな調子なので、いつも酒に酔っては警察に保護されて、母親と真夜中によく迎えに行ってた。僕が小学生だった夏休みのある日、いつものように真夜中に家に帰ってきて起こされた。しかし、いつもと様子が違っていて、なんだか「うんうん」唸っている。
「父ちゃん、どうしたの?」と聞くと、
「おう、智之。さっき、そこの角で10tトラックに轢かれてきた。」
「?!!・・・」
「警察に連れてかれたんじゃが、飛び出したワシが悪いって言って、帰って来たんじゃ。ワシは寝るぞ。」と言って寝てしまった。
次の日、朝起きてオヤジがまだウンウン唸って痛そうにしている。オヤジは病院というものに行かない人なんだけれども、相当痛そうなので、「父ちゃん、10tトラックに轢かれたら、さすがに病院行った方がいいと思うよ。」と至極真っ当なアドバイスをしたら、相当痛いらしく「やっぱり行った方がいいかのう。」と言って、渋々病院に行った。
そして3時間後、肩に大きなコルセットを付けて病院から帰ってきた。
診断結果は、なんと肩の骨が折れていた。
さらにそれから僅か3日後、オヤジはコルセットを付けたまま船に乗って世界に旅立って行った。
こんな話がまだまだ沢山あるんだけれど、最近このオヤジの血を引いた孫が生まれて、早くも少し片鱗が見えているので、ちょっと心配だ。
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