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【Mリーグ】卓上のヒットマンの苦悩【191028_2回戦観戦記】

10/28(月)Mリーグ2回戦はこの組み合わせ。
Piratesの小林は今季トータルでプラスだが、他3者はマイナスで苦しいシーズンスタートとなっている。各者流れを変えることができるか注目の一戦である。

注目は渋谷ABEMASの若きホープ松本吉弘(日本プロ麻雀協会)。
30代以上が結果を残すことが多い麻雀界で、20代ながらTwinCup優勝、發王戦でタイトルを奪取。昨年Mリーガーに大抜擢され、今年春には著書「初代Mリーガー松本のベストバランス麻雀(マイナビ麻雀BOOKS)」を出版。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いの若手雀士である。

昨年のMリーグスコアはプラス22.1ポイントとまずまずの成績を残したが、今年はシーズンスタートから絶不調。4戦3ラスと未だ波に乗れていない。
印象的だったのは前回出場時。松本は箱下13,800点というダンラスを引き、対局終了後思わず目頭をおさえた。

相当リベンジに燃えていることだろう。松本の闘牌に期待したい。

◆東1局

松本が25pのピンフテンパイで即リー。良形テンパイならだいたい即リーが正解というのが現代麻雀。ピンフのみのリーチであってもダマより局収支は1,000点以上高いという研究結果が出ている。
ついイッツー手替わりをみたくなるが、1mを先に引く確率と25pを引く確率どちらが高いかという点を考えると、1巡ダマにすることで一発・裏を逃すことのデメリットのほうが大きい。今回ドラの東がもう無く、他者の平均打点が下がることから、なおさら即リーにいきやすかったのではないか。

この1つ前の記事で沢崎が同様にピンフ(+赤1)でテンパイし、即リーを打たなかったことについて触れたが、あれは三色手替わりが2種あったため、即リーを打たない戦い方もあるという話で、今回の場合は若干状況違うことをご理解いただきたい。

赤赤の内川が追いつきカン5mで追いかけリーチ。現状役なしであり、リーチをかけて5,200なら待ちが悪くても当然のリーチである。
両者リーチが実らず流局。

◆東2局1本場

4巡目小林がイッツードラ1のカン3mテンパイ。
愚形5,200はリーチをかけても8,000にしかならず、さらに裏1でも得点変わらずという非常に効率の悪い微妙な手。巡目や場況次第ではあるが、愚形の場合、リーチをするとロンアガリ率に極端に影響が出るため、ここはダマが賢明だろう。
期待値的にもリーチとダマでほとんど変わらない。

松本は36sから3sを外した。本来はもう少し持っておきたい牌だが、中盤(7巡目目安)に差し掛かるときに無筋の中張牌が1枚浮いているリスクはかなり大きい。この瞬間に36sのリーチを打たれるとどうしようもないので、ここで筋牌を1枚切ったのはベストバランス。
強者は後手を踏みそうなときに押し返すためにスリムにするか、守るために安全牌を抱えるか、その判断が非常にうまい。

◆東3局

内川が8m9mと手出ししたあと、6m切りで258待ちのリーチ。

リーチを受けた藤崎。ダブ東トイツで赤1というチャンス手だが、7mが切り切れず、7sで迂回。通常の読みをすると89mペンチャン落としからの6m宣言牌でくっつきテンパイが否定。6mは関連牌濃厚で7mは単なる1筋ではなく濃度の高い危険牌。

藤崎は読みを重視する打ち手で、勝負所ではない局面で危ない牌は押さない。麻雀忍者は決して自分の手牌に溺れないのだ。

同巡小林も6mをもってきて、7m切りで58mの選択もできるがツモ切り。
結果は内川から6pが出て小林のアガリ。

◆東4局

9巡目藤崎テンパイ。4p9mのシャンポンかペン7mの選択。9mは場に1枚、7mは場に0枚。

ペン7mでリーチ!出来れば端っこで待ちたいところだが、9mが1枚切れていることと、8m切りリーチの場合、9mが読み筋に入り4pも簡単に出る牌ではないので、ここはペン7mが優勢。実際山にごっそりいた。

愚形同士の比較の場合は枚数差と場況込みの待ちの良し悪しがかなり大きなウエイトを占める。

◆南2局1本場

南場に入っても小場で進み南2局。
藤崎が1巡目の内川が捨てた南をポンし、ダブ南。藤崎は腰の重い打ち手でそう簡単には仕掛けないタイプだが、ここは勝負所とみていきなり仕掛けを入れた。
すると内川が同巡に69pのテンパイが入りリーチ!(ダブリーではない)
親番の松本も手牌はよかったが、内川と藤崎の気迫に押され慎重に打つことに。

藤崎はリーチの一発目に5sをつかむが、ここは冷静に北切り。

5sが入ったことで、36pテンパイ。打8pで勝負モードへ!

ドラの9sもノータイムでビシっ!
藤崎はこの局を勝負局として設定したのだ。藤崎がメンゼン守備型でありながら数々のタイトルをとることができるのは、勝負所の見極めが非常にうまいからだと思う。
期待値的には2,000点両面テンパイはリーチに対してもかなり押せるので現代麻雀的にも間違ってはいない。しかし、9sつかんで日和ってしまう人も多いのではないだろうか。Mリーグは個人戦ではなくチームを背負っているから難しい。

親番の松本はすでにカン3sで7,700のテンパイが入っていたが、内川の当たり牌である6pをつかんでしまう。

ここまでか…。そう思ったが4s切りで回る。ベストバランスである。なかなか胆力のいる選択。

藤崎が9pで放銃。
残り筋は36p69p58sの3筋。愚形待ちも多分にある状況とはいえ覚悟の放銃だったのではないか。藤崎的には打ったとしてもまだ親番が残っているということと、ここを押し切れればかなり精神的に優位に立てるということで押したのだと思う。

普段鳴かない藤崎が1巡目にダブ南から仕掛けたからこそアガリきるという意志を感じた。途中で止めてしまうくらいなら仕掛けないほうがよいというのが藤崎流ではないだろうか。

結果は2,000は2,300で藤崎の失点は最小限で済む。痛いのは松本である。

◆南3局

松本の先制リーチに対して、藤崎8巡目テンパイ。一瞬リーチモーション入ったが思いとどまり打6pダマ。追いかけるには心もとないカン5m。ここでの7,700収入もかなり大きいので、ダマでよいのではないか。
この局は松本が2,000、4,000のツモでトップ目に。

◆南4局

満貫でトップの小林が36p待ちでテンパイ。

当然のリーチ!小林はこのリーチが微妙だったとのちに語ったが、トップが大きいルールなので、リーチでもそれほど間違いではないのではないか。
親の内川の仕掛けが發から鳴いてチャンタ模様で目立っていたので、6pが他者からこぼれやすいというダマにする理由はあった。その考えだとしたら確かにとなる。

内川は6巡目に發チャンタでペン3pテンパイしていた。途中で持ってきた4mを切りきれず發のみに手替わり。

2人テンパイで流局。オーラス続行。

僅差すぎて目が離せない展開に。

是が非でもトップが欲しい松本。供託があるのでここはアガリトップ。
アガリトップの時に重要なのは「どこで役をつけるか」「どれが一番速いか」である。
この手であれば①タンヤオ、②イッツーだろうか。
しかしこの僅差、ラスがかなり近い状況で安易な仕掛けは身を滅ぼす。非常に難しい状況である。

松本はイッツーに狙いを絞って、4pからポン。
アガリトップの手順としては正しいと思うが、この4pポンはどうだったか。
イッツーのネックがドラ5sと7sの2つ残っている状況で、まだ変化がありそうな4pをポン。若干ではあるが焦りを感じた。

絶好のドラ5sを引いてカン7sは山に3枚。リスクをとって鳴いたご褒美かと思ったが…。

ラス目の小林がカン2sでリーチ!このカン2s自体自信は全然なかったと思うが、巡目的に猶予がなく、出アガリ6,400で逆転トップの手が入ったのでリーチ。

リーチの一発目、8sをつかんだ松本。

一発で振り込んだらほぼラス落ちである。苦悩する松本。

8s行った!すばらしい押しである。しかしこうなるとやめどきが難しい…。

2巡後に引いた2sが吸い込まれるように小林に刺さる。

松本、痛恨のラス。

小林はラス目から一気に逆転トップとなった。

目まぐるしく入れ替わる展開で見ている側はおもしろかったが、結果は残酷である。

小林はしてやったりという表情であるが、このゲームは誰に勝利の女神が微笑んでもおかしくなかった。
松本はとてもよい内容の麻雀をしていたと思う。しかし結果がついてこない。5戦4ラスはかなり精神的に応えるのではないだろうか。
これでベストバランスが崩れないとよいが…。

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