新、足跡 ①

小学校の卒業式で「環境は人を変える。」と校長先生が言っていた。そんな簡単に人は変わらないだろうと12歳の僕はパイプ椅子の上でその言葉を聞き流していた。

僕、今年22歳。「環境は人を変える」の真っ只中にいる気がする。

この春大学を卒業して就職した僕は、生まれてからずっと住んでいた京都を離れ、片道車で10時間かかる街で一人暮らしを始めた。大学生は人生の夏休みと言うように、大学最後の1年はバイトもせず授業もほとんどなく、やりたいことをやりたい時にやりたいだけする生活を続けていた僕は、早起きなんか出来ないし、食生活も乱れまくった自堕落な生活をしていたので、毎朝7時半に出勤する生活なんて不可能だと思っていた。
だから、2年先に就職した姉が朝に強くなったと聞いた時、俄かに信じられなかった。(その話はこっち)

だけど僕も、毎朝7時半にちゃんと出勤できていて、帰ってきたら洗濯を回して、お米を炊いて寝てる。人間の適応能力って素晴らしいと思う。この生活を始めて1ヶ月とちょっと経った今、ただ全力で付いていくだけだった生活を振り返ってみると、環境は人を変える。と言う言葉の意味というか、あのとき校長先生が言ってたことってこういうことだったんかな、と思ったりして不思議な気持ちになっている。

例えば、生活リズムももちろん変わったけど、他にも着る服とか、聞く音楽もちょっと変わった気がする。先に就職した先輩とかがポロシャツとかベスト着てたら、なんでそんな服の系統変えてるんだろうと思ってたけど、なんか勝手にそうなる。なんでかは分からないけど。聴く音楽も、インストなんか聴いたことなかったのに気がついたら聴いてる。なんでかは分からないけど。昔聴いてた曲をひさしぶりに聞き返すと、前とは違った景色が頭に浮かぶようになった。歌詞を聞いて、前と違う自分を重ねるようになった。
こうして自分でも気がつかないうちに、無意識のうちに変わっていく。そうやって新しい環境に適応して、自分の人生に足跡をつけていく。だからこそ、昔の思い出とか自分を見て懐かしくなるし、今の自分のルーツを辿ることができるんじゃないだろうか。
まだまだ始まったばかりで自分が今経験していることは社会のほんの端っこの試食に過ぎないんだろうけど、次の自分はどの環境でどう生きているのかちょっと楽しみになった。

先の見えない、チェックポイントの少ない長い生活が始まる今、この気持ちを文字にして足跡をつけておきます。いつかこの投稿を見て、未来の僕が笑ってますように。

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