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詰パラ713号 前編

この号は非常に面白いのでオススメだ。

目玉商品は若島さんによる「夢想の研究②」。2024年8月発売予定の『詰将棋の誕生』ではここからさらに進んだ研究が見られそうで楽しみだ。

それから「詰将棋デパート 年間表彰」も見逃せない。というのも、担当者が自分で受賞作を選ぶ半期賞システムではなく、あの山田修司さんにジャッジをお願いして選評を書いてもらうというチェスプロブレムのシステムを採用しているからだ。ここでは、長編賞を受賞した田島秀男作(以下のリンクを参照)に対する山田さんのコメントを引用しておこう。

 「奇想天外」「破天荒」「荒唐無稽」「驚天動地」・・・・・・田島秀男という作者をひと言で表す言葉を考えて見たが、うまい言葉が出てこない。桂4香4や七種合の短編もそうだったが、要するにこの人が考えることは、常軌を逸しているのである。
 この作は4連桂合と7連歩合を連続して行うもので、誰もこんなことは考えない。いや、思いつきもしない。条件作といえばそうかも知れないが、こんな条件がある訳ではなく驚愕の新構想作である。
 思えば田島秀男というこの天才作者の作品に、リアルタイムで接することができる我々は幸運である。
(後略)

この田島作を「条件作というよりも新構想作だ」と捉える山田さんの考え方は非常に興味深い。


結果稿からは、新人作家(?)の作品を。

三島桂太作

詰パラ2015年5月

74龍引、同と、64龍、54香合、35と寄、15玉、59馬、同香成、14龍、同玉、25とまで11手。

有吉弘敏ー2枚の龍捨て・香中合・鮮やかな収束と理想的な短編。初入選の作品も水準を超えており、素晴らしい新人が現れたもの。

中身は一流作家というオチ。
それはともかくとして、この作はどうしても上間作との比較になってしまう。作者も上間作を意識して作っているわけで、結果稿で触れられていないのが不思議だ。
上間作は限定打で出来ている(変化で75飛打として馬のラインを遮断するため)のが凄い。対してこの三島作は軽い配置で収束まで決まっているのが+αポイント。上間作は大傑作だが、この三島作も好作であることに間違いない。

(参考図)

上間優作

詰パラ1979年12月

76飛、同と、28桂、15玉、75飛、同馬、26金、同玉、59角、25玉、35とまで11手。


谷川浩司作

詰パラ2015年5月

26馬、同玉、37銀、17玉、28金、同銀成、同銀、26玉、37銀、35玉、46銀、44玉、55金、53玉、54金、同玉、55銀、63玉、64銀、62玉、73銀打、同金、同銀生、53玉、64銀生、44玉、55銀、53玉、63金、同玉、64銀、62玉、54桂、71玉、72金、同玉、73銀成、71玉、82成銀まで39手。

江戸の香りを感じる軽趣向で、作者の持ち味が発揮された好作品。

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