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細菌から密教まで研究していた南方熊楠

芹沢銈介展で曼荼羅を見たときに、ちょうど南方マンダラという本を読んでいました。
植物学者でもあった南方熊楠が研究していたものが南方熊楠コレクションとして、中沢新一さんの解説で編纂されています。
曼荼羅についても1冊の本になるくらい研究していたのです。

昨年東寺で立体曼荼羅世界を見たことを思い出しました。
通常は観られない背後まで回ることができて、真ん中の大日如来を中心とした立体曼荼羅の迫力は魂を宿して存在感を出していました。

そのときは名宝展をしていたので五重塔の内部を公開しており、400年前に建立され木造では日本一の高さを誇る1階部分を見ることができました。
麻の葉や幾何学模様が描かれて、それが密教の世界を表していました。

この密教の世界を研究して発見したのが熊楠マンダラです。
物界は因果応報、心界は知性、それぞれに異質なものの出会いのうちに生成される“事”。“事”として生まれる世界の本質をとらえる方法が、真言密教の曼荼羅の思想の中に潜んでいることを発見したのです。

曼荼羅図が立体を表していると解説しています。

さて妙なことは、この世界宇宙は、天は理なりといえるごとく(理はすじみち)。図のごとく(図は平面にしか画きえず、実は長、幅の外に、厚さもある立体のものと見よ)、前後左右上下、いずれの方よりも事理が透徹して、この宇宙を成す。その数無尽なり。ゆえにどこ一つとりても、それを敷衍研究するときは、いかなることをも見出し、いかなることをもなしうるようになっておる。
(中略)
図中の、あるいは遠き近き一切の理が、心、物、事、理の不思議にして、それの理(動かすことはならぬが)道筋を追従しえたるだけが、理由(実は現象の総概括)となりおるなり。
(明治三十六年六月三十日書簡)

となっています。
この図は本の表紙になっているので、見ることができます。

この世界観を共有できる人はなかなかいないので、熊楠は土宜法龍という僧侶と書簡を交わしていたそうです。
現代においても南方マンダラの立体について語り合える人はそう多くないかもしれません。

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