見出し画像

30代で心筋梗塞になった男の体験 7 バイパス手術 前編

30代で心筋梗塞になった私の体験を綴っています。同じような事が起こった人の参考になるように。健康な人が増えますように。

バイパス手術に向けて

退院から1ヶ月後が経過。冠動脈バイパス手術は別の病院で行うことになっていたため、紹介状を持って診察へ行った。

執刀してくれるのは、バイパス手術に関して地元では名医と呼ばれる先生であった。先生は、自分の現在の病状、手術の方法など、大変丁寧に説明してくれた。

この時点では、自分は仕事こそ休んでいたが、日常生活はすっかり元の生活に戻っていた。何の症状もなかったからだ。

しかし、この診察で初めて、心筋梗塞と診断された。それまでは、不整脈の一種の心室頻拍という病名であった。

先生から伝えられたことは、冠動脈3本のうち2本が詰まり心筋梗塞が起きていて、心臓の3分の1が機能していないこと。それに伴い、心室頻拍が発生したと思われるということ。

そして最後に「君がいま平然としているのが不思議だ」と。

事の重大さが少し分かった。

日頃から目立った生活習慣の乱れもなく、毎日運動をしていたことが、助かる確率を高めたのかな。こういう時に差が出るんだなと思った。

冠動脈バイパス手術の方法

冠動脈バイパス手術は、平成の天皇陛下も行った手術として知られている。自分の体の中から一部血管を取り、冠動脈につなげて、新たな血管のルートを作る。

この手術には、心臓を止めて人工心肺を使うオンポンプ手術と、心臓を動かしたままで行うオフポンプ手術があるそうだ。

心臓が拍動した状態で糸みたいな血管を結ぶことは難しいため、以前はオンポンプで行なっていたようだか、心臓を止めるとはすなわち死であり、危険を伴う。

そして、医療機器の発達によりオフポンプ手術が可能となり、より安全に行えるようになったという。以前は、バイパス手術で合併症が起こる確認は5%あったという。

5%は、けっこう高い確率である。

しかしいまのオフポンプでは、1%以下らしい。

どちらもメリット、デメリットがあるが、今回はオフポンプ手術となった。いずれにしても、肋骨を全部のこぎりで切って胸を開ける。骨折と同じ状態のため、手術後は「けっこう痛い」と。

うんざりである。

バイパス手術のため入院

入院の前、自分で自分の血を輸血するための自己血と呼ばれるものを、2週間に渡って合計800ml採取した。自分は問題なかったが、貧血気味の人には大変なのかもしれない。

入院は3週間ほどになる。

入院の当日、ふと「手術に失敗したらもう帰って来れないな」と思い、急激に不安になった。よく言う話だが、毎日、当たり前に暮らしてることがとても貴重なのだ。失う局面を迎えて初めて気が付いた。今回の出来事の中で、この時が一番、恐怖だった。

手術日の数日前に入院した。手術前の検査は、肺のチェックなどであるが、ものの半日で終わった。手術後に胸が痛くて痰が出せないと肺炎になるらしく、専用の器具で呼吸の訓練も行った。

あとは、ベッドの上ではあるが、わりと自由な時間を過ごさせてもらった。

ふと、人生を振り返って、やり残したことを考えてみた。書き出してみると、177項目も出てきた。ありすぎだろ。我が生涯に一片の悔いなしとはいかないものだ。

そして、手術当日を迎えるのであった。

日頃の行いが生死を分ける

途中でも書いたが、自分はわりと健康的に生活していたと思っている。暴飲暴食もせず、タバコも吸わず、毎日運動していた。

実際、手術前の検査では、心肺能力は平均の110%、肺の状態は120%、年齢は27歳並みと判定された。

残念ながら、持病によって心筋梗塞になってしまっだが、自分の体が持ち堪えてくれたのは、健康な状態であったからだと我ながら思う。

「病気になってないから何もしなくても私は健康だ」こう考えてしまいがちだか、病気や怪我をした時に、生命維持や回復力に差が出ることもある。

日頃の行いが生死を分けることもある。死の間際に、やり残した事を後悔しないように生きていきたい。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?