猫の家出

この子はchero(チェロ)
野良猫だった。

いつものように
遊びにきていた。

ふと思いドアを開け
「一緒に住まない?」
と誘った。
彼はすーっと入って来た。

それから3年間暮らした

ある日家人がドアを
締め忘れた。
彼は当然の様に
外へ出て行った。

一日たちその夜
彼は帰ってきて
ドアの前に座っていた。

家人の友人が彼の
愛らしい姿に
驚嘆の声をあげた。
彼は驚き、逃げた

それきり…
彼は帰って来なかった。

泣いた。
彼の温もりを、
毛並みの柔らかを、
その匂いを、
思い出し泣いた。

それから2年。
私はどう諦めようかと
思案した。

そこで一つの物語を
作った。  

ある街の片隅の
お家に彼にそっくりな
猫がいる…と言う、
早速訪ねて行った。

そこでは小さな女の子が
彼を抱いて座っていた。

「この子迷い猫なの。
あなたの猫?」

女の子はジーッと
私を見つめた。
その目は悲しみの色
をしていた。

私は言った。
「うちの子じゃないわ。
違う猫…」

女の子の目が喜びで
いっぱいになった。

私はさよならを告げて
その場所を後にした。  

そんな物語を作った。

諦められた。

それからしばらくして
そっくりな猫が保護されたと
保護サークルから
連絡が入った。

彼だった。

猫は2年経つと
記憶がリセット
されると言う。

彼は記憶がなかった。
びくびくしていた。

そして今…
彼の記憶は徐々に
回復し私の元へ
すり寄ってくる。

これは奇跡だと言う。
確かにそうだと思う。

おかえり。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?