あれから

私は、かなり強引に、彼に会いに行った。
沈黙している彼と、きちんと別れるために。
そうじゃなきゃ前に進めない。動悸が激しくて電車に乗れなくなり、抗不安薬も手放せなくなった。終わりはフェードアウトでいいと私自身が思っていたのに、いざそうなったら、納得して終わらせたいと思った。
その日に、平静を装って家族のもとに帰る自信がなく、彼の住む街にある一番高いホテル(みじめな気持ちになりたくなくて、すごく奮発した。)を予約し、翌日は有給休暇を取った。
私がいくつか会いに行く日の候補を伝え、返事がなくても会いに行くと告げると、彼から返信があった。
小さい街で人に見られたらまずいので、都内まで出るよ。
優しさだと思うし、この関係においては当然のことだけど、来られるの嫌なんだなと思い、今更ながら傷つく。それでも、最後だしいいやと思い、かなり強引に単身赴任中の彼のマンションまで出向いた。
人に見られないようにキョロキョロしながらチャイムを押す。何か悪いことしているみたい。いやしてるんだった。普通の恋愛してきたつもりになってたけど、大きな勘違いで、互いの家族への裏切りの上に成り立つ関係だった。それでも、バレてなければ傷つけていないし、私の心が潤うことで、優しい母と妻を演出できるんだから、一石二鳥とかどこかで考えてる私はきっと地獄に落ちるな。

続く