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『日常の違和感』から恐怖を煽る「フェイクドキュメンタリー」の世界

趣味嗜好を晒け出すコーナーです。
今回は私が特にハマっているホラージャンル「フェイクドキュメンタリー(モキュメンタリー)」を紹介します。


「フェイクドキュメンタリー」とは?

「フェイクドキュメンタリー」というのは映像ジャンルの一つで、言葉の通り「嘘のドキュメンタリー」作品です。
「モキュメンタリー」と呼ばれることも多いですね。

虚構の物語をあたかも本当にあったことかのようにドキュメンタリー風に演出し、視聴者に錯覚を与えることでダイレクトな感情を引き出すことができる映像手法です。

例えば映像作品ではないですが、「虚構新聞」なんかも手法としては近いジャンルに当てはまりますね。
こちらも名前の通り「虚構」と書いてあるのに、絶妙に有り得そうな衝撃的な嘘ニュースを発信しているため、よくSNSで記事が話題になっては「これは本当?嘘?」という議論が巻き起こっていて面白いコンテンツだなあと思ってました。

ちなみに上記で紹介した「虚構新聞」にもモキュメンタリーについてのインタビュー記事が載っており、興味深い内容でしたのでリンクを貼っておきます。

コメディからホラーまでこの手法を用いた色々な映像作品がありますが、今回は冒頭の通りホラーに限定して好きな作品を挙げていこうかなと思います。

フェイクドキュメンタリー「Q」

まずは今一番熱いと言っても過言ではないyoutubeチャンネル『フェイクドキュメンタリー「Q」』。
今までテレビ番組や映画でやっていたようなフェイクドキュメンタリーを、なんとyoutubeで発信してしまおうという素晴らしいチャンネルです。
ホラーエンターテイメントYoutubeチャンネル「ゾゾゾ」のディレクターである皆口大地さん、「ほんとにあった! 呪いのビデオ」の演出である寺内康太郎さんがタッグを組んで展開しており、当然一つ一つのクオリティも素晴らしく、「やっぱホラーといえばこの質感だよね」って舌鼓をうちたくなる作品群で、今後の更新も楽しみです。

個人的に特に好きな作品は以下の2つです。
1つはこのチャンネルの最初に投稿された作品で、もう1つはつい先日投稿されたばかりの最新作。
どちらも構成の妙が光る名作です。

放送禁止

次に紹介するのは2003年頃よりフジテレビ系列で不定期放送されているテレビ番組「放送禁止」。

「ある事情で放送禁止となったVTRを再編集し放送する」という設定のフェイクドキュメンタリーホラー作品です。
こちらは一見すると本当に普通のドキュメンタリー作品として終始進行するのですが、ところどころで登場人物の言動が不自然だったり、背景に不審な物があったりするなどの「違和感」が仕込まれており、最後に恐るべき「真実」が提示され全ての伏線が回収されるというサスペンスドラマのような構成になっています。
オカルト的なホラーというよりは人間の怖さが出ている作品になっていますが、のほほんとしたインタビューの背景にジッとこちらを見ている無表情の村人がいたり、何気なく子供が描いている絵がとんでもなく不穏なものだったりと、演出の不気味さが際立っておりゾッとすること間違いなし。おススメのホラー作品です。
おススメは第2話「ある呪われた大家族」と第3話「ストーカー地獄編」です。

白石晃士監督作品

続いては今をときめく映画監督、白石晃士監督の作品です。

古くは「ほんとにあった! 呪いのビデオ」の構成・演出から、最近では「貞子vs伽椰子」や「地獄少女」など話題作の監督としてJホラーを牽引する代表的な監督の一人だと私は思っています。

そんな白石監督はフェイクドキュメンタリーホラーの代表的存在でもあり、数々の名作フェイクドキュメンタリーホラー作品を手掛けていて、フェイクドキュメンタリーの教本も出版していたりしますね。

白石監督の作品の特徴としては、自身がカメラマンとしてメイン出演しており、作品の登場人物と非日常的な体験をしていくという視聴者目線での体験型ホラーの形式が多くとられているところがあります。

また、登場人物のキャラの癖がことごとく強く、ホラーとして見てもしっかり怖くて面白いのですが、キャラクター同士の掛け合いや群像劇としても非常に見ごたえがあって面白かったり、作品同士の世界観が繋がっていたりもしていて、別作品の主人公が助けに現れたりなどの王道な熱い展開があったりと、もはやホラーの域を超えた面白さを生み出しているので、是非色んな作品を見てみてください。
個人的に特に最初に見てほしいおススメ作品は、「ノロイ」「オカルト」そして「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」シリーズですね。
どれも白石監督の代表的モキュメンタリー作品となります。是非見てください!

SIX HACK

続いてはテレ東で今年5月にやっていたテレビ番組「SIX HACK」。
全3(+1)話で、8/15現在は全てYoutubeで見ることができます。

こちらの番組は「現代社会で偉くなるためのハック」を提供するライフハック情報番組で、様々な状況や媒体で「人より偉くなる」方法を紹介するといった内容になっております。

・・・という体のフェイクドキュメンタリー作品ですね。
例の如く段々と不可解な状態になっていく様が楽しい作品ですが、こちらの番組は更にその「フェイク」であるという部分をも物語に組み込んでしまう多重構造の作品になっているので、是非最後の「検証」まで見ていただければと思います。
ちなみにこちらの番組は作家・Webライターのダ・ヴィンチ・恐山さんが構成としてかかわっており、第2話の「SNSで偉くなるためのハック」では彼が得意とする「最悪のインターネット講座」がガッツリ展開されていてホラー関係なく面白いので、おススメです。

これ地上波で流したってマジ?

雨穴

最後に紹介するのは日本のWebライター、ホラー作家、Youtuberである雨穴さんです。

雨穴さんはもともと「オモコロ」というポータルサイトのWebライターとして活動を始めましたが、Youtubeでも工作やオカルト系の映像作品を投稿しており、その独特な作風と奇妙だけどどこか愛らしい風貌で人気を博しています。

特に雨穴さんを語るのに欠かせないのは、こちらの作品「変な家」ですね。

自身の元に届いた1枚の間取り図から始まる本格ミステリー作品で、その非常に巧みな構成と面白さで人気を博し、なんと書籍化&映画化という大ヒット作品になりました。

ここからこの作風をメインとして本格的なホラー作家となり、最近ではテレビドラマ「何かおかしい」でドラマ作家デビューもしています。

この方も非常に独創的で面白い「ホラー像」を持っていて、物語の構成も非常に凝っており今一番新作が楽しみなホラー作家ですね。
以下は彼の作品の中でも特に好きな作品です。

名曲。

これからのホラー

近年はCG技術の進歩も相まって、より画的なインパクトのある作品が目立っているなと感じることはありますが、人間の感情を動かす本質ってやっぱりそこじゃないよなあってこういった作品を見ていると感じます。

ホラーというジャンルでも一緒で、より画面的な演出を怖くインパクトのあるものにしよう!じゃなくて、文脈のある普遍的な怖さを追求して洗練させていってほしいなあとホラー好きな自分としては思いますね。

自分も映像制作業をしている身として、技術的な部分ばかり磨くのではなくもっと本質的に人間の感情や行動に訴えかけることができる作品を作っていきたいなと思うところです。

長くなってしまいましたが以上!

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