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U-NEXTパイレーツ 最後の2日間【Mリーグ2020】

2021/3/12(金)
「Mリーグ2020」レギュラーシーズン最終日。パイレーツの選手・スタッフ・クルーのみなさんはどのような想いで試合を見つめていただろうか。

昨年「Mリーグ2019」のパイレーツレギュラーシーズン最終日では、敗退ラインから船長・小林剛選手が気迫のトップを取り、2戦目でこれまで一度もなかった連闘で苦しい状況を潜り抜けて、その後のドリブンズの追撃を振り切った。その後、セミファイナル、ファイナルでのチームの大躍進はご存知のとおりである。

U-NEXTパイレーツは「Mリーグ2019」のチャンピオンチームとなった。レギュラーシーズン最終日の死闘から、史上最大の下克上を成し遂げたのである。

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最終日はなんしゅう家でみんなと一緒に観てた。表彰式の様子は帰りの電車で観たんだっけ。

新型コロナウイルスの影響はあったが、一回目の緊急事態宣言が解除となり、街に繰り出す人も増えていた頃だった。

来期はこの4人で連覇を果たしてほしい。そう思っていた。

<画像引用について>
出典:AbemaTV様(https://abema.tv/) Mリーグ2020 各試合放送

2019-20 オフシーズン

瑞原さんが初めてnoteを執筆する。

「家庭環境の変化によって自由に動ける時間が大幅に減る」ということ。この文章を見たときの感想は「よかった。2年目も瑞原さんの麻雀をMリーグで観ることができる」だった。

細かい家庭環境についてはわからないが、瑞原さんと自分は1人目の子どもが産まれたタイミングがほぼ同じ時期だ。どの時期にどのくらい自分を含めた家族に負担がかかって、どのくらい周囲のサポートが必要かはある程度理解できる。

そして2019年1月に誕生した瑞原さんの2人目は男の子だ。ウチは1人目が男の子だからよくわからないが、「(女の子に比べて)男の子は大変」という話はよく聞く。特に2歳に差し掛かる頃になると1人では抑えられないくらいになることもある。上の子だって放っておけるわけではない。

1年間、全力で走り切った瑞原さん自身の負担が大きかったのはもちろん、家族や周囲が懸命にサポートした「Mリーグ2019」だったのだと思う。そのため「Mリーグ2020」ではかなり出場試合数が減ってしまうのでも思っていた。

予想に反し、瑞原さんはほぼ週1ペースで試合に出場し、結果的には2019年のレギュラーシーズン16試合を上回る19試合に出場した。シーズン終盤でも起用のペースが落ちなかったのは、瑞原さん自身のパワーアップに他ならない。

熾烈なセミファイナル争いを演じるチーム状況においても、木下監督は瑞原さんを起用した。瑞原さんは期待に応え、2/26(金)の1試合目でシーズン成績上位の黒沢選手、多井選手、佐々木寿人選手を相手に、値千金のシーズン4勝目をあげる。

2戦目は船長・小林剛選手(以下、ごーさん)がトップをとって連勝。一気にセミファイナル進出がみえてきたが、その後の4試合は逆連対し、7位に後退。

各チーム残り4試合。セミファイナル進出圏内の6位を目指すラストバトルがはじまった。

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2021/3/8

パイレーツにとってのレギュラーシーズン最後の2日間が始まる。

第1試合の出場は・・・

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瑞原さんだ。

ほとんどのパイレーツファンは納得の采配だったのではないだろうか。「Mリーグ2020」での瑞原さんの麻雀は、昨シーズンより進化しているようにも見え、堂々とした立ち振る舞いはカッコいいとも思えるものだった。

それいけ麻雀ヒーロー。

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6位のフェニックスを追いつつ、ポイントの近い8位雷電を抑える必要がある一戦。雷電とは直接対決だ。

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起家の瑞原さん、個人MVPを狙う好調・内川さんから先制リーチが入るもすぐに追いつき36mでリーチ!メンピンドラ1。モノにすれば大きい!

「いける!!」

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しかし軍配は内川選手に上がる。良形でめくり合って負けるのはしかたないが、ちょっと悲しい。

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次局、瑞原さんはピンフのみでテンパイし、ダマにした。

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今シーズン、佐々木寿人選手に次ぐ第2位のリーチ率を誇った瑞原さん。その数字は実に27%を超えていた。昨シーズンが21%弱だったことを考えると、明確に打ち方を変えてきたことが伺える。

「Mリーグ2019」の結果をふまえて、しっかりリーチで打点を上げて攻撃することを意識し、リーチ手順とリーチに至るまでの押し引きの精度を高めてきたように思う。

とはいえ、何でもリーチをするわけではない。

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ドラが1枚あればリーチが優勢な場面だが、ドラなしピンフのみならばどちらもありという感じ。親の藤崎さんの捨牌が不気味で、赤5pまで出てきている。チートイドラドラで9600点といわれても不思議ではない。後の事故が少ないのはこちらだ。冷静に場が見えているように思えた。

ピンフのみ1000点で藤崎選手の親番をかわす。

「ナイスー!」

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瑞原さんのリーチまでの手組は本当にキレイだ。勝負手であればブクブクに、そうでなければ安全度の高い牌を残す。このあたりの精度が非常に高いと思う。

自分からドラが見えているか、見えていないかは大きな要素だ。

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愚形ドラ1のリーチ判断はとても難しい。不特定多数相手の収支戦かつ平場であれば、おそらく期待値はプラスになると思うが、ルール、相手のレベル、打ち筋によっても最適解は異なるように思う。

南2局。相手がどう動くかというところもポイントである。親の藤崎さんはほぼオリない。内川さんはトップ目なので引き気味に打ちそう。瀬戸熊さんもラス親が残っているので、無理はしなさそう。ここは藤崎さんとの直接対決になる可能性が高い。先制リーチはただでさえ強いが、さらに1対1になりそうなこの局面であれば十分に勝算がある。自身は3着目、先制ならば勝負の一手だ。

藤崎さんは字牌、特に役牌を大切にする打ち手だ。その藤崎さんが第1打に役牌の發から切り出し、まっすぐリーチ手順を踏んでいる。おそらくもう時間がない。

ダマにしたり、テンパイ外しをしたとしてもうれしい手替わりが少なすぎる。

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親の藤崎さんから追いかけリーチが入る。これは想定の範囲内だが、怖い・・・。カン4pとカン6pの選択があったが、カン4p待ちを選択。

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藤崎さんのリーチの一発目にもってきたのは6p。すり抜けた!勝負は本当に紙一重だ。

この局は2人テンパイで流局。

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続く2本場。「役役ホンイツ?」「役役トイトイ?」夢をみられる配牌がきた。これは決めたい。

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3巡目に出た白を軽快にポン。

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続く中もポン。供託2本+2本場。ここで2000点をアガる価値が高いのと、ラス目の藤崎さんの親番を落とすというのが有力なプラン。58s受けを残し、スピードにも対応できるようにする。ホンイツへの渡りのために7mは残しておく。

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中をツモり、少し悩んで加カン。するとドラが南に!そしてリンシャンから8mを持ってきて自然にホンイツに渡れる形になった。

「行く?行っちゃう??」

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考える瑞原さん。ここは勝負所だ。

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意を決したように6sを切る。役役ホンイツドラドラは12000だ。勝負を決めに行く。

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テンパイ。南単騎。後ドラとはいえ南は生牌で簡単に出てくる状況ではない。むしろ誰かにトイツで入っていてもおかしくない。

1枚だけでいい、ツモ山にいてほしい・・・。

「ツモってくれー!!!」

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5m。アナタじゃない。

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当然のように切る。

「ロン」

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内川選手のダマテン5200に放銃。

勝負は時として残酷だ。

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一瞬目をつむった瑞原さん。

ファンもおそらく同じ気持ちであっただろう。自分もその一人だ。

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険しい顔から一転、点棒を出すときにもたつき少し笑みがこぼれたようにみえる。まだ闘いは終わっていない。

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藤崎さんが内川さんから16000点のアガリ。

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さすがにキツい。藤崎さんが浮上し、2着すら遠のいていく。

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忍ばない忍者。

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最後まで堂々と闘い抜いた瑞原さんだったが、無念のラス。これが瑞原さんのシーズン最終戦となった。

瑞原さん自身としては細かい反省点は多々あるかもしれない。しかし、Mリーグで勝つべく必死に研究し、打ってきた1シーズンだったように思う。

今シーズンの打ち方で勝てていた世界線もあると思うが、結果はマイナス。一番悔しいのは瑞原さんだと思う。これからも応援し続けたい。

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2試合目は1月半ばから毎節出場を続けているごーさんが登場。

チームのポイント状況がかなり悪くなった時に木下監督がとった采配「1日1剛」。これがハマり、チームポイントはセミファイナル進出圏を争える状況まで回復した。

じゃあ全部ごーさんを出場させればいいじゃないかという声もあるかもしれないが、それは違うと思う。ごーさんの役割はいうなれば「ディフェンダー」である。決して無理をせず、少しずつプラスを積み上げていく。

ポイントを稼ぐ「アタッカー」の役割は石橋さんや瑞原さんに期待したいところ。そして朝倉さんは「エース」だ。

ごーさんだけが好調でも、チームの上昇は苦しい。朝倉さん、石橋さん、瑞原さんのうち最低1人、出来れば2人復活してもらう必要があった。
ごーさんが無理をしなければいけない状況はチームとして後がない、最終局面である。

木下監督の采配は個人的に納得感のあるものだった。木下さんが監督で本当によかったと思う。

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あまり点棒に動きがない東4局、ごーさんに確定三色ドラ1のペン3s待ちテンパイが入る。解説の土田さんは「ヤミでしょうね」と言っていたが、ごーさんはリーチ。

役あり愚形5200はリーチによる1ハンアップの打点上昇が少ないため、リーチとダマの期待値がほとんど変わらない。状況に応じて選択するのが一般的だ。

3sは場況的によい待ちではなく、ダマにする人も多そうだが、ごーさんはここでトップを狙いにいった。必要なのは2着じゃない。トップだ。

チームを背負ったリーチ。

「3sいて!!!3sの神様お願い!!!」

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残り2巡で3sをツモり、裏1で3000、6000。

「しゃああああああ!」

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表情一つ変えないごーさん。シーズン中からずっと変わらない。

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一気にトップ目に立つ。

「これはいけるのでは!?!?」

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南3局、逃げ切りを図るごーさんは2フーロし、發ドラ3のテンパイ。

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黒沢さんの親リーが入ったが、現物の5mの筋8mもプッシュ。

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これがつかまってしまう・・・。リーチ中で3900は4200。痛い・・・。

「まだトップ目!行ける!」

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ごーさんの表情は変わらない。

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「!?!?!?!?!?」

連荘した黒沢さんの鬼のようなダブルリーチ。

これはなんだ?マンガ・咲の世界?そういや黒沢さんも咲さんだ…

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藤崎さんから2mを打ち取り、12000のアガリ。黒沢さんがトップに躍り出た。

黒沢さんの力強さよ・・・。

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藤崎選手の1sをとらえた黒沢選手がお見事なトップ。小林選手は惜しくも3着となった。

トップが見えそうな展開だっただけにキツい・・・。

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シーズン最終日前日3/11(木)の闘いでも、オーラス劇的なトップを獲得した黒沢選手の活躍により、雷電はパイレーツから少し離れた6位に。

シーズン最終日は雷電を抜き、フェニックスより上の順位で終わることがセミファイナル進出の条件となった。

2021/3/12 - 運命の最終日

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1戦目は俺たちのキング石橋さん。

昨年の「Mリーグ2019」ファイナル最終日、パイレーツに奇跡をもたらせた男。こういう条件戦では滅法強い印象がある。ファンとしても納得の采配だった。

ここぞで頼れるキング。

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俺がキングだ。

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起家の石橋さん、役なしカン5mでドラを切って淀みなくリーチ。

うれしい手替わりがほとんどないし、それならば役なしで進めている間に他家に自由に手を進められることのほうが損だ。先制親リーは強いし、ドラが9sで他家がタンヤオで使えない牌。万が一相手に攻め入られても打点が低いケースが多い。

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テンパイした魚谷選手から赤5mを打ち取り、裏1で7700のアガリ。

「いいよー!!」

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待ったをかけたのは白鳥さんだ。シーズントータルトップをひた走るABEMAS。セミファイナル進出がかかっているパイレーツやフェニックス、そして個人MVPを狙う内川さんの希望を打ち砕いていく。

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ああ、無常。

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しかしキングは諦めない。諦めるわけにはいかない。何とかして2試合目にバトンをつなぐのだ。

1枚切れのカン6mでリーチ!赤を切って相手を引っかけている場合ではない。赤を使い切ってツモるんだ!

この試合3着で終わると、セミファイナル進出の条件がかなり苦しくなる。出来ればトップ、それが難しければ30000点台の2着が現実的なラインだ。

白鳥さんが抜けてしまったこの状況であれば、少しでも大きい2着をとりたい。

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最後のツモで6mをツモりあげる。

「しゃあああああああああ!!!」

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渾身の6000オール。これで一時はだいぶ差があった白鳥さんとの点差を一気に詰める。

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オーラス。石橋さんは白鳥さんと15800点差の2着。ハネマンツモで逆転、マンガン直撃でも逆転するが、そう簡単ではない。

白鳥さんが一足速く58sでテンパイ。678mをチーしており、8sならばタンヤオ三色ドラドラで12000である。

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ハネマンツモでトップ。この手はハネマンがみえる!!

しかし前に出ると8sが・・・。

「キング・・・・」

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悩む石橋さん。こんな石橋さんを見たことがない。

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トップ目の白鳥さんがそんな軽い仕掛けをする場面ではない。

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ぐっとこらえて、8sを止めた。

熱い勝負を挑みつつも冷静に場を見渡し、チームのために止めた8sだった。2試合目おそらくごーさんが出場することは決まっていたのだろう。そのごーさんを信頼して、素点を守ることを選んだ。

石橋さん最高にカッコよかった!

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2戦目35700点のトップならばセミファイナル進出という現実的な条件が残った。石橋さんの麻雀は本当に面白い。とにかく多彩。技のデパート。来年もキングの麻雀が観たい!

自分のパイレーツの観戦記はここでおしまいです。最終戦についてはクルー仲間のうーちゃんが素敵なnoteをアップしてくれているのでそちらで。

朝倉さんについて

最後の2日間に焦点をあてたため、朝倉さんの話題がなくなってしまいましたが、本当に苦しんだシーズンだったのではないかと思います。序盤は少しでもMリーグを麻雀以外の面でも盛り上げようと髪型面で挑戦。タイミングと結果がかみ合わず、思うように進みませんでしたね。

朝倉さんの代名詞は「うまぶり」。この言葉はご本人も使っていますが、あえて目先のちょっと損なことをやって、のちの得を取りに行こうということだと思います。天鳳で最強を極めた男だからこその挑戦。

いつの日か、最強に進化した朝倉さんがみられることを願っています。

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おわりに

U-NEXTパイレーツの「Mリーグ2020」シーズンの闘いは終わりました。選手のみなさま、スタッフのみなさま、パイレーツを応援したすべてのみなさまお疲れさまでした!敗れはしましたが、たくさんの感動と勇気をいただきました。

来シーズンどうなるかはまだわからない状況だとは思いますが、2年ぶり2度目の優勝を願っています。

これからもパイレーツを応援します!

おしまい













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