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【国民年金法】どうやって問題を解くか【演習】

今回と次回で年金科目をやっていきます。
試験の順番的には厚年法が先ですが、理解する順番としては2階建ての1階部分である国年法が先の方がいいかなと思うので先に出すことにしました。
厚年法も標準報酬月額など健保法と共通する部分があるので健保→厚年と進めてもいいのですが、給付の部分などメインとなるところは国年法がベースなので、先に国年法をやってしまうのが学習の順番としてはオススメです。


では今日の1問

1 国民年金法は、「国民年金制度は、 日本国憲法第25条第2項に規定する理念に基き、老齢、障害又は死亡によって国民生活の A がそこなわれることを国民の B によって防止し、もって健全な国民生活の維持及び向上に寄与することを目的とする。」と規定している。
平成28年 選択式より一部抜粋


これまで択一式から問題を選んできましたが、選択式の分析、理解を進めることで択一式対策もできるのでたまにはということでw


答えとしては

A:安定

B:共同連帯

ですが、キーワードを確認して終わってしまうと何も身につかないままです。
他の箇所を抜かれたときに冷静な対応ができるでしょうか?
面倒ではありますが、細かく分析する作業を積み重ねると、他の科目にもどんどんつながりが見えてラクに学習が進むようになります。後半になればなるほどラクになるので先に苦労しておきましょう!

ここで必要となる知識は「目的条文」です。
どの科目でも、選択・択一どちらでも出題可能性が十分にある部分なので、国年法に限らず出題範囲となる全科目について目的条文の理解は深めておくべきです。

では、国民年金法の重要ポイントを解説していきます。


まず重要になってくるのが「 日本国憲法第25条第2項に規定する理念」です。


ずっと昔に「第1項」と変えて出題されたことがあるのですが、再度出題される、あるいは選択式で抜かれる可能性もないとは言えませんし、国民年金法の理解のベースにすべき考え方としてしっかりわかっておきましょう。


学説のひとつではありますが、

25条1項は救貧施策(貧困から救い出す施策)、2項は防貧施策(貧困に陥らないようにする施策)であるという解釈があります。


すなわち

1項:生活保護(公的扶助)

2項:年金等社会保険、社会福祉、公衆衛生


という形で社会保障制度の根拠が分かれます。


というわけで年金制度は2項が根拠ということですね。

次の重要ポイントは保険事故の順番です。


老齢、障害又は死亡」という順番になっています。


老齢が最初に来るあたりが国の本気を感じますよね。
全国民が強制加入なのに「老齢」を保険事故として扱うというのはものすごいことだと思いませんか?

保険事故にするということはリスクとして捉えるということ、つまり老齢=長生きしてしまうリスクだと考えているということです。
最近では民間でも終身の養老保険的な商品が出てきていますが、それを全国民に対しやれてしまうというのが国の財力の凄さですよね。

元々は戦争のため、軍事費をかき集めるために始めたことだとか、一般会計と特別会計なんてしっかり分けた形に見せてるけど実際はドンブリ勘定だとか、色々よろしくない話は耳にしますが、何にせよ老齢が保険事故の中心に据えられたものだということで最初に配置されているのだと思います。


ちなみに保険事故の順番で気になる目的条文がふたつありまして…


労災法と健保法です。


労災法:労働者災害補償保険は、業務上の事由、事業主が同一人でない二以上の事業に使用される労働者(複数事業労働者)の二以上の事業の業務を要因とする事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付を行い、あわせて、業務上の事由、複数事業労働者の二以上の事業の業務を要因とする事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかった労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の援護、労働者の安全及び衛生の確保等を図り、もって労働者の福祉の増進に寄与することを目的とする。

※目的条文に改正が入っているので出題可能性は割と高くなるかもしれません、しっかりチェックしてくださいね!


健保法:健康保険法は、労働者又はその被扶養者の業務災害以外の疾病、負傷若しくは死亡又は出産に関して保険給付を行い、もって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。


保険事故のところ、労災は負傷が、健保は疾病が最初に来てますよね。
この順番で問題を出してくるなんてことは考えづらいですが…

イメージ的には労災だと仕事で危険な作業をする場面がどうしても出てきてしまうから負傷が多い、健保は私生活では怪我に気を付けることは多くても健康状態はおろそかにしがちだから疾病が先に来るんだろうなぁ。なんて感じで押さえてました。
自分で納得できる形でまとめられればとりあえず試験対策的には問題ないと思います。ただ、もっと明確な根拠が欲しい場合は労災の件数と内訳、疾病の構造などまで調べると一般常識対策にもつながるかもしれませんね。

そしてあとひとつ大切なことが


国民年金では保険給付ではなく「給付」になっている点です。


厚生年金は保険給付、健保や労災、雇用保険もそうなのですが、国民年金制度は保険原理に基づくだけでなく、20歳前傷病に基づく障害基礎年金という無拠出制の給付があるので、あえて「保険」をつけていないのです。

こういった視点で見ていく事も、横断整理等をやる際には大切になってくると思います。


というわけで今回はちょっと変えて選択式の問題演習でした。
どちらの形式をやるにしても分析検討をしっかりやれば両方の対策になります。ただ、やはり優先すべきは択一式です。択一式で確かな実力を身につければ恐怖感がかなり減ります。


それでは今日はこの辺で。

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