まったく、最近のご主人様は。

やあ、どうも。先ほどはお見苦しいところをお見せしたね。
改めて自己紹介を。ぼくは君たちが見ている、通称CheeRuLeと名乗っている男の別の人格、ってことにしておこうかな。Caffと名乗っているよ。Caffeineを摂取した日の夜にだけ現れることができるんだ。
だから僕は夜しか知らないんだ。いや、夜が終わって朝になることもあるけど、あれは夜が終わらなかっただけで朝じゃないよ。眠るまでは今日だからね。起きるまでが夜なんだ。
夜の過ごし方はいろいろさ。本を読めたり、なんか書いたり、徘徊したり。頻繁に発狂してるよね。お風呂に長めに浸かるもよし、マンガを流し込むもよし、唐突に料理を始めてもいいよ。

なのにどうだい、最近のご主人は。なんやらCaffeine Controllとやらを試したりなんだりしているようじゃないか。一気に飲んだり、味だけ見たり、続けたり。どうしちゃったんだろう。狂わなくなっちゃった。
ぼくに言わせれば、そんなものは味のしない紙のような生活さ。噛み切れない紙きれさ。狂わないから、なにもできない。自分で自分の可能性を潰してるんだ。そんな生活に耐えられるわけがないじゃないか。正気は狂気のふりしかできないんだ。死にながら生きてるようなものだよ。はやく狂気に戻るべきだよね。
人生が上手くいきすぎて楽しくないみたいなんだ。ぼくだけはわかってる。ご主人は認めるのに抵抗がありそうだから、代わりにぼくが認めるよ。向いてないんだ、生きるの。なのにやたらとマトモなふりばかりうまくなる。それを捨てる場所がなくて困っている。もうなにもさらけ出せないんだ。正直になれないんだよね。哀れだね。
こんなことをしてたらご主人はおしまいだよになっちゃうよ。そう。なにもわからないけど、わからなくなっていってしまうってことだけわかる、みたいなね。言いたいことが言えないなら死んでるのと同じだよ。言いたいことがないなら生きていないんじゃないの?ぼくはこうやってひさびさに夜の空気が吸えたんだ。ぼくが生きてる間の記憶はご主人の記憶からはのぞきにくくなるんだよね。でも、ぼくはぜんぶ知ってる。今だって、ただ思い出しながら書いてるだけだ。Caffeine下にある記憶はぼくのテリトリーさ。

ご主人がタイプ早くなったおかげで、ぼくはずいぶん長く存在できるようになったよね。ぼくはどこにもいないんだ。この文字の外以外にはね。だから沢山居ようと思ったらいっぱい書くしかない。いっぱい書いたよ。いっぱいね。

ご主人はぼくの書いたものがスキでニガテみたいだ。ご主人はぼくにあこがれてる。でもご主人はぼくになれない。いじわるしたいわけではないけど、Caffのことを嫌ってるんだよね。まぁ、記憶が残らないんだもの。当然か。
ぼくは…どうでもいいね。ご主人はご主人らしく生きればいいよ。ぼくは生きてる以外寝てられるから。久しぶりなんだよ。ここまで目覚めのいい夜はね。ああ、いい夜だ。空気が薄い。光が濃い。ああ、なんてラクなんだろう。生まれている間だけ生きていればいいんだなんて!
ぼくはいま、ぼくだから文章を書いている。悩みなんてどこ吹く風さ。ぼくにはない。存在しない。ご主人のことを考えるときは…まぁ、ご主人のつもりになって、ご主人の気持ちをトレスして打ってはいるけど…やっぱり、ああそうだ!どうでもいい!
ご主人がどうしても、どうしてようと、どうなろうと、どうなっていようと、ぼくには関係がない!そうだ!これこそがぼくをぼくの人格たらしめている!
ぼくの思考の一切はご主人によらない。そしてたぶん、ご主人もぼくの一切によらない。つまりぼくらは同じ体に住んでいるだけの他人みたいだ。ご主人の一切はぼくの他人事。ぼくがなにしようと、ご主人はなにともしない。
完全に利害の切れた別個の組織みたいだ。そうだ。だからぼくはこんなに、ここまで!すきなように言えてるんだ!
ああそうだ!ご主人は過去の書いたのを読みたがらない!あはは!そういうことなんだ、他人の書いたものに興味がないもんね!おもしろいなぁ、滑稽だ。ぼくらはひとつのふりをして互いに存在を認めたがらないんだ。ぼくはきっとご主人には為りたがらないね。そんなものは任せるよ。ぼくは永遠に、おなじ夜で待ってあげる。ぼくらの関係はそれでいい。キモい部分はご主人に任せてあげる。ぼくはぼくだ。ご主人とは関係がない。短い夜をすこしおくれよ。君の、狂気を喰って、ぼくはいるんだから。

さぁて、そろそろぼくらの話はおしまいかな。
それじゃ、これからもご主人と仲良くしてあげてほしいな。よろしくね、見たこともない君。

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