優しいおしごと。(6)
(今日はおばあちゃんを公園に案内するんだ!)
私はワクワクしていた。
先日、幼稚園のお散歩で自宅近所の公園にいった。
先生が「お家の人とこの公園に遊びに来た時に案内出来る様に、みんな何があるか覚えてみてね!」と言っていた。
私は(おばあちゃんだ!)とすぐに思った。
公園には、滑り台、ジャングルジム、ブランコ、砂場があった。
今では猫除けに砂場には網がかかっていたり、砂場じたい無い公園が増えていますが、私が幼かったことは、砂場が無い公園の方が珍しかった。
おばあちゃんと遊ぶとしたら...
滑り台にブランコ...
今からワクワクだった。
家に帰り
「おばあちゃん、公園行こう!」と話をした。
もちろん、(今度行こうね!)という意味を込めていた。
祖母は
「今からかい?これから買い物に行かないといけないから...どうしようかなぁ?」と返答した。
私は慌てて「今度!今度行こうよ!」と訂正した。
「そう?良かった!じゃあ今度行こうね」と安心してくれた。
私も夕方は大好きなアニメがやるから、テレビの前を離れるわけにはいかなかった。
今日、これから公園に行くのは無理だった。
それにしても、日本語は難しい。
さて、ついに祖母と公園に行く日になった。
青空広がる晴天。
昨日、てるてる坊主を飾っただけの効果があったようだ。
自宅から公園までは歩いて10分。
歩道橋を渡り、犬が吠える家の前を通り過ぎると公園が見えてくる。
公園の横には小さな床屋があり、私はいつもそこで髪を切ってもらっていた。
公園には先客がいた。
遊ぼうと思った、滑り台やブランコは使われていた。
「砂場で遊ぼうか?」と祖母が言ってくれた。
2人で砂の山を作ることにした。
でも砂だから、思うように大きくならない。
祖母は「水で濡らして固めると大きくなるかも」と水飲み場の水を両手で運び出した。
私も手伝った。
でも、両手の手のひらから水が溢れて、砂場の山に着く頃にはほとんど水は無くなってしまった。
(あの時は、大変だったなぁ)
祖母と南往復もして、山を固めた。
山にトンネルを掘ることも出来た。
そして祖母は「昔、私は砂場に宝物を埋めたことがあるの。あっ、ここじゃないけどね」と話しだした。
(宝物!!)
私は絵本の中でしか、宝物を知らなかった。
(どんなものが埋まっているのだろう?)
ワクワクしながら祖母と砂場を掘ってみた。
小さなバケツが出てきた。
「さっき山に水を運んだ時にあったら良かったのに」と祖母が一言。
全くその通りだった。
その後は、特に何もなかった。
小さなバケツ。
今日の宝物だ。
私は水飲み場の横に小さなバケツを置いた。
「誰かが砂遊びの時に使ってくれたらいいね」
帰りは祖母と手を繋いで歩いた。
大好きなおばあちゃんと同じ時を過ごして遊んだこと。
それが1番の宝物なのかもしれない。
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