見出し画像

ひまわりの種とペンタクー

西欧では昨日も今日も月は月だが、日本では今日の月と明日の月は別もの。十五夜、十三夜と名付け、今宵の月を愛でるのだとかつて紹介した雑誌があった。ここミャンマーでは、満月ごとにお祭りがあり祝日となる。
11月はダザウンモン祭り。黄金に輝くシュエタゴンパゴダでは、夜通しお坊さんの袈裟を機織りして競うコンペティションが催されるという。

「ペンタクー、しましょうよ!」
スタッフがやって来た。ペンタクーとは何ぞやと訊ねると、あのですね、ホワレ、〇※△〇※△ 〇※△??楽しそうに説明するも途中からミャンマー語になってしまって皆目解らない。そこで、お姉さんを呼ぶ。
「ペンタクーですね。」深くうなずくと説明してくれた。
ダザウンモン祭りの日、少しのお金とお茶やコーヒーMIX、お米やお菓子などを封筒に入れて道端に隠す。満月の下、誰がみつけるか扉の向こうからそうっと見ているのだという。ミャンマー版、ハローウィンか。見知らぬ誰かへ寄付し、陰徳を積むことのようだ。
「宝探しみたいで、楽しいですよ。」と満面の笑みの傍らでお姉さんは、以前は自分も配ったが今はコロナ等で出来なくなってしまったと目をふせた。

今週は最大の山場。過去最大数をお迎えすべく、予備のイスを追加で並べて皆、緊張の面持ちで準備している。以前は大入り袋があったと誰かが言い出した。はて・・かつての日本のように、ミャンマーに大入り袋の習慣があると聞いたことがある。急激な物価高で生活品も高騰し、インフレ手当を出しているところもあるという。しかし、成長途中にある中で、どこでボーダーラインを引けばいいのだろう。また、大入り袋がないと働かない人にもなってほしくない。

どうしたものか・・とカートを押していると、食料品売り場でかわいらしいものをみつけた。うまい棒のような色彩のパッケージに、エヘン虫のようなイラストが描かれている。よくみると、ひまわりの種だ。ミャンマーの映画館では、ポップコーンの代わりにひまわりの種を食べると聞いたことがある。
そうだ、ペンタクーをしよう!!

翌日、発案者を呼ぶとペンタクーの企画を依頼した。人生初の現金のお給料を小さなお札へとくずす。
「ペンタクーはゲームのようなもの。そんなに大きな額でなくてもいいのですよ。」
クスクスと笑いながらスタッフは両替している。以前、勤めていた一流ホテルで行っていたかと訊ねると、いいえと小さく首をふった。

土曜の昼を予定していたが、結局その日も忙しく、5分でペンタクーを探し写真を撮るという慌ただしいものになってしまった。掃除のおばさん、セキュリティーの男の子にもペンタクーを渡す。本来、探すべきものを手渡しされることに面喰いながらも、可笑しそうに受け取っている。これでよかったのだろうか・・いいのだ。ペンタクーという名のインフレ手当なのだから。

Thank you for Happy memory!
ダザウンモン祭り、おめでとう。
スタッフから集合写真が届くと、発案者はSNSでシェアしたいという。メッセージを考えてねと伝えた。
~~~~~~
季節のご挨拶
ミャンマーには満月ごと、伝統的な素敵な風習がたくさんあります。
ペンタクーもその一つです。私たちがダザウンモン祭りをどのようにお祝いしたかをシェアします。皆様のご多幸とご健康をスタッフ一同、お祈りいたします。
~~~~~~

5分で撮ったとは思えないほど、スタッフたちの笑顔はキラキラして、誇らしく輝いていた。流石、ほほえみの国である。

みんな毎日大変だ。バスで携帯をスラれたり、海外まで家族の執刀医を探し回ったり、一生懸命、生きている。ハードシップが高いのはなにも駐在員だけではない。そんな皆と共に泣いたり、笑ったりしながら、そっとおにぎりとコーヒーを差し出せる人であれたらと願う。

さて、明日は皆既月食。どんな月がみられるだろうか。

いたずらっ子のようなペンタクー。



天体観測~























この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?