守りたい人 【織田信長】-天下統一 恋の乱- ✎
あの頃の夢を見た。
織田の再興を図るため非道を繰り返し、弟である信行を自ら手にかけ、魔王と呼ばれていたあの頃の夢を。
気がつけば目の前に見知らぬ女がいた。
女はポカンとした顔で俺の顔を眺めている。
「貴様…何者だ?」
女中に紛れた刺客かもしれない。
「名を聞いている。名乗れ」
だが女は口をパクパクとさせるだけで、何も言わない。
「やはり不審者か?」
腰の刀に手を伸ばし、鯉口を切る。
その音が響くと同時に、女は慌てて「違います!」と叫んだ。
「ふん…喋れるではないか」
何故が笑みが零れた。
女の慌てる姿が、俺に慄く小動物の様に見えたからだ。
しかし女は何かに気づいたかのように、声を震わせて呟いた。
「信長様?」
「貴様、何故俺の名を…」
よく考えればわかることだ。
この女が俺に差し向けられた刺客であれば、殺す相手の名前くらい知っているだろう。
だが俺は不思議とこの女を知っていると感じた。
見たこともないこの女を。
「信長様!」
女は俺へ手を伸ばしながら叫んだ。
「私はずっと貴方を…私が貴方をお守りします!」
やがて女の顔が歪み、やがて視覚が遮られていく。
身体が重くなると同時に、頭は澄み渡るように冴えていく。
光が俺の全身を包み込んでいく。
あたたかな光が俺を…。
覚醒すると隣で眠る愛おしい女が、うわ言の様に俺の名を呼んていた。
「私が貴方をお守りします!」
そう言いながら手を伸ばしている。
どうやら夢を見ているらしい。
しかも俺と同じ夢の様だ。
「夢の中の女は…貴様であったか」
額にかかる髪を指でそっと梳いてやる。
こめかみがピクリと動いたが、覚醒する様子はない。
「おい!起きろ」
軽く体を揺すると、小さく呻き声を上げた。
やがて瞼をゆっくりと開けて、寝ぼけ眼で俺をじっと見つめる。
「俺を守る…そう啖呵を切っておいて、まだ惰眠を貪るか?」
数回瞬きをして、俺の顔を不思議そうに眺める女を組み敷いた。
「眠りながらも俺の名を叫び、俺を守ると言ったな」
「えっ?あっ…はい」
女はまだ寝ぼけているのか、何度も瞬きを繰り返している。
「ならば約束は守ってもらう」
女の身を起こし、背中から抱きしめた。
俺は女の柔らかな体の熱を感じながら、首筋に顔を埋めた。
夢では感じられなかった、甘くあたたかい香りがした。
(あの時の俺では、手に入れる事が出来なかったものだな)
女は小さく「はい…」と呟き、恥ずかしそうに俯く。
そんな仕草すら愛おしく感じ、俺はさらに強く抱きしめた。
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信長さま外伝を読み始めてからずっとSSが書きたくて
ヒロイン目線はYouTubeに上げたので、noteは信長さま目線です
やっぱり推しは信長さま(*´艸`)キャ
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