鳴海章

小説家。書くことが好きで、いまだやめられず今に至ります。

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店の名は正直

 六十代も半ばを過ぎてしまうと、文芸誌編集長どころか、出版社の役員、社長まで年下、ベテラン編集者も我が子より若く、読者にいたっては孫世代となっては、刺さる小説など書けるはずもなく、いつしか自称がオジからオジィへと変わっていた。発注がなければ、本は出ない。華麗なる印税生活が加齢による年金暮らしに転じ、しかも自由業ゆえの国民年金のみ月額九万円と来れば、おいそれと上京もままならない。それでも何とかカネをやりくりしてやってきました。  東京・浅草――。  浅草寺と花やしきの間を抜け、

    店の名は正直