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藤近小梅 『好きな子がめがねを忘れた』アニメについての色々

◆はじめに

前回、原作についての感想を書かせていただきました。

続いて先月終了したアニメについて少し書きます。

◆アニメについての沿革

2023年夏アニメ。TOKYO MX等で1クール13話を放送。
各種サブスクではU-NEXT、ABEMA等で順次配信。


◆アニメと原作の比較 ストーリー面

ストーリー面では、基本的に原作に忠実な作り。
単行本収録エピソードを中心に組み立てつつ、時折X(Twitter)のみで公開されているエピソードも用いられます。エピソード自体の中身や台詞回しは、尺の都合で若干の言い回しを変える程度にとどまっています。

時系列については、少し原作からアレンジしている部分があります。
原作では中3時代のエピソードの一部を、アニメでは中2時代に持ってきていたりしています(掃除中のGのエピソード等)。原作は中2時代はあまりイベントがなくすぐに中3になってしまうのですが、これには一応の根拠みたいなものがあって、三重さんは一応めがねを忘れない日の方が多いので、めがねを忘れる日を通して親密度が向上していくという構造上、知り合ったばかりの中2はあっという間に時が過ぎる、そういう理屈です。
ただ、アニメ化では1話に複数のエピソードをきりよく詰め込むため微調整を入れた、そんな寸法だと思います。整合性は考えられていて破綻はないようには見えます。

なお、単行本収録エピソードで何故かアニメ化されなかったものもありますが(映画鑑賞の授業)、円盤限定の特典にするのでは、というのが個人的な読みです。円盤限定の特典は一部公開されていて、X(twitter)限定のエピソードが使われていたりします。

◆アニメと原作の比較 ビジュアル面

続いてビジュアル面についてです。
原作はあっさりめの画風なのに対して、アニメはかなり盛りに盛っています。具体的には、特に三重さんの毛髪について、量や質感や動きへの拘りを強く感じる作画となっています。
作画の安定性は言うことない仕上がりですが、その分三重さんが設定以上の美少女にも見えてしまうという面もあります。小村くん視点のフィルターを強めに書けたらアニメ画に、現実寄りにしたら原作画に、という解釈をしても良いのかなと感じました。

◆アニメの独特さについて

原作との差異という枠組みを外れて、なによりインパクトがあったのは第一話の冒頭。
なんというのでしょうか、アニメの技術には詳しくないのですが、360度回り込むようなカメラワークでの登校シーン。言葉で説明できないので、↑の動画の冒頭20秒程度を見ていただければと思います。
技術力の凄みは伝わるものの、果たしてこの作品にそうしたものが必要だったかというと首を傾げざるを得ません。制作スタジオの営業活動という意図も含むようですし、最終話まで通して結局そうした技術だけが前に出たようなシーンはこの第一話冒頭のみでしたので、一概に否定はしないものの……このシーンを見てうへっとなる人も少なからずいそうだなという印象はあります。それで一話切りをしている方がいたら勿体無いなと。
甘々なラブコメを見たい人は今からでも見ましょうね、第二話から癖は抜けますので。

あとアニメでの小村くんは、モノローグがテンション高めの語気強め、対外的な発言は声抑えめ控えめ、という演技のメリハリがありました。静かなアニメよりもコメディ調のアニメという方向性の選択でしょう。これは一期にあたる範囲内では作風ともマッチしていて正解。(あるかどうかわからないものの)二期の範囲の作風の変化も含めると複雑なところですが、この辺りの声優さんの絶妙な演技に期待したいところでもあります。

◆まとめ

上述の独特さを除けば、言うことない見事なアニメ化だったと思います。特に三重さんの声優・若山詩音さんはほんと素晴らしい。役どころの理解度・解像度が高いのでしょう。
あすかちゃんや染谷さんや東くんなどのサブキャラも原作イメージにあった活躍をした一方で、出番がそこまで多くなかったまほちゃんや火渕さん。二期があればこの辺りは解決するのですが、これは確度が正直微妙な気がするものの期待したいところです。


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