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魔女伝「友だちは魔女」第十四章⑥キーマン

吉岡は、祖母から聞いた話をメモったものを自分なりにまとめてテキストファイルとして保存していた。
小脇に抱えたタブレットから、そのテキストファイルを開いて、ヨキに見せてくれた。

  • この建物は、古くから、ウィッカン魔女
    の教えを学ぶ学舎である。

  • 私、吉岡タエが、学長を務める。

  • 特別な力を持つものを各地より集め、修行の場とする。

  • 考え方、星のこと、宇宙の事、植物のこと、人間のことを学ぶ。

  • 類い稀なる力は、普通の人からは恐れられ、迫害を受ける可能性があるから、極秘にすること。

  • しかしながら、魔女狩りが激しく行われた西洋と異なり、東洋では、われらの一族は、自由でいられる。
    中国では漢方医学で使われる施術や薬は、われらの知恵と同じ。おそらくはわれらの教えが発端であると思われる。
    日本では、巫女、祈祷師、陰陽師は、皇室、各地の武将にも重宝がられた存在。

  • 私の子孫は、この学舎を守り、この能力を遺伝した者は、必ずわれらの教えを伝えていくことを使命と心得よ。

  • 私の子孫は、機会あらば、そして、この世が平和で、差別が無くなったなら、西洋を基とする魔女のルーツを探し、その地を訪れることを経験して欲しい。

  • 何よりも、この世のためになることを生業として選び生きていくことを肝に銘じよ。

    .........
    ...


箇条書きで書かれた文章を見たヨキは、目を見開いて、瞬きが出来なくなった。

「吉岡タエさんが、あなたのお婆様なの?」

吉岡は、頷いた。

「音羽、覚えてる?前に話したばあばの昔話。確か、赤い屋根の家で、そして、夢の中で会った人の名前、タエさんだったよね?」

音羽は、正直名前までは覚えていないと答えた。
けれど、吉岡のテキストファイルに書かれた内容と、ヨキのばあばの話は完全に交わるのが分かるから、音羽もヨキも固づを飲んだ。

吉岡の祖母なら、ヨキの祖母の子供時代と、時期的にも合致する。

ヨキも音羽もばあばの話を信じてなかったわけではないけれど、こんなふうにリアルに、この場所に来れたことが、信じられないような偶然だった。
そして、ここで行われてきたことを伝達された子孫から聞かされた内容は、まるで、ばあばの話の証拠を突きつけられて、確信させられている宇宙の計らいだとしか思えない。

三人は顔を見合わせた。

吉岡が口を開いた。
「実は、僕がヨキさんと出会ったボストンに行く前、ニューオリンズにしばらくいたんです。
それは、ここに書かれてる祖母の遺言を守って、魔女のルーツを求めた旅だったのです。
僕は、もちろん魔女のルーツと言われても全く見当もつかなかったのですが、色々調べていると、
ニューオリンズは、ちょっと不気味というか、不思議な過去で有名で、ブードゥー教、吸血鬼、ゴースト、そして魔女の物語がたくさんあるということが分かりました。
それらゆかりの地を巡るウォーキングツアーとかも旅行社の企画であるんです。
それで、まずは、そこをめがけて旅立ちました。
そして、本屋で魔女に関する本を買ったり、魔女をフィーチャーしたカフェに置いてある魔女の逸話が書いたノートを読ませてもらったりしました。

それで、昔、セーラムで魔女裁判なるものがあり、魔女狩りがあって、生き延びた魔女たちがニューオリンズに流れ着き、彼の地で、魔女道を脈々と受け継いだということを知りました。

それで、次はセーラムに訪れないとって思い、ボストンに住む友だちのところを頼って行ったわけです。
セーラム近いのでね。
その時に、ヨキさんに出会った。
そして、そのヨキさんが、魔女??

なんて不思議な巡り合わせなんだ。

僕は、祖母にとても可愛がってもらった。
祖母は、いつも、何か不思議なことをしたり、言ったりしていた記憶は確かにある。
僕は、幼すぎたから記憶も曖昧で、
大人になって、そのことが本当にあったことなのか、夢を見てただけなのか、分からなくなってしまったんです。
祖母が亡くなる前に、色々な話をしてくれました。
祖母の話が、本当かどうか確かめようもないけれど、とにかく祖母が大切にしてきたものをしっかりと受け継ごうと決めたんです。
祖母が大好きだったから、遺言を守りたかった。

それと、祖母の話してくれたことが真実ならとワクワクしました。

だから、魔女のルーツを追う旅に出たのです。

その時に集めた資料や、出来たコネクションから見つけた魔女に関係するモノを集めました。
そして、祖母が息を引き取る少し前に僕に話してくれたことの信憑性を認めることになっていきました。

僕は、残念ながら、祖母のその不思議な能力は、受け継いでないみたいです。
男だからかな?
でも、こうやって、ヨキさんとの不思議なご縁を繋げられたことが、僕の役割だったのかもしれない。
しかも大切な、、、」

ヨキは、興奮していた。
「凄いわ!ばあばは、やっぱり魔女なのね。だから、わたしをここまで導いた。

そして、吉岡さんとのボストンでの出会いと、今現在この地での巡り合わせ。

吉岡さん、あなたと再会するためにディナーに行った時に、わたしはあなたが、わたしの魂の旅路の経過観察のキーマンになると確信していたの。

そして、今日という日に導かれた、、、。

全ては決まっていたの。抗えない宇宙の計画、、、」

音羽の目の前で、信じられないようなことが起こっている。
いや、信じるしかないことが起こっている。


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