『寒い国のラーゲリで父は死んだ 父、山本幡男の遺した言葉を抱きしめて』
映画化(「ラーゲリより愛を込めて」)もされた『収容所から来た遺書』(辺見じゅん著)で紹介された山本幡男さんの長男・山本顕一氏による、ご本人と家族の人生の記録。
本書によると、長男顕一さんの記憶の中の父・幡男さんは酒乱気味で恐ろしい印象が強かったようだ。
秀才でエリートコースを歩みながら、父にまつわるトラウマと呪縛、恩師に認められたいという切望と恩師の死による喪失感から身を持ち崩した顕一さんは、40代にして自身を見つめ直す修行によって立ち直る。
末弟もまた兄の存在に囚われていた人生だったよう。
幡男さんの子どもたちはみな優秀な頭脳を持ち、著者顕一さんや弟さんは早々と周囲に世間がうらやむ道を用意してもらいながら、自分のことを心の底から認められずに生きるという不器用なところがある。
対照的に、満州から苦労して引揚げ、隠岐の島で魚の行商をしたり教師として勤めたりしながら4人の子や姑らを養い、子の教育のため、島から松江へ、さらに関東へと職と住まいを変えて移り住み、チャンスをつかませた孟母三遷を地でいく母モジミさんが実にたくましい。
よそ様のご一家の人生なのだが、なんだかいろいろ考えてしまう本であった。
『収容所から来た遺書』の書評は「関西ウーマン信子先生のおすすめの一冊」で取り上げました。本文はこちらから↓
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