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藤近小梅 『好きな子がめがねを忘れた』原作について感想

◆概要

中学生のラブコメです。こないだ感想を書いた『僕ヤバ』と同様に中学生が主人公の甘々なラブコメな訳ですが、そういうばかり読んでいるのではないですよ、高校生のラブコメも読みます(『氷の城壁』『正反対な君と僕』『スキップとローファー』)……社会人のラブコメも(『あそこではたらくムスブさん』『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』)。
まぁバトルものもサスペンスものもスポーツものも、いろいろジャンル問わず幅広く読んでるつもりですが、今はラブコメが刺さる季節とお年頃ということなのでしょうと適当に片づけます。

簡潔に言うと、めがねを忘れたせいで距離感がバグっている女子と、自分に自信のない普通の男子の関係を描いたラブコメです。
月刊誌『ガンガンJOKER』で連載中。既刊11巻で、2024年春に刊行予定の12巻で完結という予告がされています。

◆内容の紹介

さて、距離感のバグとは、つまりは物理的に近すぎる、ということです。作品の紹介時に「ゼロ距離」というワードが用いられている通り、めがねを忘れた「三重さん」はちょっとありえないくらいの物理的な距離で「小村くん」の顔をのぞき込んだり話しかけたり色々する(一話で既に「あてて」います)。また、めがねを忘れた三重さんがものの判別ができない状況で色々とやらかしてしまい、それを小村くんがフォローする、というのがパターンとなります。

そんな頻繁にめがねを忘れるのか?という視力が悪い人間からすると当然の疑問が出てきてしまうのですが、そこらへんは大元がtwitter(X)上でのショートマンガ発ということで、当初は深く考えていなかったのではないかと。後述しますが、作品へのストーリー性の付与による変化とともに、初期設定の無理が祟ってくるパターンだと思います。正直この三重さん周りのリアリティは、中学生設定でもアウト、小学生高学年と比べてももうちょっとしっかりしてんだろと思うところがあります……が、まぁ無粋な突っ込みだと捨て置きましょう。

◆ストーリー、主題の変遷

序盤はそうした「こういうのされたら惚れてまうやろ」的なシチュエーション先行型コメディで、三重さんの物理的距離の近さと天然発言による胸キュン、そんな三重さんに振り回される小村くんの片想いのやきもき、三重さんを神格化する小村くんの心理描写の絶妙なキモさ、などなどを楽しむようなショートエピソード群の雰囲気が強いです。

ところが4巻のとあるエピソードをきっかけに、三重さんの方が小村くんを意識するようになります。
以後の行動的には、三重さんから小村くんにグイグイ行くのは序盤と変わらないのですが、無意識的なグイグイが自覚的なグイグイとなっている点が大きな違い。実に甘々な両片想い状態で、はよ付き合えや、と言いたくなるような展開が続きますが、この辺りがショートストーリー集からストーリーマンガに変化していくターニングポイントでもあります。

小村くんは、三重さんのことを好きになって初めて自我が芽生えた的なモノローグを残すエピソードがあります。小学生時代の記憶がほとんどなく、何も打ち込めるものもないためなんとなくゲームを趣味としてきた小村くん。自分には何もない、という趣旨のモノローグも少なからず見られます。
一方で、三重さんも、序盤から小村くんに世話になりっぱなしの状況が続いていて申し訳ないと思ってはいましたが、小村くんへの好きを自覚する中で自分自身の不甲斐ない部分を恥じる描写が今まで以上に増えてきます。
要は自分に自信のない二人で(そこが恋愛の進行度を抑えがちにはしてしまっている面もあり)、各々の改善を目標としていく成長譚にストーリーの舵が切られる形となります。
そうした二人の純粋さが作品の尊さを高めているのが素晴らしい。特に序盤のリアリティについては進んで眼をつぶり、こまけぇことはいいんだよと楽しむべきかなと感じる次第です。

◆つづく

本日はいったんここまでとします。
次回は先日終了した、『好きめが』のアニメについて書きたいところです。
が、先に『僕ヤバ』の更新日が近づいているので、前回おさらいかつ次回展望を明日は優先すると思います。

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