懐かしくないパスタ

近所の商店街に行くと、すごい人混みだった。
観光地に近いこともあり、普段から人どおりは少なくないが、
昨日は、商店街の催し物があったようで、
歩くスペースを見つけるのも大変なにぎわいだった。

とりあえず、夕食用の買い物を済ませたが
人混みを避けて歩くのに疲れたのと、
これから帰って昼食をつくって、
さらに夕食の準備をするのかと考えると面倒くさくなり、
開いていた喫茶店に入って、昼食をとることにした。

外の喧騒とは裏腹に、店の中は人も少なく、静かだった。
その店は、シュークリームが有名で、雑誌などでもなんどか
取り上げられている。
私もときどきお土産に買って帰るのだが、
なかで食事したことは、これまでなかった。

メニューを見ると、数種類のホットドック、日替わりランチ、
パスタなどがあった。ミートソースのパスタを頼んだ。

しばらくして運ばれてきたパスタは、想像していたとおりのものだった。
少しゆですぎた麺、
市販のドミグラスソースの缶詰を隠し味にしただろうミートソース、
小鉢に入ったサラダ、
ヨーグルトの寒天みたいなデザート。
ある意味、完璧な、昔ながらの喫茶店のパスタセットだ。


訳もなく、懐かしい感じが込み上げてきた。

子どもの頃、午前中だけ学校に行き戻った土曜日の
昼食に出たミートソースのスパゲティ。
味付けは異なるし、見た目も違う
(わが家のスパゲティは、トマトケチャップでつくったソースが
からんで、真っ赤な色をしていた)。

似ても似つかないものだけど、どこかで何かがつながっているのだろう。
不思議と懐かしく思い出された。

気がつけば、がらがらだった客席が、静かに埋まっていた。

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