【Mリーグ】マムシの猛毒はどのようにして回ったのか【191025_1回戦観戦記】
はじめまして。ちあです。
競技麻雀歴は7年弱。麻雀自体は4歳の頃からゲーム、6歳から牌を握ってやっていました。麻雀歴32年。天鳳八段。最近六段坂をようやく抜け出したひよっこです。雀鬼流に傾倒していた時期があり、たまにオカルティックな発言をすることがありますが、基本的にはデジタル寄り。
麻雀がとにかく好きで、最近はMリーグをよく観戦しています。推しはU-NEXT Piratesの瑞原明奈選手。
ただの麻雀好きで実力や実績があるわけでもないので、Mリーグに出場されている方のプレイを批判するつもりはまったくありません。すごいと思ったプレイや、ここはもしかしたら微妙では?といった打牌をとりあげていけたらと思います。
本日は10/25に行われたMリーグ1回戦のおはなし。
(※文中、敬称略で失礼いたします)
結果からいうと沢崎が5,400点持ちラス目からオーラスの親番だけでまくりきりトップ。なぜ沢崎はラス目から復活できたのか?阻止する手段はあったのかを考えていきたい。
ちなみに沢崎は「マムシの沢崎」として恐れられていて、粘り気の麻雀を打つのが特徴。今回のようなオーラス大逆転をみせられると「マムシの猛毒」がいかに怖いものか分かるだろう。
◆東1局
沢崎が7巡目にカン6sを引きピンフ赤1の47mテンパイ!が、リーチせず。
次巡アガリ牌の7mを引き、打1pのフリテンリーチ!ド高めタンヤオ三色、高めタンヤオがある三メンチャン狙い。
最初のテンパイでリーチをするのが現代麻雀流ではないだろうか。
しかしこの高級食材なら高級料理に仕上げようとするのが沢崎流。一発目にアガリ牌の7mを引いたのはたまたまで、1巡ずれて裏が乗らなければ1,300、2,600。それであればタンヤオや三色までみてフリテンリーチが面白い。巡目的にはギリギリだが、他3人の捨牌に3,7が1枚もみえておらず速度的にまだ間に合うという判断もあったか。
おそらく1巡で手替わりがなければツモ切りリーチを考えていたように思う。そのくらいのバランス感覚。
結果的には親番の滝沢に1,000オールをツモられる結果となったが、7pをツモって最高の結果になっていた可能性もある。このくらいのリスクは承知の上だ。
◆東2局
滝沢が3巡目にシャンポンで先制リーチ!
瑞原はリーチの一発目に安全牌がなく8p切り。
次巡7m引きでツモり三暗刻系のイーシャンテンになったため3pプッシュ。
瑞原は自身のシャンテン数や打点と相談しながら相手との距離感を図るのが非常にうまい。
5巡目に瑞原が追いつき、ツモり三暗刻系のタンヤオシャンポンでヤミテン。
ツモれば2,000、4,000。ロンなら1,300。リーチしてツモっても裏が乗らなければ変わらずでここはダマでもよいとみる。特に三暗刻系は裏が乗る確率が低い。すでに先制リーチが入っている場面なので、ツモでの勝負手とロンでのかわし手半々でみていたのではないだろうか。先制であればおそらくリーチだ。
少し考えて4pもプッシュ!
ダマにして1巡1巡考えるのは本当に大変。どこまで行ってどこでやめるのか。こういうのを精度高く処理できるのが瑞原という打ち手である。本人は自身の麻雀を特徴がないと称したことがあるが、1つ1つの精度が本当に高い。刻々と変化する場況への対応力と判断力が優れている。見えすぎてしまうあまり損な選択をすることもあると思うが。
精度高く対応や判断ができないのならリーチをしたほうが断然マシである。自分はおそらく追いついた時点でリーチをしている。
7mツモでうれしい2,000、4,000。途中で分岐があったので、これをアガれない人も多いのではないだろうか。リーチしていたら裏3あったかも…。というのはたらればの世界である。
◆東3局
村上のリーチがかかっている場面、沢崎がハイテイで7sをプッシュし、テンパイをとりきる。このケイテンプッシュは現代流。
◆東4局
4巡目に滝沢が58s待ちでリーチ。この日の滝沢は早いメンゼンチャンスが多く、好調モードにみえる。
沢崎はこの形から痛い5s放銃。早い巡目で安全牌なしであれば自己都合で5s放銃やむなしか。チートイで押し返すのも2シャンテンからでは相当厳しいし、1mを連打する手はあったと思う。
◆南1局
滝沢が親番で軽い仕掛け。打点上昇の可能性が低いとみて發を1鳴きしていった。途中で赤や白を引いて高くなる可能性はあるが、親番での1,500仕掛けは賛否分かれるところ。個人的にはよほど切羽詰まっていない限り1,500の仕掛けはしたくない派。
瑞原もよさげな手ではあったが残り巡目が少なく自身のアガリ確率が少なくなってきたことで、南やピンズの下を切るリスクにリターンが見合わないと判断して手を崩す。合理的な判断。結果的に滝沢の安手仕掛けがハマった格好である。滝沢は元来腰の重い打ち手で、まさか1,500とは…という感じだろう。
滝沢1人テンパイ。普通にアガるより高い利益を出す。
滝沢は元々の雀力の高さに加え、誤情報を与えるのが非常にうまい打ち手である。本来この1,500仕掛けはあまりよくないはずなのだが、普段あまり鳴かない滝沢が鳴いたがゆえに一人テンパイという結果になったのだろう。普段よく鳴く人がやるとスルーされて瑞原のアガリになっていたかもしれない。
◆南1局1本場
滝沢が4巡目にまたも先制リーチ!好調モード。
シャンポンだが、ほぼ良形に近い1m白待ち。
村上がカン6sで追っかけリーチ。ドラドラの勝負手とはいえ親リーに対してドラ表カンチャン待ちというところに村上の苦境がにじみでている。
2軒リーチを受けた瑞原は9m切りを選択。8mは2人の筋だが、滝沢の5mは宣言牌でカンチャン待ちが否定できない状況。それであれば自らの手を崩さずワンチャンスの9mを切ったほうが得という判断だろう。このあたりは冷静。
瑞原が5sを引いてタンヤオのテンパイヤミテン。テンパイなら7pも押せる!
イーシャンテンなら7sを中抜いたかもしれない。テンパイは正義。
リーチの選択もありだったと思うが、ソウズの景色が悪すぎるのと二軒リーチ相手には分が悪いという判断。
瑞原は2s引きで7s中抜き。まずマンズピンズがけっこう通ってきてソウズの新しい筋を押すのは危険。2sは2人に危ない牌。
ヤミテンにしていたことでオリるという選択ができた。この後滝沢の当たり牌の白をつかんでいる。
自分は二軒リーチに対して追っかけて、白を放銃していると思う。
◆南2局
前巡3m待ちで仮テンをとっていた瑞原が1sに入れ替えチートイリーチ!
しかも捨牌がチートイにみえにくい。
安全牌が尽きた滝沢がワンチャンスの1sで放銃してしまう。
痛恨だが、これは仕方ない放銃。
◆南3局
4巡目村上が69pで先制テンパイもヤミテン。
本来リーチしたい局面だが、自分からドラがまったくみえず、すでに2フーロの親の瑞原がドラを持っているとみて、慎重に対応したのだろう。
しかし自分が親落ちして局が進んでいく状況で少しでも沢崎との点差を考えるとリーチという選択はありだったと思う。それだけ状況は切羽詰まっていた。
2フーロの瑞原は案の定ドラドラだった。
村上が9pでピンフのツモアガり。
◆南4局
オーラス突入時、沢崎はわずか5400点持ち。誰もが瑞原と滝沢のマッチレースと思っただろう。勝負は何が起こるかわからない。
親の沢崎の配牌。めちゃめちゃよい。自然にタンピンがみえてドラもあるお化け配牌である。
トップ目の瑞原、2着滝沢との点差はわずか2,000点。ここはアガリにいくしかない。
アガリトップの時に大切なのは「どこで役をつけるか」「どれが最速か」である。
この手の場合①中②ピンズのイッツーの両天秤となりそう。ブロック数不足でターツには手をかけられないし、3sは横伸びさせるために取っておきたい牌。となると白か北の選択になる。三元牌>自風で全員に役牌の白から。
瑞原が中を軽快にポン!7m切り。
ここはリスクをとって攻めに行く場面である。
沢崎が絶好の6pを引き入れ、36s待ちでリーチ。
沢崎の捨牌は第一打から中張牌が並んでおり意味不明である。こういうときはめちゃめちゃ速い普通の手か、変則手かどちらかである。ピンズがまったくみえておらずメンホンも否定できない状況で非常に厄介である。
困ったのが瑞原。ピンズが切りにくいため、唯一通っている7sを選択。
3s引きでテンパイし当然の打6s。
ここまで非常によい麻雀を打っていた瑞原が沢崎につかまり12,000の放銃。
結果だけみると痛恨の放銃であるが、この局に関してはどうすることもできなかったのではないか。ドラ周りで打つと高そうだが、ピンズのメンホンに刺さったらそれこそ悪夢である。沢崎の配牌がよすぎた。
強いてあげれば、オーラストップ目で2,000点しか差がなく前に出ざろうを得ない状況だったということ。もう少し差があればリスクをとって攻める必要はなかった。滝沢が好調だったこのゲームで瑞原もリスクを負って攻めてはいたが、トップをとるためにはもう少しリスクテイクが必要だったのかもしれない。ただこれ以上のリスクテイクを行うと瑞原麻雀ではなくなってしまう。非常に難しいところである。
◆南4局2本場
流局を挟んで2本場。沢崎が中単騎で4巡目リーチ!
滝沢は沢崎のリーチの一発目にドラの1sを勝負!12,000放銃ならば一気に3着落ちで目も当てられない結果となるが、滝沢は薄々気づいていたのだろう。ここで勝負をかけないと沢崎を止められないことを。それだけ滝沢も追い詰められていた。
決死の勝負も実らず沢崎の連チャンが続き、最終的に沢崎の大トップで終わる。これでMリーグデビューから6連続連対である(次戦も連対で7連続)。
沢崎は日本プロ麻雀連盟(以下、連盟)のA1リーグで長きにわたり好成績を残している。決定戦出場こそ少ないが本当に安定している印象である。このMリーグは連盟から最多の16名が出場している。その選手層の厚さの中でA1リーグに在籍しているのは前原、藤崎、瀬戸熊、勝又、和久津と沢崎の6名。
Mリーグで活躍中の滝沢、佐々木、内川、黒沢、二階堂亜樹、魚谷、白鳥がA2リーグでA1リーグであることを考えるとA1リーグは神の域である。そこで長年しのぎを削ってきた経験がこの大舞台で活きているのだろう。
沢崎は重厚な手作りだけではなく、鳴きも多用するオーソドックス系の選手である。そのため赤入りのMリーグでもすぐに活躍できているのだと思う。
いろいろ書いてきたが、マムシの猛毒を途中で止める手段はなかった。好調の滝沢に瑞原がくらいつき、最後沢崎が大外からさらっていった印象である。瑞原と滝沢がデッドヒートだったこと、村上が不調だったことであきらめずに戦っていた沢崎に展開が向いたのではないか。
このゲーム一番よい判断をしていたのは間違いなく瑞原である。オーラストップ目からまさかの3着終了で悔しい想いをしていると思うが、展開が向かなかったということ。次戦も期待したい。
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