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「カナダってどんな国?」#1 (食)

  タイトル通りの質問が太平洋を超えてよく飛んでくる。しかし、非常に掴みどころのない国であり、一言で言い表すことがかなり難しい。とはいえ半年滞在して僕なりの「カナダ像」が頭の中にできあがりつつあるのでこの場で昇華する。カナダ長年在住者からすれば「あっさいわぁこいつ」という内容になるかもしれないがそこは目を瞑ってくれるとありがたい。浅瀬のほうが素人は泳ぎやすいのだ。

  面積だの人口だの主要産業だのはGoogleか中学時代の社会の資料集にでも聞いてほしい。ここではだだっ広い割に人は少ない国、とでもしておく。さて、渋谷のど真ん中で「カナダについてどんな印象を持っていますか」というアンケートを取れば、100人中70人はメープルシロップもしくはメープルと答えるだろう。残りのうち24人がカナダグース、5人がデカい国、1人が変にボケるといったところか。この類のアンケートでボケようとする人間は確実に滑る。

0. メープルシロップ

  カナダに来る前の僕も正直メープルシロップしか知らなかった。どうやらメープルシロップが国にとって大きな意味をなしているのは事実らしい。昨年12月には「戦略的メープルシロップ備蓄放出」というこの世で最も面白いであろう15文字がカナダ国土を駆け回った。カナダ、特にケベックにとってメープルシロップは甘い石油のようなもので、経済を支える主要輸出品なのだという。

ただ、日常で食べる機会があるかと言われると怪しい。ウォルマートに売ってるメープルシロップはいつも在庫が豊富で品不足を見たことがないし、レストランでも"Maple"の文字を目にしたことがない。唯一マックで販売されたメープルクォーターベーコンなんちゃらみたいなハンバーガーも9月のみの限定販売で終わってしまった。メープルシロップなんていうものはカナダ国民が自国に何か特徴を持たせるために生み出した幻想に過ぎず、本当は誰も口にしていないのではないか。最近はそう疑っている。世界最大の陰謀論はフリーメイソンではない、メープルシロップである。

1. 食べ物

  カナダ料理と聞いて何を思うか。なにか一つでも頭に思い浮かんだ方、異常です。ホストマザーは「カナダ料理なんてものはない」とまで言い放っていた。歴史の浅い国であり伝統的な料理は未だ生まれてないとのこと。そんな中唯一カナダ特有として比較的知られている品が、プーティンという代物。フライドポテトにカード(curd)と呼ばれるチーズのなりそこないのようなブヨブヨした物体やベーコンを載せ、グレイビーソースをかければ完成。カロリーにカロリーを足してカロリーで掛け、さらにそれをカロリー乗したような食品である。「カナダ版二郎」とでも言っておこう。あくまで同じなのはカロリーだけだが。

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大学で食べられるプーティン

また、カナダの国獣ビーバーにならって名付けられたビーバーテイルというお菓子もある。潰したドーナツにチョコソースなどを塗り、バナナの輪切りなどを乗せる。これまたカロリー属カロリー科の種族。

これら2つの何が問題かと言えば、元になっている料理に負けてしまっている点である。プーティンよりフライドポテトのほうが美味しいし、ビーバーテイルよりドーナツのほうが食べやすい。よく和食は引き算の料理だと言われる。それに対してカナダ料理は明らかに足し算、いや、蛇足の料理だと言える。そろそろ怒られそう。

ただひとつ、オリジナルを超えてくるカナダ発祥の料理を最近見つけた。正確に言うと飲み物なのだが、カナダの名誉挽回・汚名返上のために紹介する。アールグレイをもとに、スチームミルクとバニラシロップを入れた飲み物。これが非常に美味しい。アールグレイの風味を残しながらもミルクでよりまろやかになり、バニラの甘みを少し感じる絶妙な味わい。バンクーバー発祥とのこと。やるじゃんカナダ。やればできるじゃん。

あ、ちなみに名前は"ロンドン"フォッグ。なぜだ。それでいいのかカナダ人。茶色がかったスチームミルクがロンドンの霧に似てるかららしいけど、バンクーバーフォッグにしとけよ。霧の色なんてどこも同じでしょうに。もしくは国獣ビーバーをこっちに投入すべきだった。ビーバーの毛皮のような色と言う由来でビーバーファーなんてのはどうだろう。まあ美味しくはなさそうだけど。なにかと勿体ない、そんな国です。

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"London Fog" ぜひ自宅でどうぞ

思いの外長くなってしまったので一旦ここで前半戦終了。後半に書くことがあるかはとても不安である。しれっとタイトルの#1が消えてたらこいつは諦めたんだなと思ってほしい。

p.s. ちなみに国獣とは読んで字の如く国を代表する動物のこと。日本の国獣はトキ、オーストラリアはカンガルー、中国は龍。まあ納得。ただシンガポールのマーライオンってのはセコくねえかな。

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