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ロジェ・カイヨワ『人間と聖なるもの』


Roger Caillois, L'homme et le sacré

ロジェ・カイヨワ『人間と聖なるもの』の初版は、1939年、ガリマール社から出版。カイヨワは1913年生まれなので、若干26歳で、みずからの社会学、哲学の精神的支柱をあざやかな手つきで理論化してみせた事実に、ただただ驚愕させられる。

Sacré(聖性)とProfane(冒涜)の対立軸から、pureté とmelange, ritesとinterdit, pur とimpur,,,と二項を重ねていく章立ての末に、本書の最後に「付録」で論じられた「戦争と聖性」という、結論のない問いかけになだれこむ。

若き社会学者カイヨワが真に思考をめぐらそうとしていたのは、古代から文化たらんとしてきた「聖性」が、人間とその環境をめぐる歴史の中で、「戦争」というかたちで不可避でありつづけたことと理論化し、自分の理性の側面を納得させつつ、第二次世界大戦の勃発と絶望的な現実が顕現した1930年代末の時代状況を凝視しながら、未来の光を探し当てようとしようとしたのかな、というか全然違う話だったらどうしよう、と、勝手な妄想的解釈でおもんぱかりつつ、眼前の現実を語るという作業に対する若きカイヨワ先生の緻密な理論化の手際にぐったりとさせられた、記憶が、ある。

ちなみに、手元にあるのは、「フォリオ」(Folio)と呼ばれる、ガリマール社の文庫シリーズ。購入した書店のレシートが挟まれていたので日付をみると、わたし自身は臨月まっただなかにある時期であった。

そんな事実はすっかり忘れていた。なんで買ったんだっけ。

子供と聖性、出産と聖性、生命の神秘、みたいな、わりあい安直な連想で買ったのかな〜、といまさら思うけど、子供こそpurete/impurete/profane/melange,,,だなと、いう予感だけは正しかった気がする。いまさら勝手に納得してみたりした。



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