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最近見た映画

5月11日に見た映画の2本目は「ゴットランド」

デンマーク人の牧師が植民地であるアイスランドの辺境の村に教会を建てるというミッション※を与えられ、これを遂行する物語
※ふと思ったのだけど、「mission」には伝道活動・使節団という意味があるか。

舞台はアイスランド
画面に映しだされる北方の地は、雪に覆われた山々に囲まれ、果てしなく広がる草原、絶壁の崖、草も生えず岩肌がむき出しとになっている丘、噴火する火山と流れゆく溶岩。
まるで人を拒むような過酷な光景が、余計なものを取り去ったが故に美しく感じるのが印象的。

結論を先に書くけど、映画を見て思ったのは、
▶牧師であるルーカス(映画の主人公)が、人々に福音をもたらす神の存在を絶対視しているにも関わらず、福音を授けるべき現地人を蔑み、その結果として蔑む「原住民」との間に入っていた通訳を溺死させてしまうこと、与えられたミッションの達成を助けたラグナルを殺めてしまうなど、牧師としてというより人間としての倫理観を持ちあわせていないことへの皮肉
▶「原住民」への蔑視が、移民一家の主人に刺殺されるという形で受ける報い(とそのことへの皮肉さ)
▶ルーカスから人間性を奪ったであろうアイスランドの壮大かつ冷徹な自然と、人間から人間性すら奪い去る自然とを対比させることで、人間の存在価値を問うているかのように思われる
ということ

映画の前半は、アイスランドに上陸してから目的地までひたすら馬に乗って移動する場面が続く。2時間23分という上映時間が頭をよぎって帰ろうかと考えていたが、そんな退屈感を変えたのが、徐々に、アイスランド人を所詮植民地の「原住民」に過ぎないと蔑視する、デンマーク人としての本性を表していくルーカスのクソっぷり(笑)

ルーカスは「辺境の地に行き教会を建てるのだ」「現地の人々と環境に適応するように努めろ」と命じられているにもかかわらず、現地人(アイルランド人)の言葉を覚えようとせず通訳に頼っている。これが現地人との間に微妙な距離感を醸し出しているのだが、アイルランド人を蔑視しているからであることに気付かされる。

その蔑視が皮肉な事態を引き起こす。増水した川を前にして、荷物を運ぶ現地人たちのリーダー(ラグナル)は馬で渡れるかを確かめるため川に入る。ラグナルは腰まで増水していることから引き返そうとルーカスに助言するが、ルーカスはこれを無視して、荷物を運ぶ人たちをリスクにさらしてまで川を渡ろうとする。しかしラグナルの判断が正しく、一行は川に流されそうになり、また大切な通訳を溺死させてしまう。

現地人一行との接点であった通訳を失い、孤独になったルーカスに、美しいアイスランドの自然は容赦なく刃を向ける。
過酷な状況に正気を失ったルーカスは、これ以上旅を続けることはできず、教会建設をあきらめて故郷に帰りたいと祈るようになる。
ルーカスは疲れ切った様子で突っ伏したまま乗っていた馬から転がり落ちてしまうが、荷物を運んできた現地人はルーカスを目的地まで運ぶことなく、その場に置き捨てて帰ってしまう。彼らを蔑視してきた報いを与えるかのように。

行き倒れたルーカスは、デンマークからの移住民一家に助けられ一命を取り留める。ルーカスは一家の娘たち(姉妹)と仲良くなるが、移住生活になじめずデンマーク語を使い続ける姉と関係をもってしまう。
この様子を快く思っていないのか、ルーカスを信用していないのか、この移住民一家の主人は家族に彼と距離を置くよう命じる。

移住民の主人が結婚式を挙げるカップルに祈りを捧げるようルーカスにお願いするも、彼は、教会ができあがっていないからという理由で無碍にあしらってしまう。

荷物を運んできた一行は戻ってしまうが、ラグナルが残っていた。彼の働きもあり教会ができあがる。

ルーカスのミッションを助けたラグナルは、ルーカスに写真を撮って欲しいと依頼する。しかしルーカスは、湿板写真に使う銀がないとまたもや無碍にあしらってしまう。ラグナルが食い下がるも、ルーカスはラグナルがデンマーク語を理解していたことを知り(劇中で何度もルーカスがラグナルに言葉が分からないのだと怒りを表すシーンがある。)、争いになった果てに怒りに身を任せラグナルを殺してしまう。→ダークサイドに墜ちたダースベイダーがヘマをした部下のことをフォースで絞殺するシーンを思い出す。

住民が集まって満席となった教会で最初のミサが執り行われようとしたとき、野外では飼い犬が吠え続けている。あたかも侵入者に警告するかのように。

吠え立てる犬にいらついたルーカスが教会の外へ出て犬を追い払おうするが、泥に足をすくわれて、宣教師としての正装だけでなく顔まで泥だらけになってしまう。

そしてそのことに気が付いたルーカスは、ミサに参加している住民を残したまま移住民一家の馬を盗んで逃げ出す。しかし彼はすぐに移住民一家の主人に追いつかれ、「馬の乗り方も知らないのか」とバカにされた上、「落馬したと思ってくれ」と言われ刺殺される。

遺体は弔われることなく草原に放置され、一冬、風雪にさらされている光景が映し出される。そして春になって雪が溶けたあとに、姉妹の妹がルーカスの遺体を見つけるが、馬上から大地に還ってねと(記憶に自信なし)声をかけただけで来た道を戻ってしまうところで幕が下りる。

劇中の出来事を書き出すつもりはなかったのだけど、福音を伝えることが役割の牧師が他人を蔑む(同じ意味の「見下す」ではルーカスの心情が表現できないように感じる。)ことが映画の重要な要素であることを思いだしているうちにつらつらと書き出してしまった。ネタバレなよな。

過酷な自然すら背景として意味を持たせる演出と、人間に対する皮肉を込めた監督の意図が良いと思った。8点かな。

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