【Live2D】パーツ分けを依頼する際のアレコレまとめ

最初に

この記事では、Live2Dアニメーション制作におけるパーツ分けに関する概要を
主にクライアント側の視点を中心にご説明します

また、とりわけVtuberモデル以外の『アニメーション動画作品』『モーションコミック』を想定した内容となります
Vに関しては専門でやられてるモデラー様のページをご参照ください

  • パーツってどれくらい分けたらいいの?

  • 依頼するといくらするの?

  • どう頼めばいい感じに作ってもらえるの?

といった、かなりザックリしたところを解説できればと思います

☆ちなみに……
『パーツ分け』と呼称していますが……
実はLive2D上での【パーツ】は、他のイラスト・画像編集ソフトでいうところの【グループ】や【フォルダ】に近いものです

Live2D公式のチュートリアルでも『パーツ分け』ではなく『素材分け』と書いてあります

https://docs.live2d.com/cubism-editor-manual/divide-the-material/

ただ一般的に『パーツ』と言えば、切り分けた部位1つ1つを想像するでしょうから、この記事内でもパーツと呼びます

有里は、今回のパーツ分けに限らず
「Live2Dとか詳しいことは知らんがとにかく自分のイラストを動かしたい!」

という要望を、どんどん世のモデラーに相談したり依頼してほしいという理念でやっております
なるべく専門的な用語や知識は省き、依頼する側が想像しやすい内容に置き換えていますので予めご了承ください
(コイツ呼び方間違えてんじゃんと石を投げるのはご勘弁ください)




■制作するアニメーションの種類を決める

制作したいアニメーションの完成形を明確にしてモデラーと共有することで
どの程度パーツ分けするべきかをスムーズに決められます

あまり細分化しすぎるとややこしいので、ここでは以下の3つに分類します

  1. モーションコミック

  2. ループアニメーション

  3. 長尺アニメーション(汎用演技モデル)

※この項目では制作に使用するソフトはLive2Dに限定していません


□モーションコミック

簡単なモーションを付けた『動く漫画』
動画編集とあわせると効果的で、漫画アプリの広告などでもよく使われています

あくまで漫画が少し動く程度なので、広い可動域や、細かすぎる揺れ表現は必要ありません

単純な2D動作がメインなのでツールはAfter Effectsやaviutlでも十分ですが
Live2Dであれば、突き詰めればかなりリッチな表現をすることも可能です
↓は公式が出したモーションコミック使用の一例

よく動いて見栄えもよく、モーション漫画としてはかなり目を引けます

しかし、このレベルで全コマ動かそうとすると制作コストはけっこう重くなります
重要なシーンだけしっかり動かすなど、ご予算とあわせて必要に応じてハイブリッドに使用すると良いでしょう


□ループアニメーション

数秒のモーションをループさせる、ソシャゲの立ち絵やイベントCGでよく使われるアニメーションです
ブルーアーカイブのメモリアルロビーや、アダルトでいえばFANZAブラウザゲームの寝室シーンも該当します

基本は単調なループモーションのためモデリングも限定的ですが
差分変化や軽いギミックをアクセントとして使うなどアニメーションを工夫したり
カメラワークやエフェクトなどの編集とあわせることで、長い尺の動画にも取り入れることができます


□長尺アニメーション(汎用演技モデル)

5分を超えるような長いアニメーション
最近では同人音声作品のアニメ版などでも導入されています

長時間みることになるので、単調な動きで間延びしないよう豊富な表情変化、ポーズの差分、高可動域化などで、1モデルの画のバリエーションを増やします

表情まわりはVtuberモデルに近いレベルで制作しますが
販売用の動画作品での使用を考えるとオーバースペック気味でコストがかかりすぎる場合があるため、妥協点はしっかり決めた方が良いです


□リファレンスでイメージを共有

かなりザックリした3パターンに分類しましたが、もちろん表現方法はさらに多岐にわたります
Live2D制作を依頼する際、これらを詳細に文章で説明するのは中々に大変なので
希望の表現に近い作品や動画があれば、リファレンスとしてモデラーに共有してください

商業レベルでも、他社・他者の作品を見せて
「こんな感じのが作りたい!」
と依頼するケースは全然あり、むしろ一般的で失礼な行為でも全くないので
遠慮なく送ってもらって大丈夫です



■表現に対応するパーツ分け量

最初に決めたアニメーションの種類、表現に応じて、適切なパーツ分けの量を考えていきます

□モデルの演技とパーツ分けの相関

(厳密には完全リンクではありませんが)
モデルにもたせる演技の幅とパーツ分けはおおむね相関します
語彙力をなくして簡単に言えば
たくさんパーツが分かれていればいろんな動きがさせられます

一番わかりやすいのは顔パーツで

・まつ毛が細かく分かれている
→喜怒哀楽の繊細な目の形が作れる

・瞳の中の影やハイライトが分離されている
→多彩な眼球の揺れを表現できる

・口が【口線/唇/歯/舌/口内/】で分かれている
→パーフェクトシンク(母音表現)が可能になる

など、顔だけでもパーツの細分化によって多くの情報を詰め込むことができます

しかし、当然の事ながら、細かくするほどイラスト・切り分け・モデリング・アニメーションの全コストが膨れます
さらに、【パーツの量】と【コンテンツの視聴数や売上】が比例するわけでもなく、費用対効果を測るのは非常に難しいです

(とはいえ)
いわゆる一般的なTVアニメで考えれば、よっぽどの事がない限り1シーンで動いてる箇所は限定的で、口パクや目パチも単調なものです

Live2Dを使うならVtuberばりにパーツ分けしないといけないと思う方もいらっしゃいますが
実際は登場する演技に必要な分だけで良く、ある程度はモーション決め打ちでエコなパーツ分けでも十分に見栄えは作れます


□アニメーションの尺で考える

演技量や演技の幅と言われてもピンとこない場合
モデルを使用する時間の長さをベースに考えるのをオススメしています

ここでいう長さとは、視聴者(利用者)が見る時間の長さです

例えばVtuberは、コンテンツの性質上ずーっと見られるものなので、視聴時間はある意味で半永久的です
ゲームの立ち絵も、1つ1つの動作は短くても、ゲームプレイ中ずっと使うものなので、全体でみれば数十時間となり長尺と考えることができます

こういった見られる時間が長いものは、飽きがこないように大きな変化量をもたせたり、リッチな作りにする方が有利なため
パーツ分けもできるだけ細分化した方が良いです

反対に、モーションコミックの1コマのように、作品内でコンマ数秒しかない場合
当然、多くの変化量を付ける必要はありません

あの表情も付けたい、このポーズもやりたい、こんな画にもしたい……
とモデルの汎用性を欲張っても、それらを披露するだけの尺がなければ切り分けのコストを浪費する羽目になります

コンテンツの時間内で使用が見込まれる画から逆算して
なるべくエコなパーツ分けで済むよう事前にモデラーに相談することをオススメします


□目立つとこだけ分ければOK

ここまでのことを総合すると
よく動く箇所、またはクローズアップされるような箇所……
つまり目立つとこだけ気合をいれて細かく分けて、後はサボってしまうのも
動画使用の時は全然ありということです

あらゆるチュートリアルでは、パーツ分けの基本として関節ごとに分けることが推奨されていると思いますが、それはあくまでVtuberモデル向けの話

例えば
ゲーム内ではほぼバストアップしか映らない全身の立ち絵』
であれば、重要な顔まわりと、連動する胸の位置くらいまでは細かく分けて
お腹から下はなんとなく揺れを考慮した程度の切り分けでも大丈夫です

あるいは
『ポーズが大きく変化しない一枚絵』
これもいちいち関節ごとに分かれてる必要はありませんし、曲げないのであれば、分かれていたとしても結局まとめて動かすので効果としては薄いです

(モデラー側の工夫次第ではありますが)
細かく分かれていない部分も全く動かないという事はなく
それとなく雰囲気を出す程度のモーションは付けられます

フォトショップでいうところのパペットワープのような事がLive2Dでも出来ます(というかツール的には得意分野です)

散髪屋で「もみあげは自然な感じで」と頼むような感覚で注文してもらえれば、大抵はやってくれるはずです

早い段階で最終的に使用するモーションや画の情報をモデラーと共有しておくことで、分量をスムーズに決められるかと思います

□パーツ切り替えorシームレス

本題とは少し反れますが、表情の差分を変化させる方法としては
パーツそのものを切り替えるか、1つのパーツを変形させるかの二種類があります

目のシームレスな動きはLive2Dの得意とするところであり、表情の作り方も豊富になるため、せっかくなら実装したいモーションの一つです

しかし、目の動きが瞬きくらいしかしない場合
『開いてる目』と『閉じてる目』の2パーツを切り替えるだけでも、瞬きしてるようには見えます
中間の『半目』を作ればかなり十分な見栄えになり、目の差分としても3つ作れます

さらにその合間を、軽くLive2Dで補完してあげれば、シームレスに近い見た目になります

パーツの切り替えで簡易的に差分変化をさせることで、パーツ分けやモデリングのコストを抑えられる場合もあります


手法によって費用を抑えられるかはモデラーによりますので必ず事前に相談してください



■パーツ分けをモデラーに注文する

□パーツ分けを依頼するうえでの注意点

パーツ分けを受けているモデラーであれば、イラストの知識はそれなりにある前提だと思いますが

それでも原画を担当される絵師様とは、使用するブラシをはじめ、そもそもツールの環境が違うため
『原画を完全に維持しつつ線と塗りに分離させる』
『100%原作者と同じテイストでの加筆』
というのは、Photoshopなど高機能ツールを使用しても難しいです

それでいて工数が大きく高額化しやすいため
描ききられたイラストをモデラーにパーツ分けさせるのは、正直に言って双方にあまり良い影響がありません
“可能な限り”担当した絵師様に分けて頂くことを推奨しております

感覚としては
イラストを分業するとして、アシスタントには任せられないような箇所は事前に分けておいた方が、仕上がりも費用面も無難といえます


□PSDの状態を確認

有里にパーツ分けを注文する場合、PSDを4つの状態に分けて考えています
上が一番良く、下にいくほどコストが増えて、モデラー側での編集作業が増えます

  1. 線画と塗りが未統合かつ顔パーツが独立している

  2. 線画と塗りが未統合で、顔パーツが線画に含まれる

  3. 線画と塗りが統合済みの背景透過画像

  4. 背景込みで統合された完成イラスト

未統合状態からの切り分けであれば、比較的綺麗に分けることができます
また、顔は繊細かつ、キャラの印象を左右する最重要パーツなため、モデラー側での描き足しは出来るだけ避けたい部分です

なるべく原画の状態を維持するためにも、未統合かつ顔パーツ独立の状態で渡してもらえると助かります

注文するモデラーにもよると思いますが、おおむね認識は同じになるかと思います
詳しくは使用するイラストを提示のうえ、担当モデラーに問い合わせてみてください


□費用の相場

内容にもよりますが、大体20,000円あたりをベースにして、切り分けるパーツ量に応じて増額されていくパターンが多いです

パーツ分けは作業的にはかなりハイカロリーなので、複雑なイラストや細分化量が多い場合は高額化しやすい傾向にあります

もしイラストを描く際に『うごイラ化』を視野にいれている場合は
線画を入れる段階から後々の切り分けを意識してレイヤーを大まかにでも分けておくことで、パーツ分けの負担を抑えられます


□モーション指示書を事前に用意

イラストを渡して「これを動画用に切り分けてください」と注文してしまうと、自動的に全てを切り分けることになり高額な費用がかかる可能性があります

先述の通り、どのくらい動くモデルかによっても必要なパーツ分けの量は違うので
用途や想定しているモーションの指示書も先に用意して共有して頂けると
価格の交渉がしやすいです


□どんな作業をするのか

パーツ分けの基本作業は

原画をコピペ
 →必要箇所を抜き出し
  →描き足し・塗り足し

という工程を無心でやり続けます

なんだか簡単な単純作業にも見えますが
どんな技法で描かれたのかを想像して、ある程度のクオリティで模倣するための絵描き知識がそこそこ必要なのと

なにより他の絵師様の原画をいじるというのは非常に神経をすり減らす作業です
費用が高めに感じても、そこのところを何卒ご理解頂ければと……

一枚絵からのLive2D化はYoutubeで動画がいくつか上がっていますので
『Live2D パーツ分け』
などで検索してみてください



終わりに

昨今、商業・同人ともにコンテンツへのLive2D導入が増えてきており
あわせてパーツ分けについてのお問い合わせを頂くことが多くなってきたことから、いったんまとめ記事を作ることとしました

急いで書いたので誤字脱字をはじめ、まとまってない箇所があるかと思います
順次で加筆・修正・編集していきますので、現時点での読みづらさはご容赦ください
詳しくは各発注予定のモデラーに直接お問い合わせ下さい

有里へのパーツ分け依頼価格は、下記ページをご確認ください


更新メモ
(2024年2月28日 初稿)
(2024年2月29日 微修正)
(2024年3月2日 微修正)
(2024年3月4日 微修正)

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