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なぜチーズケーキはクリーム状や液体状のものが存在するのか? チーズケーキの多様さと多様になった理由を探る

かなざわ

 他のあらゆるケーキに比べて、チーズケーキは色々な形のものが存在します。いったいどうしてなのでしょうか。

色々な形のチーズケーキが存在する

 ショートケーキやモンブラン、パウンドケーキやシフォンケーキなど、世の中には様々なケーキがあります。多くのケーキは、どこで買ってもだいたい似たような形、構成、質感です。ショートケーキであれば円柱か四角柱で、スポンジとクリームと果物で構成されています。モンブランであればスポンジやビスケットなどを土台に、栗やクリームなどを載せ、最後に栗のペーストで飾りつけています。パウンドケーキもシフォンケーキも、その範疇から大きく外れるような形状、質感のものはあまりありません。

・クリーム状でも存在するチーズケーキ

 一方チーズケーキはどうだろう。ドロドロでクリームのような質感で、瓶、あるいはプラスチックのカップに入っていて、スプーンを使わなければ食べられないようなチーズケーキがあります。しかも、このようなチーズケーキは洋菓子屋のみならずコンビニやスーパーでも一般的に存在します。まれにといった程度のものではありません。そして瓶に入ったクリーム状の食べ物が「チーズケーキ」という名前で販売されていることに違和感を持つ人はまずいないはず。

瓶に入ったチーズケーキ

 一方でカップに入ったショートケーキ、あるいはモンブラン、シフォンケーキはあまりみられません。まれに販売されることもありますが、その場合は「スプーンで食べる」「カップで・・・」といった解説のような文言が添えられています。チーズケーキの場合はそのような文言はまずありません。これはつまり、カップのチーズケーキは見慣れたものだけど、他のケーキがカップだと、イレギュラー感があり注釈が必要になるということなのではないでしょうか。

 クリーム状のチーズケーキは他にもあります。以前とあるカフェで「レアチーズケーキ」を注文したのですが、その時に出てきたのが、皿の上に、クリーム状のものが載せられただけの食べ物でした。このような形状のチーズケーキは珍しいものではなく、たびたびみられます。

とあるレストランで注文したチーズケーキ
とあるカフェで注文したチーズケーキ

 チーズケーキ以外のケーキで、このようなクリーム状のものが出てくることがあるでしょうか。おそらくないでしょう。むしろレストランやカフェなどでショートケーキを注文して、スポンジとクリームとがぐちゃぐちゃになったクリーム状の食べ物がでてきたとしたら「メニューが違う」と思うでしょう。パウンドケーキ、シフォンケーキ、モンブラン、ザッハトルテなどのケーキが、クリーム状で出てきたら「なんか違う」と思うはずです。
 
 しかしチーズケーキはクリーム状でも「チーズケーキとはそういうものだ」となぜか受け入れられてしまうのです。一瞬戸惑う人もいるかもしれませんが「そういうチーズケーキもあるよね」といったように、すぐに納得できるのできるはずです。

・「飲むチーズケーキ」と他の「飲む〇〇」

 チーズケーキは液体でも存在します。俗に「飲むチーズケーキ」といった名前で売られている食べ物(飲み物)です。これはチーズケーキというよりも、スイーツ系ドリンクの一種というのが正しいかもしれません。一方で、チーズケーキほどドリンクになる機会が多く、またドリンクになっても違和感がないケーキは他にありません。

 固体のケーキを「飲む〇〇」といったようにドリンクしたものは数種類あります。たとえば次のような。

※URLは参考ページ

 このように様々なケーキ・スイーツが飲み物になっているのです。ただし飲むチーズケーキとその他の飲む〇〇には決定的な違いがいくつかあります。
 
 1つは販売する店の多さ。飲むチーズケーキは、それを販売するカフェや洋菓子屋、メーカーが存在し、現在でも飲むチーズケーキを販売する店は増えています。一方で他の飲む〇〇は、販売する店はほとんどありません。
 
 また販売する期間の違いもあります。飲むチーズケーキは、定番商品として販売する店がたくさんあります。一方で飲むショートケーキ、飲むモンブランなどは大手飲料メーカーが、ネタ的に期間限定で販売するのみです(例外的に飲むティラミスを定番で販売する店が存在するが、ティラミスはチーズケーキの一種だといえる)。

 飲むチーズケーキとその他の飲む〇〇とで、受け取る印象の違いもあります。チーズケーキは液体になってもさほど違和感がありませんが、他の飲む〇〇は、特にショートケーキやモンブランは、やや違和感があるように思えます。このように同じ飲む〇〇でも、チーズケーキとその他のケーキではその扱いが決定的に違うのです。

 チーズケーキは色々な形で存在します。色々な形で存在しても違和感がありません。しかし他のケーキは違います。チーズケーキと他のケーキとでなぜこのような違いがあるのでしょうか。

なぜチーズケーキは様々な形で存在するのか? 

 色々な形のチーズケーキが存在すること、また色々な形のチーズケーキがあっても違和感がないのも、そもそもチーズケーキの材料が液体に近いものが多く、色々な形状にできるからではないでしょうか。

・チーズケーキの材料のほとんどはクリーム状か液体状

 チーズケーキの主な材料はクリームチーズをはじめサワークリーム、生クリーム、卵、ヨーグルトなどです。これらはどれも液体かクリームに近い質感です。チーズケーキは、前述のクリームや液体状の材料を固めるために、卵を混ぜて焼いたり、ゼラチンを混ぜて冷やしたりします。この固める調理を省けば液体やクリームのままです。つまり、チーズケーキは簡単にクリーム状や液体状にできるのです。

 他のケーキはどうでしょう。ショートケーキをそのまま液体やクリーム状にすることはできません。フードプロセッサーや泡立て器でぐちゃぐちゃにする他ないのです。カップに詰め込むこともできるが手間が増えます。材料にも固体が使われます。
 
 最近では缶に入ったショートケーキや瓶に入ったショートケーキが存在しますが、販売しているのはごく一部の店だけです。全国でも数件程度です。一方、瓶に入ったチーズケーキを販売する店は無数にあります。このような差があるのは、ショートケーキは自立するケーキとして作ったほうが楽だからです。チーズケーキは瓶に入れてもさほど手間は変わりません。カップのショートケーキやモンブランは奇をてらってつくる料理の1つでしかありません。瓶に入れたからといって食感が大きく変わるわけでもありません。

 他のケーキも同じです。モンブランもショートケーキと同じように、形がある程度決まってしまっています。パウンドケーキやシフォンケーキなどは、液体状やクリーム状になることは到底想像できません。その他、あらゆるケーキの場合を考えてみてもそうです。チーズケーキのようにクリーム状や液体状で存在できないようなものがほとんどです。

なぜ色々な形のチーズケーキがあっても違和感がないのか?

 チーズケーキにはクリーム状や液体状が存在します。このように色々な形状のチーズケーキが存在する理由の1つは、そもそも材料が流動的であるからだと述べました。続いては、クリーム状や液体状など、様々な形のチーズケーキが違和感なく受け入れられている理由について考えてみます。
 
 結論を先に述べると、その理由はこれまで何度もブームを繰り返すなかで、色々なタイプのチーズケーキが生まれ、私たちは色々なチーズケーキに慣れていったからではないでしょうか。

・ある食べ物がブームになるときその食べ物は多様化する

 ある食べ物がブームになる時、その食べ物は多様化します。たとえば2020年頃、イタリアの食べ物であるマリトッツォがブームになりました。ブーム当初は、丸くて柔らかいパンに生クリームをサンドした普通のマリトッツォしか見られなかったのですが、ブームが加熱するとチョコレートクリームやストロベリークリーム、ピスタチオクリームを使ったものが登場しました。他にも生クリームのなかにオレンジピールを混ぜたり、板チョコやピスタチオをトッピングしたマリトッツォが生まれました。
 さらに、マリトッツォのブームに便乗する形で「〇〇トッツォ」といった食べ物が急増。コッペパンに卵サラダを挟んだだけの食べ物が、マリトッツォという名称で販売される現象も起きました。

 ここ最近はカヌレがブームとなっています。例に漏れず多様なカヌレが生まれています。それまで鐘の形をしたオーソドックスなカヌレしか見られなかったが、ブームになった途端、カヌレ風のグミや生カヌレ、半熟風カヌレ、カヌレケーキ、生ティラミスカヌレ、カヌチー(カヌレとチーズケーキを合体させたもの)、生クリームや抹茶クリームをトッピングしたカヌレなど、形も色も食感も様々なものが生まれました。このようにある食べ物がブームになる時、その食べ物は多様化します。この現象は、タピオカミルクティーやティラミスでも見られたものです。

・チーズケーキはそのブームのなかで多様化を繰り返した

 そしてチーズケーキもブームによって多様化しました。2019年頃のバスクチーズケーキに端を発するチーズケーキブームでは、チーズテリーヌやバスクチーズケーキ風のピノ、チョコパイ、飲むチーズケーキの急増など、多様化しました。
 実はチーズケーキは近年のブーム以外にも、過去に何度かブームを経験しています。最初は1970年代で、外食ブームと重なる形でチーズケーキが注目されました。
 続くブームは1990年代。この時注目されたのがティラミスで、社会現象となりました。また同じ頃に、大阪の焼き立てチーズケーキがブームとなり、類似の商品を販売する店が急増しました。さらに付け加えるなら「チーズ蒸しケーキ」のスマッシュヒットもあります。そして2019年頃のバスクチーズケーキに端を発するブームです。
 
 このようにチーズケーキは何度かブームを経験しています。そしてブームになるたびに多様なチーズケーキが生まれたと考えられます。私たちはこれまでの度重なるチーズケーキブームのなかで、色々な形のチーズケーキを受容していきました。最初のうちは「これってチーズケーキなの?」と疑問視したかもしれません。しかし多種多様なチーズケーキを見るうちに「チーズケーキってそういうもの」と液体やクリームでも、違和感を持たなくなっていったのではないでしょうか。

 まとめると、チーズケーキにおいて、クリーム状のものや液体状のものが違和感なく受け入れられているのは、チーズケーキが何度かブームを経験し、その度に様々なチーズケーキが生まれ、人々はそのチーズケーキの自由自在性に慣れていったから、私はそう考えます。
 
 クリーム状のチーズケーキや液体状のチーズケーキが具体的にいつ頃から存在しているのかはまだ分かりません。今後の課題としては、その発生時期を突き止め、それらのチーズケーキがどのような時代背景のなかで生まれたのかを調査していきます。


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