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Frank Sinatra-Songs for Swingin’ Lovers!

前回はブルーバラードの傑作『In the Wee Small Hours of the Morning』(1955)を紹介した。今回は打って変わって明るいスウィングのアルバム『Songs for Swingin’ lovers』(1956)である。こちらも歴史的名盤なのでじっくり聴いていきたい。

ジャケットはもう1パターンあるが、オリジナルのこちらを採用。


【曲目】

1 You Make Me Feel So Young
2 It Happened in Monterey
3 You're Getting to Be a Habit With Me
4 You Brought a New Kind of Love to Me
5 Too Marvelous for Words
6 Old Devil Moon
7 Pennies From Heaven
8 Love Is Here to Stay
9 I've Got You Under My Skin
10 I Thought About You
11 We'll Be Together Again
12 Makin' Whoopee
13 Swingin' Down the Lane
14 Anything Goes
15 How About You?

【感想】

スターターは“You Make Me Feel So Young”。40年代に出来た曲だが、シナトラのこのバージョンによってスタンダードの仲間入りを果たした。流れるようなスウィングで、あっという間に終わってしまう。君は私を若い頃の気持ちにしてくれる…という歌詞が、40歳になった当時のシナトラにとても似合っている。もちろん、還暦を過ぎてこの曲を歌うシナトラも味わいがあって良いのだが。ライブでもよく取り上げた彼の十八番の1つ。

3曲目“You’re Getting to Be a Habit with Me”では、前の2曲に比べて非常に抑えた表現を楽しむことができる。同じスウィングの中でも芸域の広さを感じさせるのは一流の技。

“Too Marvelous for Words”は第1コーラスを軽く歌い、第2コーラスに入ると一気に激しくスウィングする。『Swing Easy!』でも見られたこのパターンは、アレンジャー:ネルソン・リドルの得意技だ。

A面のラストはガーシュウィン兄弟の名作”Love is Here to Stay”。どんなことがあっても私たちの愛は永遠…というこの甘い曲を、情感を失わないように繊細にスウィングする。フェイドアウト的な終わり方が渋い。

コール・ポーター作曲の“I’ve Got You under My Skin”はシナトラの代名詞的名曲。本作こそが彼のスウィング唱法の最高傑作だという意見も多い。シナトラ・ソサエティ・オブ・ジャパンによる人気投票でも1位だったようだ。素人にも玄人にもウケる稀有な作品と思う。本作もやはりリドルのスタイルが最大限に活きており、ゆったりとした第1コーラスから有名なトロンボーンソロへ。そして第2コーラスに突入し、さらなる盛り上がりを見せる。
シナトラの真骨頂はレコードではなくライブであるという話は以前にもしたが、その中で最も盛り上がるスウィング曲が、”The Lady Is a Tramp”と、この“I’ve Got You under My Skin”である。

11曲目の”We’ll Be Together Again”は、本アルバム唯一のバラードだ。コンセプトに合わないなどと言わず、アルバムのアクセントとしてこの曲を捉えたい。もちろん出来栄えは文句なし。
他のアーティストでは、トニー・ベネット&ビル・エヴァンスのバージョンが私の好みだ。

ラストは“How About You?”。僕は6月のニューヨークが好きだけど、君はどう?僕はガーシュウィンの曲が好きだけど、君はどう?
このように自分の好きなことを連ねる歌詞だが、これもやはり恋の歌か。楽しげな雰囲気でアルバムを締め括る。


【総評】

当時のシナトラのアルバムの中で最も成功した一枚。以前に解説した『Swing Easy!』(1954)をさらに発展させた作品であり、シナトラのスウィング唱法はこのアルバムでまさに完成したと言える。
誰だったかプロのジャズマンが、このアルバムの“I’ve Got You under My Skin”を聴いて、シナトラとバンドが宇宙に飛んで行ったような気分になったと書いているのを読んだことがある。それほど斬新で革新的な作品だったということだろう。


【この1曲】

シナトラ生涯の代表作となった“I’ve Got You under My Skin”。メリハリの利いたアドリブ、そしてオケとの完璧なバランスに注目。

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